メルセデス・ベンツの100%電気自動車(EV)、「Mercedes-EQ」シリーズからコンパクトSUV「EQA」が登場した。先行受注分の導入記念限定車「EQA 250 エディション1」は、受け付け開始5日目に50台の予約枠がいっぱいになるなど、現実的なEVとして市場拡大につながりそうだ。

日本に適したサイズのSUVかつEV

電気自動車のコンパクトSUV「EQA」。価格は640万円(税込み)
電気自動車のコンパクトSUV「EQA」。価格は640万円(税込み)

 メルセデス・ベンツ日本(東京・品川)が、メルセデス・ベンツの100%電気自動車(EV)、「Mercedes-EQ」シリーズのコンパクトSUV「EQA」を2021年4月26日に発売した。グレードは1種類で、価格は640万円(税込み)。EQAの特徴は、メルセデス・ベンツのエントリーSUV「GLA」と同等の小型なサイズを生かして軽量化したこと。航続距離は422キロメートル(世界統一試験サイクル/WLTCモードによる)で、価格も抑えられている。

 メルセデスEQの第1弾モデル「EQC」は広々とした座席スペースと、2モーターによる4WDシステムが特徴で、航続距離は400キロメートル(WLTCモード)を備えるSUVで、導入時の価格は1080万円(税込み)からだった。装備を見直し、価格を895万円(同)からに抑えた最新仕様も発売したが、ボディーサイズは全長4770×全幅1885×全高1625ミリメートルで、日本の道にはやや大きめ。その点、今回導入されたEQAは、全長4465×全幅1835×全高1625ミリメートルと、比較的扱いやすいサイズのSUVといえる。

メルセデス・ベンツのコンパクトSUV「EQA」は全長4465×全幅1835×全高1625ミリメートルと、狭い道路が多い日本でも比較的扱いやすいサイズといえる
メルセデス・ベンツのコンパクトSUV「EQA」は全長4465×全幅1835×全高1625ミリメートルと、狭い道路が多い日本でも比較的扱いやすいサイズといえる

 エクステリアはメルセデスEQであること、つまりEVであることを主張する、ブラックパネルのフロントグリルが特徴的。フロントマスクを横断する水平基調のLEDデイライトや、LEDリアコンビネーションランプなども専用のデザインで、既存モデルと差別化されている。またコンパクトなサイズながら、一体感あるブラックのフロントマスクが、ワイドな印象を与えるので、SUVらしさも十分感じられる。インテリアデザインは基本的にGLAに近いが、こちらも専用の装飾が加えられ、未来感がある。

左右のフルLEDヘッドライトのデイタイムランニングライトを水平に伸びる光ファイバーの帯で結び付けたデザインは、昼夜を問わず識別しやすいデザイン
左右のフルLEDヘッドライトのデイタイムランニングライトを水平に伸びる光ファイバーの帯で結び付けたデザインは、昼夜を問わず識別しやすいデザイン
リア側もメルセデスEQ独自のデザインを取り入れている
リア側もメルセデスEQ独自のデザインを取り入れている

 電気モーターをフロント部に搭載する前輪駆動車で、駆動用バッテリーは、乗員スペースの床下に収めている。ラゲッジスペースは、EVシステムの影響で、GLAよりも容量は少なめだが、メルセデスのコンパクトハッチバック「Aクラス」同等レベルで、標準時で340リットル、最大だと1320リットルとなっている。

 電気モーターの性能は、最高出力190ps、最大トルク370Nmを発揮。駆動用リチウムイオンバッテリーの容量は66.5kWhで、航続距離は先述の通り422キロメートル(WLTCモード)。充電は日本で通常使われる6kW(200V・30A)までの交流普通充電と、100kWまでの直流急速充電(CHAdeMO規格)に対応する。充電時間は6kWの普通充電器の場合、約11時間で満充電に、50kWの急速充電器だと、約1.3時間で80%まで回復させることができる。

バッテリーの充電は6kW(200V・30A)までの交流普通充電と、100kWまでの直流急速充電(CHAdeMO規格)に対応
バッテリーの充電は6kW(200V・30A)までの交流普通充電と、100kWまでの直流急速充電(CHAdeMO規格)に対応

