サントリーは使用済みペットボトルを新たなペットボトルとしてリサイクルする「ボトルtoボトル」の認知向上を目指す「またあえるボトル」プロジェクトを開始した。第1弾として2021年4月13日から「GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶」にサステナブル素材を100%使用したボトルを全面導入。商品へのロゴ掲示やデジタル広告などを通じ、ペットボトルがサステナブル素材であることや分別、リサイクルの重要性を伝える。飲料メーカー各社では、サステナブル素材100%の容器など環境施策の導入や開発が進んでいる。
「またあえるボトル」プロジェクトは、使用済みペットボトルを洗浄・粉砕して新しいペットボトルに再生する「ボトルtoボトル」(BtoB)の仕組みや、飲み終わったペットボトルは半永久的に何度もペットボトルに循環できるサステナブルな素材であること、それ故に正しい分別廃棄が重要であることを消費者に伝えるのが目的。同プロジェクトのロゴマークを新たに作り、商品で掲示するほか、デジタル広告、オウンドメディアでのメッセージ動画をSNSで拡散したりOOH(屋外広告)、自販機を活用したりして認知を広める計画だ。
BtoBでないと環境負荷がかかる
現在、使用済みペットボトルが新しいペットボトルとして再生される割合は1~2割程度で、それ以外はトレーや繊維などにリサイクルされている。しかし、それらの用途では「複数回の再利用でリサイクルの輪が途切れて焼却されてしまう」とサントリー執行役員コーポレートサステナビリティ推進本部長福本ともみ氏。加えて、新品のペットボトルを作る際には、トレーなどにリサイクルされた分の原料を補填するため化石由来のプラスチックを新たに使わなければならず、環境負荷になるのも問題だ。
サントリーでは2030年までにグローバルにおける同社ペットボトル製品すべてをリサイクル素材あるいは植物由来素材にしていくことによって、化石由来の原料を使ったペットボトルをゼロにしていく取り組みを進めている。この目標を実現するためには、BtoBのリサイクルを拡大し、使用済みの原料を同じ種類の製品に生まれ変わらせる「水平リサイクル」に転換することが重要だと捉え、「あつめる→つくる→つかう→つたえる」の4ステップに分けて自治体や教育機関、他企業などあらゆるステークホルダーとの連携を強化してきた。
「つかう」では、業界に先駆けて10年前からリサイクル素材を導入。12年には国内飲料メーカーとして初めて回収後のペットボトルからペットボトルを作り出す技術「BtoBメカニカルリサイクル」を協栄産業(栃木県小山市)と共同開発し、再生ペット樹脂100%のペットボトル製品を発売。それ以降も各ブランドに積極的に導入を進めており、20年には同社製品のうち約26%がリサイクル素材100%のペットボトルに切り替わった。25年までに50%に引き上げる計画だったが、順調な推移のため22年の達成へと3年も計画を前倒しした。
「つくる」ではメカニカルリサイクルの技術をさらに進化させ、18年に世界初の技術「FtoPダイレクトリサイクル技術」を協栄産業、設備メーカーとともに開発。リサイクル工程を効率化して熱エネルギーを削減できるため、二酸化炭素(CO2)の排出量を減らせる。石油から新規にペットボトルを作った場合と比べて60%以上もCO2が削減できるという(関連記事「サントリー、キリンのパッケージ戦略 リサイクル待ったなし」)。
「あつめる」では、各地域自治体と連携し使用済みペットボトルを集める取り組みを進めており、21年2月には企業と複数自治体の取り組みとしては国内では初めて、同社の高砂工場がある兵庫県高砂市を含めた2市2町とBtoBリサイクル事業に関する協定を締結した(関連記事「サントリーが国内初のペットボトルリサイクル事業を自治体と締結」)。
今回のまたあえるボトルプロジェクトは、「つたえる」の取り組み。福本氏は、「良質なペットボトルを集めてBtoBのリサイクルを進める上では行政、業界団体、教育機関、消費者などさまざまなステークホルダーと連携が必要。今後、4つのステップの中でも『あつめる』と『つたえる』を特に強化する」と述べた。
