エイベックス・エンタテインメント(東京・港)が2021年3月、米国のライブ・エンターテインメント企業であるAEG Presents(AEG)との共同事業「AEGX」の立ち上げを発表した。アジアのアーティストやコンテンツの世界進出を進め、グローバル戦略を加速する狙い。エイベックス・エンタテインメント 取締役兼ライヴ事業本部長の山中昭人氏と、AEG日本代表でアジア担当エグゼクティブ・バイス・プレジデントの北谷賢司氏に、共同事業を始めた理由と今後の戦略を聞いた。
AEGXでは、アーティストの海外展開のためのライブ事業やプロモーションなどを共同で進める。主に3つのビジネス展開を目指す提携事業だ。
1つは、AEGが運用する世界規模のコンサート興行機能を活用し、日本人、韓国人アーティストの国際市場を拡大すること。2つ目は、AEGが世界ツアー興行権を取得しているアーティストの日本、アジア市場でのツアー興行を効率よく実現すること。3つ目は、日本に新たな国際音楽フェスティバルをつくり、世界有数のブランド・イベントに育成することだ。
コロナ禍の今、日本のアーティストの海外ライブなどは実現が難しい状況だが、アフターコロナを見据えてグローバル事業を拡大する準備を進める。
背景にあるのは、海外進出を志向するアーティストの増加。エイベックス・エンタテインメント取締役兼ライヴ事業本部長の山中昭人氏は、「音楽のビジネスモデルが変化している昨今、売り上げに占めるライブでの収益の割合は大きくなっている。そんな中、海外ツアーに出たほうが売り上げも増えるし、ライブに付随してサブスクリプション(型の音楽配信サービス)での収益増も期待できます」と現状を説明する。
過去には自らワールドツアーやアジアツアーをアレンジしたこともあったが、簡単なことではなかったと山中氏は振り返る。
「国ごとにプロモーターが代わるので、すべての国とやりとりする労力が大きい。場所によって会場のキャパ(収容人数)も違うので、それ相応の準備も増えます。アーティストに対して国ごとに最適なプロモーションができているかというと、それも疑問でした。最適なソリューションは、ツアーにおいてライブ会場の選定からプロモーションまでをまとめてできる機能を持つこと。それができるのがAEGです。アーティストにとってはもちろん、エイベックスとしても圧倒的にメリットがあることです」(山中氏)
AEG Presentsは、米国のコングロマリットであるAEGの傘下にある音楽興行会社。NBAのロサンゼルス・レイカーズ、NHLのロサンゼルス・キングスを筆頭にプロスポーツチームを複数有し、世界各国でアリーナや多目的劇場を核とするエンターテインメント街を開発・運営している。音楽フェスティバルも世界約50カ所で開催しており、グローバルプロモーターとしてセリーヌ・ディオンやエド・シーラン、テイラー・スウィフト、ザ・ローリング・ストーンズらトップアーティストの世界ツアーの興行権も所持している。
アジアではすでに上海とシンガポールに拠点を置いており、アジアツアーを開催する場合も現地のプロモーターに頼らずにツアーを展開できる。「ポテンシャルロスは最小限に抑えられる」(山中氏)という。
海外展開を支援するアーティストは、エイベックスの所属・契約アーティストに限定しない。エイベックスでは韓国のアーティストの日本マネジメントも担っており、幅広いアジア圏のアーティストも対象にする意向だ。
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