中小企業が抱えがちな労務コンプライアンス上のリスク(労務リスク)を全国で均質に診断できるシステムが動き出す。主役となるのは、2021年3月30日に設立されたばかりの一般社団法人「労務コンプライアンス協会」だ。地方に拠点を置く社会保険労務士などが会費を払って社団法人に加入すれば、みらいコンサルティング(東京・中央)を中核とするみらいコンサルティンググループが提供する「労務診断システム」を低価格で利用できる。収集・蓄積した診断データに基づくDX(デジタルトランスフォーメーション)によって、働きやすい中小企業を増やし、併せて労務コンサルティング市場の拡大も目指す。
労務コンプライアンス協会の設立を主導したのは、発起人であるみらいコンサルティンググループとTMC経営支援センター(栃木県那須塩原市)を中心とするTMCグループ、杜若経営法律事務所(東京・千代田)だ。全国の社会保険労務士や弁護士、その所属事務所などが新たな社団法人へ参加することで、その主な顧客である日本の中小企業の労務コンプライアンス体制を整備するのが狙いだ。
具体的には、中小企業を対象としたIPO(新規株式公開)を前提とする労務デューデリジェンス(DD)や改善コンサルティングの手法、最新事例などを、会員の間で共有。併せて労務リスクの調査・診断システムやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の活用を、会員とその顧客企業に促していく。
みらいコンサルの労務診断システムが社団法人に提供される
この活動の肝となるのが、社会保険労務士法人みらいコンサルティングなどを傘下に置くみらいコンサルティンググループが提供する、労務診断システムだ。同グループは2004年以来、主にIPOを目指す中小企業を相手に、グループで抱える社会保険労務士約40人が、労務リスクの改善を指導してきた。指導した中小企業の数は累計で1000社以上に及ぶ。同グループはDXを進め、ここから得られた知見をデータ化し、システム化した。
労務診断システムは、具体的には次のように使われる。
社会保険労務士は、労務状況を診断する中小企業の担当者にまずアンケートに回答してもらい、併せて必要な書類を提出してもらう。データで回答をもらった場合はそのままで、紙で回答をもらった場合は社会保険労務士が手書きで、それぞれシステムへ入力。対象企業の状況をデータ化する。
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