6000人規模の「芸人AI(人工知能)化プロジェクト」が始動した。仕掛けるのは吉本興業だ。米カリフォルニアのAIスタートアップObEN(オーベン)と合弁会社「Yoshimoto ObEN AI Agency」を立ち上げ、中国市場の開拓に乗り出す。コロナ禍を追い風にバーチャルビジネスの需要が高まる中、吉本興業の本気度とは。

芸人をAIアバター化するプロジェクトの第1号はゆりやんレトリィバァ
芸人をAIアバター化するプロジェクトの第1号はゆりやんレトリィバァ

米国ではNBA選手、日本だったら芸人アバター

 「10年、20年先の未来を先取りして、メタバース(仮想空間)上で新しいエンタメを切り開く。新たな事業のキーワードは『グローバル』だ」

 吉本興業が新規事業「よしもと芸人AIプロジェクト」について発表したのは2020年12月のこと。グループ会社であるよしもとセールスプロモーション(東京・新宿)取締役の志村一隆氏は、発表の場で、意気揚々とそう宣言した。21年2月には事業を担う合弁会社Yoshimoto ObEN AI Agency(以下、YOAA)を正式に設立し、同氏が社長に就任した。

 吉本興業がYOAAを設立した背景には、米カリフォルニア州パサデナに拠点を置くAIスタートアップ企業・ObEN(オーベン)の存在がある。よしもと芸人AIプロジェクトは、ソフトバンク・ベンチャーズ・アジアや中国テンセント、台湾HTCなどから出資を受けるObENが保有するAI技術が肝であるからだ。

 吉本興業とObENのタッグの始まりは約3年前に遡る。「ObENからアプローチを受けたのがきっかけだった」と志村氏。「当時、ObENはNBA(全米プロバスケットボール協会)のスター選手のアバターなどを作っていた。日本だったら芸人のアバターを作りたいと、吉本の本社まで足を運んでくれたのを機に、一緒に開発することになった」。

 これは吉本興業にとって渡りに船だった。同社は、15年から台湾、タイ、インドネ シア、マレーシア、ベトナム、フィリピン、ミャンマーにおいて、芸⼈が現地のスタ ーを⽬指して活動する「住みますアジア芸⼈」プロジェクトを開始。中国においては メディア⼤⼿の上海⽂広演芸集団(上海市)と提携し、上海市で劇場の運営に乗り出す計画を新たに進めている。4月14日には中国の大手配信プラットフォーム「優酷(YOUKU)」において、アジア各国出身のメンバーで構成するボーイズグループ結成を目指すアジア最大規模のオーディション番組「亜州超星団(ASIA SUPER YOUNG)」を展開することも発表した。3月に上海で設立したライブコマース事業を担う新会社上海吉有喜本文化艺术传播有限公司(Shanghai Yoshimoto Culture Entertainment)が地域密着型でエンターテイメント事業全般に踏み込んでいく狙いがあり、グローバル展開は今や経営戦略の柱の1つだ。

 また、12年から、グループ傘下の吉本ロボット研究所(東京・新宿)で、ソフトバンクグループのロボット「Pepper」のキャラクター演出やロボットアプリの開発なども手掛けている。これらの延長線上に、よしもと芸人AIプロジェクトがあると考えたわけだ。

 日本市場の開拓を狙うObENとも利害が一致した。吉本興業に所属する約6000人のタレントをIP(知的財産)とし、ObENのAI技術を組み合わせた新たな事業を模索することになった。

芸人AIアバター第1号はゆりやんレトリィバァ

 よしもとアバター事業の成果の1つは、20年12月の記者会見でメディア向けに初公開した。芸人AIアバターの第1号となったのは、人気女性芸人のゆりやんレトリィバァだ。

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