5年ぶりの大型リニューアルを発表したキリンビールの「氷結」が好調だ。20周年を迎えた20年に続き、21年1~4月もブランド全体の販売数量が過去最高を更新した。20年発売の「氷結 無糖レモン」がビールユーザーも取り込んだヒット商品となったことで、売り上げ増を下支えした。今回のリニューアルでは、「氷結」「氷結 ストロング」全製品のパッケージと中身の改良で独自価値を強化しつつ、RTD以外のユーザーのさらなる取り込みを狙う。

リニューアルした「氷結」「氷結ストロング」シリーズ
リニューアルした「氷結」「氷結ストロング」シリーズ

 2021年1~4月の「氷結」ブランドの販売数量は1310万ケースで、01年の発売以来最高を記録した。売り上げをけん引したのは、レモンチューハイ人気が高まっていた20年10月に発売した「氷結 無糖レモン」だ。氷結 無糖レモンは「ありそうでなかった無糖の氷結レモン」として人気を呼び、発売後7カ月で販売数量1億本を突破。アルコール度数4%と7%の2つの製品をそろえて展開したことで、幅広い購買層からの支持につながった。

 キリンビールマーケティング部「氷結」ブランド担当の桜井可奈子氏によると、20年10月の酒税法改正以降、RTD(レディ・トゥ・ドリンク)市場にはビール類との併飲者が増加している。氷結 無糖レモンも「甘くないのにレモンの風味をしっかりと感じられる」とビールユーザーの支持を得たという。

ビール類、RTDを併飲するユーザーが増加
ビール類、RTDを併飲するユーザーが増加
キリンビールマーケティング部「氷結」ブランド担当の桜井加奈子氏
キリンビールマーケティング部「氷結」ブランド担当の桜井加奈子氏

 好調の中、氷結、氷結 ストロングシリーズの全製品を3月製造分より順次リニューアル(一部パッケージのみ)。今回のリニューアルでは、レギュラー商品の「氷結 シチリア産レモン」を中心に、「おいしい」「爽快」というブランドの中心価値に加え、「品質のよさ」に対するイメージの強化を図った。これまで氷結を飲んだことのない人の試し飲みを喚起し、新規顧客の獲得を狙う。

 中身は、発売以来評価の高い「みずみずしい果汁感」に加えて、「すっきり爽快なおいしさ」を強化して、味のバランスを向上させた。パッケージデザインも変更。氷結はブルーとシルバーをベースに、製品ロゴとみずみずしい果実の写真を中央に配した。「『爽快なおいしさ』を『品質感』とともに表現するデザイン」(キリンビール)としている。氷結 ストロングは、爽快なおいしさと品質感に加えて、しっかりとした飲み応えをデザインで表現したという。

 キリンビールが500人を対象に行ったインターネット調査による氷結の味覚評価では、20年間で最高評価を得た。「みずみずしい感じ」「搾りたてのレモンのような味」といった味覚イメージは現行品と比べて10%以上アップし、1年以上、氷結を飲んでいなかった人(N=120人)の多くも「明らかに今までとは違いおいしかった」と評価した。

発売直後から缶チューハイ市場をリード

 01年に発売した氷結は、収穫後の果実の搾り汁を氷点以下で冷却(氷点凍結)して使用することで実現した果実感と香りが特徴。さらに、焼酎ベースが主流のチューハイを、クリアウオッカベースにすることで、雑味の少ないすっきりとした味わいを目指した。

 その結果、「チューハイはクセがあり人工的」という消費者のイメージを覆し、発売10日で出荷数量が100万ケースを超えるヒット商品になった。初年度売り上げは目標の400万ケースを大幅に上回る611万ケースとなり、RTDカテゴリーのけん引役に躍り出た。

 斬新なパッケージデザインもヒットにつながった。発売当時の缶チューハイのメインユーザーは中高年男性だったが、女性からの「買うのを人に見られるのが恥ずかしい」という声を開発段階で取り入れ、現代的で爽やかなデザインを採用。表面にダイヤ状の凹凸が表れる特徴的な「ダイヤカット缶」は氷の冷たさを表現している。

今回、デザインも5年ぶりに大きくリニューアル
今回、デザインも5年ぶりに大きくリニューアル

 桜井氏は、発売後右肩上がりが続く好調の要因として、「お客様のニーズをいち早くつかんで先駆けた提案をし続けてきたこと」と分析する。

 08年には、健康意識の高まりを受け糖類ゼロの「氷結 ZERO」と、リーマン・ショック後のストレス発散需要に向けたアルコール度数8%の氷結 ストロングを発売。14~18年に夏季限定で発売した150ミリリットルのパウチ容器入り製品「氷結 アイススムージー」は、20年に数量限定で復活して話題になった。

 21年にも夏向け商品を用意。6月22日に、氷結 ストロングシリーズから「氷結 ストロング 夏のレモンミックス」(350ミリリットル缶、500ミリリットル缶)を期間限定で発売し、多様化するニーズに合わせたラインアップを取りそろえる。

 20年のRTD市場のレモンフレーバーの販売動向は前年比約30%増となるなど、レモンチューハイの人気は右肩上がり。その市場で20年以上支持され続けてきた氷結は、大型リニューアルと豊富なラインアップでさらなる市場活性化を狙う。

新しい「氷結」シリーズのCMには「氷結 無糖レモン」から続投の高橋一生と、新たに真木よう子を起用。2人は2021年5月17日に開催された発表会にも登壇した
新しい「氷結」シリーズのCMには「氷結 無糖レモン」から続投の高橋一生と、新たに真木よう子を起用。2人は2021年5月17日に開催された発表会にも登壇した

(写真提供/キリンビール)

5
この記事をいいね!する