パナソニックは投入口が7.4センチのポスト「Pakemo(パケモ)」と専用エントランスポール「Archi Frame(アーキフレーム) Jタイプ」を2021年6月1日に発売する。大型郵便物や小型荷物を受け取れるようにし、再配達の削減にもつなげる考えだ。

パナソニックの小包ポスト「Pakemo(パケモ)」。日本郵便の「ゆうパケットプラス専用箱」がスムーズに入れられる。内容量は幅30センチ、奥行き15センチ、高さ34センチ
パナソニックの小包ポスト「Pakemo(パケモ)」。日本郵便の「ゆうパケットプラス専用箱」がスムーズに入れられる。内容量は幅30センチ、奥行き15センチ、高さ34センチ
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ECやフリマアプリ利用者増に対応

 パナソニックの小包ポスト、パケモと専用エントランスポールであるアーキフレーム Jタイプは一戸建て向けの商品で、希望小売価格はパケモが7万9310円、アーキフレームJタイプはLEDユニットなしが6万8970円、LEDユニットありが8万740円(いずれも税込み)。

 パナソニックのハウジングシステム事業部の原望氏は、同社がポストを発売してから55年の間、積み重ねてきた成型技術を生かし、パケモを開発。背景には、新型コロナウイルス感染症拡大以前から、EC利用者やフリマアプリの利用者が増加していたことがあるという。

左がパナソニックのハウジングシステム事業部の原望氏
左がパナソニックのハウジングシステム事業部の原望氏
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 原氏は郵便物そのものは減少傾向にあるものの、小包は増加していることを説明。その要因となっているのが、ECだ。経済産業省による「令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)」においても、2019年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、19.4兆円(前年18.0兆円、前年比7.65%増)、BtoB-EC(企業間電子商取引)市場規模は353.0兆円(前年344.2兆円、前年比2.5%増)に拡大している。

 利用者の拡大に伴い、ECサイトやフリマアプリでは発送時の利便性や簡便性を上げるため、商品を大型郵便物あるいは小型荷物として「ポスト投函(とうかん)」できるようにしているケースが増えた。そこでフリマアプリのメルカリなどが使用する、日本郵便の「ゆうパケットプラス専用箱」(長さ24センチ、幅17センチ、厚さ7センチ以下)が入れやすい、長辺33センチ、短辺7.4センチにパケモの投入口を設計。家に届いた大型郵便物や小型荷物を非対面で受け取れるようにした。

 投入口を大きくした分、盗難の危険性に配慮し、フラップを中央で分割してそれぞれ可動するように設計。荷物を入れる際には抵抗がないが、それを取り出そうと手を入れれば引き出しにくく、荷物も抜け取りにくくしている。配達員(郵便局員)はパケモ上部の蓋を開けて荷物を投入、ユーザーは事前に設定された暗証番号でパケモを解錠し、取り出す。パケモは専用ポールだけでなく、門塀、外壁、門柱に設置可能だ。

盗難に配慮した設計になっているという
盗難に配慮した設計になっているという
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既存ポストでは大型荷物が入らない

 既存の、サインポスト(玄関ポスト)などと呼ばれる一般的な郵便受け箱では、こうした荷物は受け取れないのだろうか。実はこれまでの玄関ポストの投入口は、一般的に短辺が3~3.5センチのタイプが多かった。このため、ECサイトやフリマアプリで入手した商品がポスト投函可で配達されてきても入らず、結局宅配物同様に対面での受け渡しが必要で、不在時には再配達になってしまう。

 加えて、近年のユーザーニーズともズレが生じている。パナソニックが20年4月に858世帯を対象に行ったアンケートによれば、約7割が在宅であっても宅配物を手渡しでなく非対面で受け取ることを希望、同じく約7割が対面での受け取りに不安を感じていることが明らかになったという。

 同社では今後ユーザー、配達業者双方のこうした負担を軽減する手段として、パケモを提案していく考えだ。

大型郵便物を同時に2つまで受け取れるサイズだ
大型郵便物を同時に2つまで受け取れるサイズだ
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新築のほか、リフォーム物件にも設置

 パケモのターゲットは「新築戸建市場および戸建リフォーム(後付け)市場」で、具体的には「不在、もしくは在宅でも非対面での受け取りを希望していて、なおかつ住宅購入と同時に宅配ボックス設置までは考えていない」住宅購入世帯を想定していると原氏。

 パナソニックは宅配ボックスも販売しており、20年度の売り上げは19年度に比べ2桁成長を見せたという。同社は社会課題解決プロジェクトとして、「再配達削減による物流・環境・労働・衛生課題解決」を掲げ、「宅配ボックスCOMBO(コンボ)」を使った実証実験を実施、その有効性は確認済みだ。ただ、宅配ボックスは設置場所の問題などで顧客が希望しないケースもあることから、「大型郵便までをパケモで受け取れるようにすることで、(宅配ボックスまで設置しなくても)再配達を減らせると考えている」(原氏)。

 年間販売目標は明らかにしていないが、「従来のサインポストから大型郵便物が受け取れるパケモへの切り替えを狙っていく」と原氏。「新築の場合、1戸に1台ポストが設置されると考えると、21年度のポスト設置個数は約40万個弱と考えられる。一方、リフォームの対象となる住宅ストック件数から空き家を除くと、約2800万戸ともいわれており、少なく見積もって壁掛け取り付けポストは、そのうち25%と推定される。700万個前後が今回のポストの交換需要、サブターゲットとなるのではないかと考えている。これら全てを押さえていきたい」と話した。

 なおリフォーム会社、工務店のほか、ホームセンターでも販売予定だ。

(写真提供/パナソニック)