ペットボトル入りコーヒー「コスタ ブラック」「コスタ カフェラテ」は、2021年4月12日にコンビニなどで先行発売した直後から品薄になり、同月26日に全国発売した直後に出荷停止を発表した。原因は、想定を超えた売れ行き。発売元のコカ・コーラシステムは、製品の安定供給態勢を整え、6月7日に再販売する。同商品は、米コカ・コーラ社が19年に買収した欧州最大カフェブランド「コスタコーヒー」発のRTD(レディー・トゥ・ドリンク)製品。そのブランドを生かしたマーケティング戦略について、日本コカ・コーラの担当者に話を聞いた。

2021年4月26日に発売したコスタコーヒー「コスタ ブラック」(270ミリリットル)、158円(税別)と「コスタ カフェラテ」(270ミリリットル)、167円(税別)。香りを感じやすい広口のペットボトル形状を採用した
2021年4月26日に発売したコスタコーヒー「コスタ ブラック」(270ミリリットル)、158円(税別)と「コスタ カフェラテ」(270ミリリットル)、167円(税別)。香りを感じやすい広口のペットボトル形状を採用した

アジア4カ国目の進出

 「コスタ ブラック」「コスタ カフェラテ」の販売停止について、日本コカ・コーラコスタディビジョンマーケティングリーダーの伊藤弘隆氏は、「コスタコーヒーのペットボトルコーヒーを楽しみにしてくださっていたお客様や取引先の皆様にはご迷惑をおかけして大変申し訳ない」とし、その原因として「予想をはるかに上回る売れ行き」を挙げた。「発売前のティーザー広告などのコミュニケーション活動で醸成された期待感や、店頭・販促活動でトライアル促進、味わいへの高い評価で多くの人にお求めいただけたのだと思う」と話す。

 また、SNSでの口コミも大きい。「おいしい」「コーヒーの味わいがしっかりしている」など、事前の期待を裏切らない味わいに対して高い評価が書き込まれ、それを見た人が製品を試すというプラスのスパイラルにもつながったと伊藤氏は分析する。

 コカ・コーラシステムでは、販売停止の反省を基に販売計画を再設定。安定供給の態勢が整ったとして、2021年6月7日から2製品を再販売する。

コロナ禍でコーヒーへのニーズが拡大

 コスタコーヒーは1971年にイタリア人のコスタ兄弟がロンドンで創業し、41カ国で3800店舗以上のカフェを展開しているカフェブランドだ。本国では2010~20年の11年連続で「英国およびアイルランドで最高のブランド・コーヒーショップ・チェーン」(アレグラ・ストラテジーズ)に選ばれる国民的コーヒーショップと言っていい。

 19年に米コカ・コーラ社が買収。グループ傘下で、RTD製品やコーヒー豆といった消費財の製造・販売のほか、本格マシンを導入したセルフ方式の無人カフェの設置、飲食店用卓上マシンの販売や直営カフェの運営など、幅広い事業を展開している。日本には20年春に進出。今回のRTD製品発売以前から、飲食店への卓上マシンの提供を進め、現在では、飲食店や映画館、野球場、無人カフェなど250拠点以上でコスタコーヒーを楽しめる。

 日本コカ・コーラによると、日本国内のコーヒー市場は約3兆円で、内訳はRTDコーヒーが約1兆円、手淹(い)れやカフェ、インスタントなどの非RTDコーヒーが約2兆円。20年はコロナ禍による在宅時間の長期化で非RTD消費が前年比約10%増加し、多様なコーヒーの楽しみ方へのニーズが強まっているという。

 ユーザーベースで見ても、楽しみ方は分散している。同社の調査では、コーヒー消費者のうち、RTDコーヒー飲用者は600万人、RTD/非RTDの併飲者が2400万人、非RTD飲用者が4300万人いることが分かった。

 多様な飲用目的やシーンを捉え、コーヒー市場をさらに拡大、活性化するため、同社が取るのがデュアルバンド戦略だ。「ジョージア」という看板ブランドに加え、コスタコーヒーブランドも展開する。両者の棲み分けとして、ジョージアはコーヒーシェア1位という安定感を生かし、自販機や小型缶の飲用率が高いRTD飲用者をメインターゲットに展開。コスタコーヒーは高級路線で、RTD/非RTDの併飲者および手淹れしか飲まないこだわり層の取り込みを狙う。