EV購入のハードルを下げるサービスを提供

 EQAの発売に合わせて、メルセデス・ベンツ日本はEVの普及拡大に向けた様々なプランを用意。その1つが、月額定額で利用できるリースプラン「メルセデス・スタイル」だ。

 これは車両費用だけでなく、保険や税金、メンテナンス費用まで含んだプランで、オーナーの所有コストが明確になり、下取り価格の心配をしなくてよくなる。さらに5年または総走行距離10万キロメートルに達するまで(どちらか早いほう)は、一般保証修理・定期メンテナンス・24時間ツーリングサポートが無償で提供される保証プロクラム「EQケア」も付いている。劣化の不安のある駆動用バッテリーに関しても、8年または総走行距離16万キロメートル以内での性能保証が付いている。

保証プログラム「EQケア」では、高電圧バッテリーが8年または16万キロメートル以内で、サービス工場の診断機により高電圧バッテリー残容量が70%に満たないと診断された場合の保証を付帯している
保証プログラム「EQケア」では、高電圧バッテリーが8年または16万キロメートル以内で、サービス工場の診断機により高電圧バッテリー残容量が70%に満たないと診断された場合の保証を付帯している

 充電については、日常の充電を行う自宅設置用6kW出力の普通充電器を無償で提供し、設置費用も10万円まで補助する。またメルセデス・ベンツが提供する充電カードの月額基本料金と充電利用料は1年間無料となり、いつでも気軽に公共の充電器を使える。

 CEV補助金も申請中とのこと。決まれば今後、コスト負担の軽減につながるだろう。この他、最大5回まで無料で最新メルセデス・ベンツをレンタルできる「シェアカープラス」など手厚いサービスにより、EV購入のハードルをグッと下げようというわけだ。

 メルセデス・ベンツ日本の上野金太郎社長は、「(EQAは)日本の街中でも扱いやすいサイズと、本格的な航続距離を兼ね備えた、ありそうでなかったEV」と商品力の高さを強調する。

実はライバル不在のEQA

 小型サイズの輸入EVとしては現実的な価格といえるEQAの注目度は、早くも高まっているようだ。21年4月2日から先行受注を開始した導入記念限定車「EQA 250 エディション1」は、わずか5日間で50台の予約枠がいっぱいになったという。

 現在のところ輸入SUVは大型で高価格帯のものが中心。人気の高いコンパクトSUVでは、EQAよりサイズが小さいモデルが主流だ。ある意味、EQAはライバル不在であり、しかも600万円台でメルセデス・ベンツのEVが買えることを、好意的に捉える人もいるだろう。

メルセデス・ベンツ日本の上野金太郎社長は、EQAを「日本の街中でも扱いやすいサイズと本格的な航続距離を兼ね備えた、ありそうでなかったEV」と表現
メルセデス・ベンツ日本の上野金太郎社長は、EQAを「日本の街中でも扱いやすいサイズと本格的な航続距離を兼ね備えた、ありそうでなかったEV」と表現

 19年発表のサステナビリティー戦略「アンビション2039」によれば、22年には全セグメントで電動化モデルを導入。25年には販売する乗用車の25%をEVに、30年には半分以上をプラグインハイブリッド車(PHEV)とEVにし、39年には自動車単体でのCO2ニュートラルを目指すというのが、メルセデス・ベンツの電動化戦略だ。ただこれはグローバルでの目標であり、日本市場では国内のニーズを鑑みながら、EVとPHEVの電動車のラインアップを増やしていくとしている。

 既にドイツでは、21年4月にフラッグシップセダン「EQS」と3列7人乗りのコンパクトSUV「EQB」を世界初公開しており、メルセデスEQシリーズの拡充は確実に進んでいる。日本への導入は22年の中ごろ以降とされているが、まずは購入のハードルが低いEQAを皮切りに、日本でのEV市場拡大を急ごうとしているのだろう。

(写真提供/メルセデス・ベンツ日本)

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