1950年の開園から70周年を迎えるも、直近の約30年で年間来園者数が約5分の1まで激減していた「西武園ゆうえんち」。かつてのにぎわいを復活させるために西武グループが命運を託したのは、USJ再生の仕掛け人として知られる森岡毅氏率いるマーケティング集団「刀」。そのリニューアルの全貌が発表会見で明らかになった。

人と触れ合えるエンタテインメントが求められている

 発表会見で最初に登壇した西武園ゆうえんちの藤井拓巳社長は「過去最大の投資を行い、西武園ゆうえんちを生まれ変わらせた。今なお続くコロナ禍で、体験を共有したい気持ちはいっそう高まり、人と触れ合えるエンタテインメントが求められている」と語り、グランドオープンが2021年5月19日であることを明らかにした。

「エモーショナルに心をゆすぶられ、新しい興奮が感じられる場所になることを願っている」と抱負を語る、西武園ゆうえんちの藤井拓巳社長
「エモーショナルに心をゆすぶられ、新しい興奮が感じられる場所になることを願っている」と抱負を語る、西武園ゆうえんちの藤井拓巳社長

 今回のリニューアルを手掛けたマーケティング集団「刀」の近藤正之エグゼクティブ・ディレクターは、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンで「フライング・ダイナソー」のプロジェクトリーダーなどを歴任してきた人物。過去の西武園ゆうえんちを振り返り、「まだ遊園地が珍しかった時代にスタートしたがゆえに、端的に言うと『古い』というイメージがあった」と指摘する。そこでそのイメージを逆手に取り、「『古いとはいいこと』という文脈をつくり出せないか、西武園ゆうえんちが持っている資産を生かし、人々の認識を変える方法を模索した」と語る。

 消費者インタビューを通して「昭和時代の人とのつながりに飢えているのでは」という仮説を立て、そこから「心あたたまる幸福感」というコンセプトを作った。この世界観は、昭和時代に懐かしさを感じる世代だけでなく、10代、20代にも受けるはずと断言。「若い世代にとって昭和時代は非日常であり、新しく感じられる、ひと言で言うと、強烈にエモい世界観となるはず」(近藤氏)。

「懐かしさだけではなく、強烈に心をゆすぶられる『ニューノスタルジー』を体験してほしい」と語る、マーケティング集団「刀」の近藤正之エグゼクティブ・ディレクター
「懐かしさだけではなく、強烈に心をゆすぶられる『ニューノスタルジー』を体験してほしい」と語る、マーケティング集団「刀」の近藤正之エグゼクティブ・ディレクター

“商店街で巻き起こるエンターテインメントショー”とは?

 具体的にはどんな施設になり、どのようなアトラクションが展開されるのか。今回のリニューアルに関わるマーケティング部門の責任者である西武園ゆうえんちの高橋亜利マーケティング課長が解説した。

新・西武園ゆうえんちのテーマは、1960年代をイメージした“あの頃の日本”
新・西武園ゆうえんちのテーマは、1960年代をイメージした“あの頃の日本”

 新・西武園ゆうえんちのテーマは、1960年代をイメージした“あの頃の日本”。当時の商店街をリアルに再現しているが、単なる空間デザインではなく、常にライブパフォーマンスが繰り広げられるエンターテインメントスペースだという。交番のお巡りさんや八百屋の店主など、商店街に生きる人々が予想もつかないハイクオリティーなライブパフォーマンスを繰り広げる。

「泥棒」と「駐在」が巻き起こすコミカルなチェイス、八百屋のたたき売りなど、商店街の住人に扮したスタッフによるライブパフォーマンスも注目ポイント
「泥棒」と「駐在」が巻き起こすコミカルなチェイス、八百屋のたたき売りなど、商店街の住人に扮したスタッフによるライブパフォーマンスも注目ポイント

 さらに熱々のナポリタンに、風情たっぷりのクロケットなど、下町グルメやショッピングも、アトラクションの1つ。そんな商店街を抜けた先には、大観覧車やメリーゴーラウンド、回転空中ブランコ、オクトパスなどこの世界観にぴったりの遊園地らしいアトラクションが次々に広がる。

