コロナ禍以来、米国ではアジア人に対するヘイトクライム(憎悪犯罪)が後を絶たない。2020年3月から21年2月までの間に、アジア人を対象としたヘイト行動は約3800件も報告されている(NPOのStop AAPI Hate調べ)。これにデザイナーも立ち上がった。ニューヨークのファッションデザイナーにはアジア系も多いが、その中の1人、フィリップ・リム氏は20年に事務所をチャイナタウンに移転したうえ、いわゆる社会活動家としても行動を開始している。
同氏はティファニーのエグゼクティブ・クリエイティブディレクターのルーバ・アブ=ニマー氏と「New York Tougher than Ever」を組織し、そこからTシャツやキーチェーンを販売、売り上げのすべてを反ヘイト活動に寄付している。リム氏は「もはや自分のブランドと活動を分けて考えることはできない」などと、メディアで語っていた。
日常生活で主張したい
警察官による黒人の暴行死に抗議する「ブラック・ライブズ・マター(BLM、黒人の命も大切)」運動と同様、アジアおよび太平洋諸島系米国人(AAPI)へのヘイト問題に対する運動でも、さまざまなグッズが登場している。Tシャツ、バッジ、マグカップ、キーチェーン、シール、アクセサリーなどがあるが、そこで使われるキャッチコピーも多様だ。「アジア人はウイルスじゃない。ウイルスは人種差別のほうだ」「AAPIへのヘイトをストップしろ」「Asian Lives Matter」と直接的に叫ぶものから、「素晴らしくアジア人」「アジア人であることが誇り」といった、静かな訴えをするタイプもある。
アフリカ系とアジア系が対立した過去の歴史に鑑みて、BLM運動とAAPIの連帯をうたうグッズも見られる。自分の立つスタンスを表現する方法と商品が模索されているようだ。グッズは手作りであったりTシャツのプリントショップが製造していたりするが、手作りサイトの「Etsy」などがユニークな商品が見つかる場所となっている。
すぐにこうしたグッズがそろうところが米国で、売り上げの一部を関連活動に寄付する例も少なくない。抗議デモなどに参加する際に身に着けるだけではなく、日常生活で主張するためのツールになっている。
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