ゼネラルマネジャーに戦略を聞く

 ここからは日本コカ・コーラコスタディビジョンのゼネラルマネジャーを務める金沢博史氏に今後のブランド戦略について聞いた。

――日本は、中国、マレーシア、インドに続くアジアで4カ国目の進出市場となりました。

金沢氏 日本は年間のコーヒー消費量で米国に次ぐコーヒー大国です。味覚も優れておりコーヒーのおいしさを理解する成熟した市場だと考えています。

――改めてコスタコーヒーブランドのターゲットを教えてください。

金沢氏 30~50代のビジネスパーソンで、確かな品質を見極める力を持っている人。新製品やサービスへの感度が高く、納得したものに対価を払うことに価値を感じる人です。

――ターゲット層に訴えるブランド価値とは何でしょう。

金沢氏 「バリスタ・クオリティ」を掲げており、通常の1.3倍量の豆を使用したリッチな味わいや長時間かけた丁寧な焙煎(ばいせん)による本格的な香りが特徴です。さらに、今回発売した「コスタ ブラック」「コスタ カフェラテ」では、自然環境に配慮した生産過程であることを認める「レインフォレスト・アライアンス認証」を受けた豆だけを使用したり、「コスタ カフェラテ」では国産ミルクを使用したりと、サステナビリティーの観点でも安心していただけます。

――RTD製品の発売以前から、店舗への卓上マシンの提供など、日本でも順次事業を拡大していますが、欧州のように直営カフェのオープン予定はあるのでしょうか?

金沢氏 直営カフェは現在検討中ですが、当面は、飲食店などへの卓上マシンの提供を進めていきたいと思います。今は首都圏が中心ですが、21年第2四半期以降、例えば名古屋、大阪、福岡などの主要都市を中心に、コスタコーヒーを飲める場所を順次拡大していければと考えています。そのためにも、「アンバサダー」と呼ぶ専門知識を有した社員がマシン調整やプレス具合、豆の量、ミルク温度に至るまでフォローするなどマンパワーを割いて、飲食店へのサポートに注力しています。

――導入する飲食店はどのように選定するのですか。

金沢氏 ブランド価値と親和性の高い店をハンティングして営業をかけています。

――例えば、スターバックスは店舗展開が先で、RTD製品などの消費財はブランド認知が進んでから手掛けました。直営店オープンよりも前に消費財を導入することへの勝算は?

金沢氏 コスタコーヒーではテレビCM、新聞広告、デジタルや店頭プロモーションなど全方位のマーケ施策を一気に仕掛けることで、ブランドの認知度を上げていきます。その上、RTD製品を全国展開すれば、ブランド価値は上がるでしょう。取扱飲食店へ“わざわざ探して行く”という消費者行動につながり、飲食店への送客効果も見込めるのではと考えます。

テレビCM、新聞広告、デジタルや店頭プロモーションなど全方位のマーケ施策を一気に仕掛ける
テレビCM、新聞広告、デジタルや店頭プロモーションなど全方位のマーケ施策を一気に仕掛ける

――マシンを提供する飲食店と直営店の棲み分けは?

金沢氏 直営店はブランド体験を創出する場であるべきだと考えます。RTD製品同様、店舗でもブランド価値を醸成し、ユーザーとのコミュニケーションを積み重ねることで、その世界観を感じられる飲食店への集客性も向上させられます。

――今後、RTD製品の拡充の予定はありますか。

金沢氏 例えば、デカフェなど可能性は無限大ですが、まずはコアを育てないとブランドとして長く続きません。そのため、まずは今回発売した2製品でブランドの価値を体現していきたいと思います。

――コスタコーヒーがコカ・コーラ社傘下に入った最大のメリットは何でしょう?

金沢氏 コスタコーヒーはコーヒービジネス能力ではずば抜けていますが、これまでマス広告は打たず店舗がPR媒体でもありました。一方、コカ・コーラ社のマーケティング能力とRTD製品の開発能力そしてコカ・コーラの特徴であるボトラー社(ボトリング販社)のネットワークはグローバル展開において大きな優位性でしょう。

――国内でのブランド展開について、当面のゴールを教えてください。

金沢氏 まずは誰もがすぐに思いつくようなカフェチェーンの中に入ることです。

(写真提供/日本コカ・コーラ)

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