キリンビバレッジの「午後の紅茶」が発売35周年を機に、地震や豪雨災害から復興途上の被災地を支援する新プロジェクトを発足させた。被災地産の原料を用いた製品を本数限定で販売し、1本当たり3.9円の寄付をする。社会貢献への意識が高い層の共感を得ることで、潜在顧客の掘り起こしにもつながるとみる。
新プロジェクト「午後ティー HAPPINESSプロジェクト」は、「キリン 午後の紅茶」ブランドの継続的なCSV(顧客や社会と企業が共有する価値の創造)活動として2021年6月1日にスタート。復興支援先の第1弾は熊本県で、同県産の茶葉といちご「ゆうべに」を原料に用いた「午後の紅茶 FOR HAPPINESS 熊本県産いちごティー」を同日に発売した。
同社は16年の熊本地震以来、「復興応援 キリン絆プロジェクト」(東日本大震災を機に11年に発足)を通じて同県の復興活動を支援している。また、午後の紅茶ブランドでは、16~18年まで同県南阿蘇鉄道見晴台駅や白川水源でCMを撮影。南阿蘇の風景を発信した。女優の上白石萌歌が見晴台駅で歌うCMを機に、観光客が増えるなどの効果もあった。
今回のプロジェクトは、土地の食材を生かした製品の利益を還元し、復興に生かそうというもの。「いちごティー」は、単年施策ではなく継続すること、復興応援先の素材を使用すること、売り上げの一部を寄付することを掲げたキリンビバレッジ初の「国内復興応援型」の商品となる。いちごティーは50万箱限定で発売し、売り上げ1本当たり3.9円を熊本県に寄付する。寄付金は災害復興支援、JA熊本経済連と協業した農産物のブランディング支援、23年に予定する南阿蘇鉄道全線再開支援、南阿蘇村の教育環境整備に充てられるという。寄付金以外にも、製品に現地の原料を使用することで生産者を支援する狙いもある。
応援消費でブランドの成長促進
午後の紅茶は国内のペットボトル入り紅茶市場でシェア50%を占める、キリンビバレッジの最重要ブランドの一つだ。同社執行役員マーケティング部長の山田雄一氏は、「新型コロナウイルス感染症の拡大により、社会連帯意識が高まっており、応援消費がトレンドになっている」と指摘。電通が20年に実施した生活者欲求に関する調査によると、「人とつながりたい」と思っている人は全体で50%、10代で63%に上る。
マーケティング部ブランド担当部長の加藤麻里子氏は、「午後の紅茶のターゲットは全世代だが、エントリー層の10代は、教育にもSDGs(持続可能な開発目標)の考え方が浸透していることから、社会貢献への意識が他の世代より高い。今回の製品を通してブランドを認識してもらえれば」と説明。新プロジェクトが、活動に共感する潜在顧客の掘り起こしにもつながると期待する。
新製品を午後の紅茶で初めてのいちごティーにしたのは、近年伸長するフレーバーティーの中でも、いちごフレーバーに大きな可能性を感じたからだという。
同社によると、過去5年間で12%増と急拡大する紅茶市場(食品マーケティング研究所調べ)で、20年の500ミリリットルペットボトル入りフルーツティーの売り上げは、前年比50%の伸びを示している。その中でも製品数が少ないのがいちごフレーバーだ。手淹(い)れの紅茶では人気のいちごティーだが、ペットボトル飲料としては15~20年の過去5年でわずか2製品しかないという(インテージ調べ)。
21年は35周年のアニバーサリーイヤーらしく、製品拡充とブランド活動を大々的に展開する。「午後の紅茶ストレートティー/ミルクティー/レモンティー」のオリジナル3製品のリニューアル、新規製品として「午後の紅茶エスプレッソティー微糖」「午後の紅茶 ザ・マイスターズフルーツティー」を発売した。さらに、今回の「午後の紅茶 for HAPPINESS 熊本県産いちごティー」の他にも5製品の発売を控える。並行して、今回の復興プロジェクトや紅茶産地のスリランカへの支援など6つのプロジェクトも実施し、ブランドのさらなる浸透と価値向上を狙う。
(写真提供/キリンビバレッジ)