1950年の開園から70周年を迎え、大規模なリニューアルを進めていた西武園ゆうえんちが2021年5月19日、グランドオープンを迎えた。「過去最大の投資を行い、生まれ変わらせた」(西武園ゆうえんちの藤井拓巳社長)という新・西武園ゆうえんちの見どころをいち早く紹介する。

エントランスから“昭和感”全開の新「西武園ゆうえんち」。料金は1日レヂャー切符(フリーパス)が大人4400円、小人3300円(いずれも税込み)
エントランスから“昭和感”全開の新「西武園ゆうえんち」。料金は1日レヂャー切符(フリーパス)が大人4400円、小人3300円(いずれも税込み)
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夕日の丘商店街のライブ・パフォーマンス

 新・西武園ゆうえんちのテーマは、1960年代をイメージした“あの頃の日本”。それを端的に示しているのが、昭和時代の商店街をリアルに再現したアーケード「夕日の丘商店街」だ。といっても単なる空間デザインではなく、商店街のあちらこちらでスタッフによるライブ・パフォーマンスが常に繰り広げられるエンターテインメントスペース。傍観者としてではなく、いつの間にか熱気あふれる昭和ワールドの一員になっている没入体験を狙っているという。

 園内での物販店や飲食店での支払いは、原則「西武園通貨」のみ。チケット売り場と商店街内の郵便局で、50園(10園札×5枚)を600円、250園(100園札×2枚と10園札×5枚)を3000円で購入可能。100園札や10園札を使えば、昭和時代の物価がぐっとリアルに感じられる。

今回のリニューアル戦略の最大のポイントは、3カ所あった入り口を1つに集約したこと。入場者全員がまず夕日の丘商店街のアーケードを通ることで、昭和の世界観に没入してから他のアトラクションに進ませるのが狙い
今回のリニューアル戦略の最大のポイントは、3カ所あった入り口を1つに集約したこと。入場者全員がまず夕日の丘商店街のアーケードを通ることで、昭和の世界観に没入してから他のアトラクションに進ませるのが狙い
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1階が商店で2階が住居という昭和の商店スタイルを再現するため、2階部分に植木や洗濯物などを配置して生活感を演出
1階が商店で2階が住居という昭和の商店スタイルを再現するため、2階部分に植木や洗濯物などを配置して生活感を演出
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商店街の至る所で入場者を巻き込んだ住人たちのパフォーマンスが繰り広げられる
商店街の至る所で入場者を巻き込んだ住人たちのパフォーマンスが繰り広げられる
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分かりやす過ぎるルックスの泥棒とお巡りさんのアクロバティックなチェイスは目玉の1つ
分かりやす過ぎるルックスの泥棒とお巡りさんのアクロバティックなチェイスは目玉の1つ
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「美空ひばりがつまずいた小石もおまけにつけてこの値段!」とユーモラスな口上で盛り上げる八百屋さん
「美空ひばりがつまずいた小石もおまけにつけてこの値段!」とユーモラスな口上で盛り上げる八百屋さん
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昔懐かしい昭和フードが楽しめる飲食店

 商店街内の「喫茶ビクトリヤ」では、「スパゲッティ・ナポレターナ」「バタアエビピラフ」「上京カツサンド」などの昭和の洋食や「ゼリイポンチ」「ハットケーキ」といった懐かしいスイーツなどが味わえる。ただ席数が少ないため、しばらくは行列を覚悟しないといけないかもしれない。

 
「喫茶ビクトリヤ」の「スパゲッティ・ナポレターナ」(90園)はデミグラスを加えた特製ケチャップソースと隠し味にバターがきいたコク深い味わい
「喫茶ビクトリヤ」の「スパゲッティ・ナポレターナ」(90園)はデミグラスを加えた特製ケチャップソースと隠し味にバターがきいたコク深い味わい
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「肉のおほみ」のクロケットは黒毛和牛入りの本格派
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「中富米店」で生米を購入すれば、懐かしいポン菓子作りも体験可能。出来たての香ばしさとサクサクの軽い口当たりは今の子供にも受けそうだ
「中富米店」で生米を購入すれば、懐かしいポン菓子作りも体験可能。出来たての香ばしさとサクサクの軽い口当たりは今の子供にも受けそうだ
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「駄菓子 夢見堂」では、「西武園ゆうえんちサブレ」(90園)、「西武園ゆうえんちスナック」(30園)、「メロンクリームソーダわらび餅」(60園)などが購入できる
「駄菓子 夢見堂」では、「西武園ゆうえんちサブレ」(90園)、「西武園ゆうえんちスナック」(30園)、「メロンクリームソーダわらび餅」(60園)などが購入できる
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「ゴジラ・ザ・ライド」は遊園地とは思えない恐怖感

