2021年4月に大幅なリブランディングを決行した飲食チェーン、プロント。これまでのカフェ&バーから、昼はカフェ、夜は新業態「キッサカバ」(喫茶+酒場)と二面性を押し出した。手掛けたのは親会社のサントリー時代に米国サンフランシスコで行列ができる抹茶カフェをプロデュースした、プロントコーポレーション(東京・港)取締役プロントカンパニー長ブランド戦略部長の片山義一氏。大転換の裏側を聞いた。

リブランディング1号店のプロント銀座コリドー店
リブランディング1号店のプロント銀座コリドー店

いつの間にか「選ばれない店」に

――今回のリブランディングで特徴的なのが、「喫茶」と「酒場」を組み合わせた「キッサカバ」というコンセプトです。昼間のカフェタイムと、夜のキッサカバで外観や店内の雰囲気、メニューやBGMまでがガラリと変わる独特のシステムですね。(関連記事「前年比50%から巻き返し プロントが新戦略『キッサカバ』で再起」)

片山義一氏(以下、片山氏) 目指したのは映画『千と千尋の神隠し』の世界観です。映画では、昼は静かな商店街が、夜になると暖簾が掛かり、ネオンが灯り、怪しい雰囲気に包まれる。映画のストーリーとは別にあの不思議な世界観と違和感に魅力を感じた人は多いと思います。

 人も飲食店もギャップが激しく二面性があるほど面白く魅力的。昼は洗練されたカフェなのに、夕方になると、暖簾が掛かり、ネオンが灯り、サカバへと変貌する。同じ店なのに全く違う顔を持つ二面性と違和感を重視しました。

プロントコーポレーション取締役プロントカンパニー長ブランド戦略部長の片山義一氏
プロントコーポレーション取締役プロントカンパニー長ブランド戦略部長の片山義一氏

――二面性といえば、プロントはカフェ&バーという2つの業態の利点を併せ持っていましたが、なぜリブランディングに踏み切ったのでしょうか?

片山氏 以前のプロントは二面性というより二毛作でした。1980〜90年代にカフェ&バーが流行したのは、お酒が飲める外食店といえば大箱(広い店内)の居酒屋ばかりが乱立していたからです。カクテルも飲めるカフェ&バーはかっこいい最先端の店と捉えられ、顧客のロイヤル化もすごかった。しかし、その流行は過ぎ去りました。それにも関わらず、プロントは不動だった。いつの間にか選ばれる店ではなくなっていました。

 2020年4月に発出された緊急事態宣言が明けたとき、スターバックスやコメダ珈琲店には再び人が集まり、一部の飲食店は夜、にぎわっていることが問題視されたりもしましたが、プロントには人はほとんど戻らなかった。ほとんどの店がオフィス街や駅近といった流動人口の多い便利な立地にあるにもかかわらずです。

 理由を考えてみると、スタバやコメダにあってプロントに欠けているものがありました。ブランド力です。具体的に言うと、ファッション性やおいしさ、サービスといった強みがきちんと消費者に伝わっているかどうかです。

 その観点で見ると、プロントのカフェ&バーという二毛作の個性は弱みになっていると気づきました。時代は変わり、ニーズの変化も早くなっている中で、プロントはカフェ&バーのまま20年、30年と変わらずきてしまっていたため、ブランドとしての試行錯誤の積み重ねがありません。

1988年に開店した銀座並木通り店
1988年に開店した銀座並木通り店

――コロナ禍だからこそ、課題が浮き彫りになったということですね。今回のリブランディングに至るまで、どのような紆余曲折があったのですか。

片山氏 まず、首都圏のプロント全店と主要な競合店を見て歩きました。そこで、最初に気づいたのが、プロントに来ていたお客様の顔が“喜んでいない”ということ。便利だから来ているお客様が多く、「好きだから」「おいしいから」という前向きな動機が少ない。

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