サントリー食品インターナショナル執行役員ジャパン事業本部コミュニケーション本部長の和田龍夫氏も、「課題として捉えているのが『あつめる』だ」と訴える。サントリーの調査によると、家庭内においてペットボトルの分別は当たり前になっており、「おおむね分けている」と答えた人が約9割、「キャップと分けて洗浄までしている」人が約6割もいたという。一方で、外ではペットボトルを破棄するリサイクルボックスに異物を混入したり飲み残したまま捨てたりと、分別への意識が低くなりがちな実態があるとのこと。飲料容器であるペットボトルに再生するためには、原料としての良質な使用済みペットボトルが必要で、上記のような粗雑な分別方法ではBtoBを拡大するに十分な原料の調達が困難だ。
先述の調査によると、「ペットボトルはリサイクルできる」という意識はほぼ浸透しているものの、技術革新が進んだことで何度もリサイクルできる資源になったことまでは十分に理解されていないことが分かった。
和田氏は、「水平リサイクルを推進することで将来的に新規化石由来原料の使用をゼロにできると言うと一様に驚かれる。BtoBがサステナブルな未来を実現するために重要であるということを伝えることで理解してもらえる」と説明。プロジェクトとしてしっかり「つたえる」ことが「あつめる」につながるという考えを示した。
同プロジェクトでは、水平リサイクルによって、何度も再生され、使われるペットボトルを「自分ごと」として受け止めてもらえるよう、サステナブル素材(リサイクル素材あるいは植物由来素材)を100%使用したペットボトルを「またあえるボトル」と命名。同社製品に順次導入する予定。
第1弾として、21年4月13日から「GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶」の650ミリリットル、600ミリリットルに全面導入する。「やさしさの循環」をコンセプトとした製品であるため、「スタートにふさわしいブランド」(和田氏)とした。これまでも各ブランドの一部製品ではサステナブル素材を100%使用したペットボトルを採用していたが、全面導入するブランドはこれが初めて。
製品をすべて「またあえるボトル」に切り替えることで、新規石油由来のプラスチック資源の削減量は年間で約4500トン、CO2削減量は同約6200トンとなる。
またあえるボトルの導入に合わせ、ブランドキャラクターの「ムギちゃん」と佐藤二朗が出演するスペシャルムービーも制作。BtoBによる水平リサイクルの仕組みやまたあえるボトルが繰り返し使えるサステナブルな素材であることを伝える。
国内飲料メーカーの取り組み
ペットボトルのリサイクルをめぐっては国内飲料メーカー各社も取り組みを加速している。
日本コカ・コーラとボトラー5社からなるコカ・コーラシステムは、25年までにリサイクルペット樹脂使用率50%、30年までには新たな石油由来原料の使用をゼロにする取り組みを推進している。20年はリサイクルペット樹脂使用率100%の「い・ろ・は・す 天然水 100%リサイクルペットボトル」(555ミリリットル)の全面導入や、ラベルレス製品「い・ろ・は・す 天然水 ラベルレス」へも100%リサイクルペットボトルを導入した。20年のBtoB比率は28%で、21年からはサプライチェーンでもBtoBを取り入れる。
キリンは19年から「キリン生茶デカフェ」に100%リサイクルペットボトルを採用し、自販機ではラベルの短尺化を図るなど、プラスチック使用量削減に積極的に取り組んできた。21年には100%リサイクルペットボトルの対象商品を「キリン生茶」「キリン生茶ほうじ煎茶」にも拡大し、ECではラベルレス製品も導入した。同社は27年までに日本国内におけるペット樹脂使用量の50%をリサイクル素材に、50年までに容器包装を100%リサイクル材やバイオマスなどを使用した持続可能な素材にすることを目標に掲げている。20年12月には、三菱ケミカルとの共同プロジェクトもスタートした。このプロジェクトでは、ボトルtoボトルにとどまらず、ペット製品toペット製品のリサイクルを実現する技術の検討と事業化を目指す。
アサヒ飲料は、30年までにプラスチック製容器包装の全重量の60%にリサイクルPETや植物由来の環境配慮素材を使用することを目指す。18年には「十六茶」「アサヒ おいしい水」などでラベルレスを導入。ラベルに使用される樹脂量の約90%を削減した。他にも既存商品の容器包装の軽量化を進めるとともに、炭酸飲料のペットボトルには、国内最軽量(同社調べ)となるキャップをすべての自社工場で採用し、使用拡大に取り組む。BtoBは19年から、「カルピスウォーター」などの乳性飲料で導入を開始し、その後「三ツ矢」ブランドなど炭酸飲料の一部商品にも展開している。
(写真提供/サントリー)