 今回のリニューアルで最も話題を呼びそうなのが、大型ライドアトラクション「ゴジラ・ザ・ライド 大怪獣頂上決戦(以下、ゴジラ・ザ・ライド)」だ。映画館に訪れた人々がゴジラやキングギドラたちの激闘の真っただ中に放り込まれるというスリリングな設定で、VFX(視覚効果)の第一人者で日本を代表する映画監督である山崎貴氏と今回のリニューアルを手掛けたマーケティング集団「刀」のクリエイティブチームがタッグを組んで作り上げた。

 入場前のウエイティングスペースからすでに、仕掛けが始まっている。「巨大物が近づいている」という切迫したアナウンスとともに、みるみるひび割れていく壁。アトラクションのシートが、脱出のために乗り込んだ特殊装甲車という設定。墜落の恐怖、手で触れられそうな至近距離から巨大怪獣が攻撃してくるような恐怖、そして爆発と衝突の恐怖が混然一体となって迫ってくる。

 何より怖いのは、自分が乗っている特殊装甲車が死闘を繰り広げているゴジラとキングギドラの間を縫って飛んでいるという設定なので、まるで自分が怪獣に攻撃されているように感じることだ。入場前の注意書きには、健康上のリスクを持つ人への多くの注意書きのほかに、「高所恐怖症、乗り物酔い、船酔い又はしばしばめまいになりやすい方は利用できない」と書いているが、「格闘技を見るのが苦手な人」「暴力シーンに弱い人」も加えたほうがいいのではないか。4歳以上で身長100cm以上の子供から乗車できるが、子供を同乗させるのも慎重にしたほうがいいと感じた。本格的過ぎるゆえに、「うちの子は怪獣が好きだから」などという軽い気持ちで同乗させるのは危険かもしれない。

しつこ過ぎる注意書きだが、これでも全然足りないと思えるほどの迫力
しつこ過ぎる注意書きだが、これでも全然足りないと思えるほどの迫力
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入場してまず驚かされたのは、座席を覆うほどの巨大なスクリーン。壮大なサウンドとともに、謎の巨大生物同士の死闘にいきなり巻き込まれる
入場してまず驚かされたのは、座席を覆うほどの巨大なスクリーン。壮大なサウンドとともに、謎の巨大生物同士の死闘にいきなり巻き込まれる
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家族で手塚ワールドを体験できる「レッツゴー!レオランド」

 4つのライドアトラクションを含む6つの体験施設がある「レッツゴー!レオランド」にも注目。世代を超えて人気の手塚治虫作品「鉄腕アトム」や「ジャングル大帝」のキャラクターがモチーフなので、家族みんなで楽しめる。

レオランドは長年愛され続けたアトラクションを生かし、ソフト面で改良を加えているのがポイント。ジェットコースター「アトムの月面旅行」は目の前に突然、敵のプルートウが現れて猛スピードで急旋回を繰り返すスリル満点の演出で盛り上がる
レオランドは長年愛され続けたアトラクションを生かし、ソフト面で改良を加えているのがポイント。ジェットコースター「アトムの月面旅行」は目の前に突然、敵のプルートウが現れて猛スピードで急旋回を繰り返すスリル満点の演出で盛り上がる
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懐かしい回転ティーカップアトラクション「レオとライヤのジャングルダンスパーティー」
懐かしい回転ティーカップアトラクション「レオとライヤのジャングルダンスパーティー」
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 レッツゴー!レオランド内には、アトムやレオをはじめとした手塚治虫作品の人気キャラクターたちをデザインした西武園ゆうえんち限定のグッズを販売するショップ「レッツゴー!バザール」がある。

「ジャングル大帝レオ」のレオの肉球をイメージしたグミ「レッツゴー!レオランド 肉球グミ」(50園)
「ジャングル大帝レオ」のレオの肉球をイメージしたグミ「レッツゴー!レオランド 肉球グミ」(50園)
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 遊園地は幅広い年代の家族がみんなで楽しめるように、さまざまなタイプのアトラクションをそろえる必要がある。西武園ゆうえんちのアトラクション構成も遊園地としては常道なのだが、気がかりなのはゴジラ・ザ・ライドの攻撃性の強い恐怖刺激が突出していること。夕日の丘商店街の平和な世界観に没入した後だけに、余計にそう感じるのだ(それが狙いかもしれないが)。

 もちろん、ゴジラ・ザ・ライドの刺激を楽しめる子供連れもいるだろう。ただ、そのショックで夕日の丘商店街やレオランドの平和な世界観を楽しめない人がいるかもしれないので、「遊園地のアトラクションだから」と安心し過ぎないほうがいい。