音楽著作権などの印税(ロイヤルティー)を取引する新サービスが2021年6月から始まる。印税を受け取る一定期間の権利を、ファンや投資家などが小口でも買えるようにする仕組み。コロナ禍でアーティストの収入源も大きく変化する中、サブスクリプションサービスの利用が拡大し、過去のヒット曲などのカタログ音源の価値が上がっている。アーティストにとっては活動資金調達の新手法に、ファンにとっては新たな応援手段になる可能性がある。

 クラシックの総合情報誌「ぶらあぼ」を発行するぶらあぼホールディングスの子会社で21年1月に設立したロイヤリティバンク(東京・千代田)が21年4月、ルクセンブルクのスタートアップ企業ANote Music Sarl(エイノート・ミュージック)と業務提携。エイノート・ミュージックのプラットフォームを日本語化し、日本のアーティストや音楽出版社が持つ印税を受け取る権利を小口で取引できるよう準備を進めている。

ロイヤリティバンクのホームページではサービスの仕組みなどを紹介している
ロイヤリティバンクのホームページではサービスの仕組みなどを紹介している

 「Royalty Bank取引所 Powered by ANote Music」は、権利者と投資家をマッチングさせるプラットフォームだ。例えば、アーティストなど権利者が、年間の印税収入が100万円のカタログ(楽曲集)10年間分の印税を受け取る権利を取引所に出し、これを利用者(投資家)に750万円で売り出したとする。投資家は、その後に支払われた印税が仮に毎年100万円だった場合、100万円×10年分の合計、1000万円のロイヤルティーを受け取れる計算だ。上記の条件において年利で2.5%程度を想定して値決めをした場合の例だ。

音楽著作権分野における印税の流れ
音楽著作権分野における印税の流れ
図中の太い青の矢印の印税を受け取れる権利が対象となる

 音楽ファンなどが1000円程度からの小口で買えるようにするのが最大の特徴。「投資=応援というか、楽曲や作品のアーティストの付加価値を高めるパートナーのような位置付け」と説明するのは、ロイヤリティバンク代表取締役会長CEOの佐々木隆一氏。「小口化できるのが、すごく重要」(佐々木氏)で、CDと同じぐらいの価格で買えるようにすることにより、ファンクラブに加入するような感覚でアーティストへの応援投資ができる。

佐々木隆一CEO(最高経営責任者)。ロイヤリティバンクの親会社ぶらあぼホールディングスのCEOも務める。著作権情報集中処理機構(CDC)の会長でもある
佐々木隆一CEO(最高経営責任者)。ロイヤリティバンクの親会社ぶらあぼホールディングスのCEOも務める。著作権情報集中処理機構(CDC)の会長でもある

 アーティストをはじめとしたクリエイターを応援する仕組みとしてはクラウドファンディングの利用も広がっている。ただ「クラウドファンディングは資金が集まった後に、様々なことをしなくてはいけないが、ロイヤルティー取引は対象が印税なので、極端な話、何もやらなくていい」(ロイヤリティバンク取締役社長COOの坂上晃一氏)ことが大きな違いとなる。まずはジャズやフォーク、歌謡曲など4~5つのカタログを用意してサービスを始める計画だ。

坂上晃一取締役社長COO(最高執行責任者)。音楽誌やカルチャー誌の編集長などの後、インプレスホールディングスの広報部長なども務めた
坂上晃一取締役社長COO(最高執行責任者)。音楽誌やカルチャー誌の編集長などの後、インプレスホールディングスの広報部長なども務めた
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