パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)が運営するディスカウントストアのドン・キホーテは、2019年7月に香港第1号店を構えて以来、2年弱で7店舗まで一気に拡大した。香港の店舗の特徴は、日本と違って食材の比率が高いこと。しかも日本食が売れているという。香港の店舗を統括する泛亜零售管理(香港)の竹内三善董事兼社長に人気の秘密を聞いた。
香港のドンキは弁当、おにぎり、すしを売る
ドン・キホーテの香港での名称は「DON DON DONKI(ドンドンドンキ)」だ。香港版ドンキは日本のそれとは異なり、生鮮品と食料品がそれぞれ35~45%、非食品が約20%という商品構成が特徴となっている。
2021年5月現在、DON DON DONKIは香港に7店舗あり、月当たりの売り上げは1店舗平均で数億円にも上るという。1店舗当たりの来店者数は平均で1日7000~9000人ほどだ。香港の現地法人、泛亜零售管理(Pan Pacific Retail Management、パンパシフィック・リテール・マネジメント)董事兼社長の竹内三善氏は「尖沙咀(チムサーチョイ)店など最初に香港進出を果たした3店舗は、世界に展開している店舗の中でもトップランクの来店者数を誇ります」と話す。
香港にもセブン-イレブンやサークルKなどのコンビニエンスストアはあるが、扱っているのはチルド弁当やおにぎりに限られる。一方DON DON DONKIでは、店内で調理した弁当やおにぎり、すしなどの日本食を幅広く扱い、それらが好評を博している。「日本食はおいしいと世界で評価されているので、香港人好みの味付けにするのではなく、日本の味をそのまま出すことで勝負しています」と竹内氏は言う。
香港は西洋文化と東洋文化が交わった場所で、香港らしい混沌(こんとん)、カオスはドン・キホーテの品ぞろえとも妙にマッチしている。その中でも日本食は集客の鍵となっているようで、筆者の友人の香港人は「DON DON DONKIで日本を感じている」と話していた。コロナ禍前の19年でいえば、全人口(約750万人)の3割に当たる約230万人の香港人が日本を訪れている。訪日が難しくなった今、DON DON DONKIで脳内日本旅行を楽しんでいる香港人は多いのかもしれない。
文化に寄り添い、定説を覆す
DON DON DONKIが販売する弁当類を調理するのは香港人スタッフだ。彼らの提案を受けて商品化したものもあるという。「焼きそば、ギョーザ、たこ焼きにご飯という組み合わせは日本人なら“ない”と思いますが、実際に販売したら人気の商品になりました」と竹内氏は笑う。「同じくスタッフのアイデアでカニカマ弁当を販売したときは、本物のカニと勘違いしているのではないかと思って注意喚起したのですが、それでも売れましたね」(竹内氏)
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