アウディジャパンが2021年5月18日に4代目となる「A3シリーズ」を販売開始。また電気自動車(EV)「アウディe-tron GT」は21年秋導入ながら4月に先んじて一般に公開。日本市場でのシェア拡大に積極姿勢を見せている。

新型「A3スポーツバック」と発表会に登壇したアウディジャパンのフィリップ・ノアック社長
新型「A3スポーツバック」と発表会に登壇したアウディジャパンのフィリップ・ノアック社長

VW「ゴルフ」同等サイズの高級車

 独アウディの日本法人、アウディジャパン(東京・品川)はフルモデルチェンジした人気のコンパクトカー「A3シリーズ」を2021年5月18日に販売開始した。20年春にドイツで発表された第4世代で、ハッチバックの「A3スポーツバック」(310万円~・税込み、以下同)と、「A3セダン」(329万円~)の2モデルがある。A3は独フォルクスワーゲン(VW)「ゴルフ」と同等サイズで、世界最大のセグメントとされる重要市場に向けた製品だ。

 21年4月21日にsequence MIYASHITA PARK VALLEY PARK STAND(東京・渋谷)で行われたオンライン発表会で、アウディジャパンのフィリップ・ノアック社長は「アウディはこれまで全世界で500万台以上、日本では約10万5000台のA3を販売してきた」とその人気を強調。多くの人に支持される車だからこそ、新型A3には「アウディらしいデザイン、サステナビリティー、パフォーマンス、デジタリゼーションを特徴に持たせた」と説明した。

A3の受注状況、販売計画より好調

 新型A3セダンは全長4495×全幅1815×全高1425ミリメートル、A3スポーツバック(30 TFSI)は全長4345×全幅1815×全高1450ミリメートルと先代よりも少し大きくなった。新型では、最量販グレードのエンジンを従来の1.4リットル4気筒ターボエンジンから1.0リットル3気筒ターボエンジンに変更し、最高出力110ps、最大トルク200Nmになった。ベルト駆動式オルタネータースターターと、48Vリチウムイオンバッテリーを用いたマイルドハイブリッドシステム(簡易型のハイブリッドシステム)を採用。ノアック社長は「(アウディの)コンパクトセグメントとして初めて48Vのマイルドハイブリッドシステムを搭載した。これにより高い環境性能と快適な走行性を実現している」と話す。

左が「A3セダン」、右は4WDスポーツモデル「S3スポーツバック」
左が「A3セダン」、右は4WDスポーツモデル「S3スポーツバック」

 エンジンはA3セダンとA3スポーツバックともに3種類を用意。マイルドハイブリッド仕様の1.0リットルターボエンジン搭載の「30 TFSI」、2.0リットルターボエンジン搭載の4WD車「40 TSFI クワトロ」、そして4WDスポーツモデル「S3」だ。価格は310万~661万円。40 TSFIクワトロは21年秋導入予定のため、日本での販売の主力は30 TFSIとなる。

 アウディジャパンによると、具体的な台数は明かせないとしながらも、販売計画よりも受注は好調だという。現在日本で販売されているモデルのベースの価格帯は310万~408万円だが、例えば「30 TFSIアドバンスド」がベースの限定車「A3ファーストエディション」はベース車に装備を追加し充実させている分、A3スポーツバックで453万円、A3セダンが472万円と、コンパクトクラスとしては高級車といえ、生活にゆとりのある客層をターゲットにしていることがうかがえる。

 アウディの電気自動車(EV)戦略についても同様のことがいえる。

「EVのアウディ」を印象付けたい

21年4月6日にお披露目された「Audi e-tron GT」はドイツ本国仕様。日本仕様はこれからとなる
21年4月6日にお披露目された「Audi e-tron GT」はドイツ本国仕様。日本仕様はこれからとなる

 21年2月に初披露されたアウディのEV第2弾、「Audi e-tron GT」を4月6日に日本でも発表し、5月末まで表参道のブランドストアで実車を展示するなど、各メーカーがEV戦略を発表する中、同社としてもいち早く関心を高めたいという意欲が感じられた。価格は標準モデル「Audi e-tron GTクワトロ」が1399万円、高性能モデル「Audi RS e-tron GT」が1799万円とかなり高額だ。

 既に日本に導入済みのSUV(多目的スポーツ車)「e-tron」や「e-tronスポーツバック」とは異なり、e-tron GTはスポーティーさを強調した4ドアクーペだ。ボディーサイズは全長4990×全幅1965×全高1415ミリメートルと大きめだが、シャープなデザインが走りの高さを予感させる。電気モーターを車体の前後に搭載する4WD車で、駆動用バッテリーは総容量93kWhと大容量。システム最大出力はe-tron GTが350kW、RS e-tron GTが440kW、システム最大トルクはe-tron GTが640Nm、RS e-tron GTが830Nm。いずれのモデルにもブースト機能が備わり、RSは0-100km/h加速が3.3秒を記録するなど、スーパーカー並みの性能を持つという。

「Audi RS e-tron GT」はブースト機能を使用した場合、0-100km/h加速が3.3秒を記録する
「Audi RS e-tron GT」はブースト機能を使用した場合、0-100km/h加速が3.3秒を記録する

 e-tron GTは独ポルシェのEV「タイカン」とベースを共有している。ノアック社長は、タイカンはポルシェらしくスポーツカー性能を重視しているが、e-tron GTは航続距離にも重きを置いた、車好きや車での旅が好きな人にも魅力的なEVだと強調し、大容量の駆動用バッテリーを強みに、世界統一試験サイクル(WLTCモード)で航続距離500キロメートル以上を目指すと話した。

 急速充電器の設置も急いでいる。欧州仕様のe-tron GTは150kWの急速充電器に対応している。日本の充電規格「CHAdeMO(チャデモ)」でも90kWの急速充電器が登場したが、アウディのEVを取り扱うアウディe-tron正規販売店では、既に50kWの急速充電器を整備し、一部店舗では出力90kWの急速充電器も設置している。今後オープンするe-tron正規販売店では、急速充電器の設置を計画。より整備費はかかるが、50kWより1.8倍の速さで充電できる90kWの設置拡大により、e-tron GTの利便性を高める考えだ。

「Audi e-tron GT」の発表会に登壇したノアック社長
「Audi e-tron GT」の発表会に登壇したノアック社長

 さらにアウディジャパンは、21年4月15日にドイツで発表されたばかりのコンパクトSUVタイプのEV「Q4 e-tron」を早期に日本に導入する計画も進めている。「EVのアウディ」を印象付けることで、日本のEV市場でいち早く存在感を示そうとしている。

 高級車ブランドであるアウディの顧客は、価格より性能や機能を重視する傾向があり、EVへの関心から追加でSUVの「e-tronスポーツバック」を購入したり、セカンドカーに選んだりする人もいるという。他の高級車メーカー同様、アウディも魅力的なEVであれば、売れる状況にもあるといえる。この好機を逃さず、スポーティーさや先進性を武器にEVを売り込み、市場拡大競争に先手を打ちたいだろう。

 現状でいえば、アウディ ジャパンの今年1~4月までの販売台数は7818台と前年同期比で22%増と、大きく伸びている。ノアック社長は18年9月のアウディ ジャパン社長就任以来、電動モビリティーにフォーカスした新しいブランド戦略を打ち立て、顧客中心主義を徹底し、積極的な新商品攻勢とともに日本市場の成長をけん引してきた。しかしそのノアック社長は8月1日付でドイツ本社に帰任し、ドイツ市場の責任者に就任すると5月25日に発表されている。社長交代後、どのような戦略が打ち立てられるかも気になるところだ。

(写真/大音安弘)