テックベンチャーのTHECOO(ザクー、東京・渋谷)が、大型LEDパネルなどを常設するネット配信スタジオを本格始動した。同社が運営するコミュニティー型のファンクラブ「Fanicon(ファニコン)」の利用拡大のために数億円を投資してオープンした。2021年4月10日、いきものがかかりのアルバム購入者向けに開催した同スタジオの配信プラットフォームを使った初のリアルタイム配信ライブ。ファンも驚いたすごい演出とは?
「あとちょっとすると、とんでもないことになりますから」――いきものがかりメンバーの水野良樹さんの演奏前のMC。ライブ配信がスタートすると、メンバーやバンドのサポートメンバーがCGの上に浮いているように見える。目まぐるしく変わる画面の演出効果に「これすごーい!」「演出やば」といったコメントがファンから次々と投げ込まれた。
「きれいでしょ? このスタジオ、実は全面LEDなんです!」。いきものがかりがアルバム購入者向けに開催した配信ライブは、THECOOが開設した配信専用スタジオ「BLACKBOX3(ブラックボックス、3の正式表記は3乗)」からライブ配信された。スタジオの床や側面が大型のLEDで覆われており、映像などを投映しながらライブ配信ができるのが特徴。大型4面LEDパネルとステージデザインや3Dで映像・照明が演出できるメディアサーバー「disguise」の技術を使い、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)などのXR(Extended Reality)映像を配信できる。THECOOによれば、この2点を常設しているスタジオはBLACKBOX3だけ。いきものがかりのライブでも3Dで背景が動く空間の中で、メンバー3人がライブパフォーマンスした。「9枚目の9曲入りの究極のアルバムができましたー!」(吉岡聖恵さん)。MCでは、演奏中の映像演出が切れたときのスタジオ内の雰囲気とのギャップを「LEDが消えたときの、私って誰だっけ感がすごい」(吉岡さん)と最新技術を使った演出を楽しんでいるように見えた。
「2021年3月31日に発売されたアルバム『WHO?』の特典として、メンバーから配信ライブの提案があった」と話すのはソニー・ミュージックレーベルズ 第3レーベルグループ EPICレコードジャパン 第三制作部の梶望部長。適切な会場を探していたところ、アルバムのローンチと重なるタイミングでグランドオープンすることを知り、BLACKBOX3で配信することにした。いきものがかりにとっては、20年のBSフジとの「いきものがかりFES」、21年3月に横浜アリーナからの無観客ライブを配信したのに続いて3度目の配信ライブ。「従来との差別化を図るため、スマートフォンの画面で楽しめるライブエンタメを目指した」(梶氏)と言う。演出もアルバムのデザインを担当した会社であるコエ(東京・世田谷)に依頼。梶氏は「BLACKBOX3の新技術を活用することで、まるでアルバムクリエイティブの世界観の中で楽しめるような新しいライブ体験の創出に成功した」と言う。
ネットならでのライブを模索
ファニコンは、音楽アーティストやアイドルグループ、俳優、ユーチューバーなどがファンクラブなどのコミュニティーを運営できる。現在2100組以上が利用しており、100~3000人規模のコミュニティーがある。代表取締役CEO(最高経営責任者)の平良真人氏によれば「前年比2倍のペースで利用者が増えている」と言う。
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