「30の店舗は質感や色合いも重視して、ずっとそこにあったような体温まで感じられる雰囲気を目指した」と語る西武園ゆうえんちの高橋亜利マーケティング課長
「30の店舗は質感や色合いも重視して、ずっとそこにあったような体温まで感じられる雰囲気を目指した」と語る西武園ゆうえんちの高橋亜利マーケティング課長

注目の大型ライドアトラクションは「ゴジラ・ザ・ライド」

 今回のリニューアルの目玉となるのはなんといっても、VFX(視覚効果)の第一人者で日本を代表する映画監督である山崎貴氏と刀のクリエイティブチームが手掛ける大型ライドアトラクションだ。

 山崎貴氏といえば、『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005年)『永遠の0』(2013年)、『STAND BY ME ドラえもん』(14年)などCGによる高度なビジュアルを駆使した映像表現の第一人者であり、数多くの受賞歴を持つ日本を代表する映画監督。従来の遊園地の常識を大きく超えるスケールとクオリティーの大型ライドアトラクションが実現したという。それが、大怪獣「ゴジラ」をテーマにした「ゴジラ・ザ・ライド 大怪獣頂上決戦」だ。

目玉は大怪獣「ゴジラ」をテーマにした大型ライドアトラクション「ゴジラ・ザ・ライド 大怪獣頂上決戦」TM&©TOHO CO.,LTD.
目玉は大怪獣「ゴジラ」をテーマにした大型ライドアトラクション「ゴジラ・ザ・ライド 大怪獣頂上決戦」TM&©TOHO CO.,LTD.

 場所は商店街の住人にとっても憩いの場所である映画館(夕陽館)で、映画を観に来た住人(ゲスト)が、ゴジラとキングギドラの戦いに巻き込まれてしまうという設定だ。ゲストは突如として襲われるスリルの連続に、息つく暇もない超絶大興奮な体験を楽しめる。高橋課長自身も先日体験し、「ものすごい、とんでもない新しいものができたと実感した」という。ゴジラの造形もオリジナルで、昭和のゴジラのどっしり感も備えつつ、今見てもかっこいいと思える造形になっているとのこと。

手塚治虫ワールドを体験できる「レッツゴー!レオランド」も

 会見では、新たなファミリーエリアとして「レッツゴー!レオランド」も発表された。日本を代表する漫画家・手塚治虫氏の人気作品「鉄腕アトム」と「ジャングル大帝」のキャラクターが登場し、大人も子供も楽しめるアトラクションを提供するという。

新たなファミリーエリアとして手塚治虫氏の人気作品「鉄腕アトム」と「ジャングル大帝」のキャラクターが登場する「レッツゴー!レオランド」も発表
新たなファミリーエリアとして手塚治虫氏の人気作品「鉄腕アトム」と「ジャングル大帝」のキャラクターが登場する「レッツゴー!レオランド」も発表

 「レッツゴー!レオランド」では、さっそうと走り抜けるジェットコースター「アトムの月面旅行」や、回転型ライドアトラクション「飛べ!ジャングルの勇者レオ」など4つのライドアトラクションを含む、6つの体験が楽しめる。また、アトムやレオをはじめとした手塚治虫氏の人気キャラクターたちをデザインした西武園ゆうえんち限定のグッズを販売するショップ「レッツゴー!バザール」も併設される。

リニューアル後の園内マップ。TM&©TOHO CO.,LTD. ©TEZUKA PRODUCTIONS
リニューアル後の園内マップ。TM&©TOHO CO.,LTD. ©TEZUKA PRODUCTIONS

入場者を即座に制限する予定はない

 発表会見の質疑応答では新型コロナウイルス感染症対策に対する質問が相次いだ。「来場者の人数制限はあるのか」という質問に対し、藤井社長は「入場者を即座に制限する予定はないが、状況を鑑みながら検討していきたい。業界のガイドラインにのっとって、感染対策をしっかりやっていく」と答えるにとどまった。高橋氏は「園内は広大な土地があるので、(密にならないように)集客のコントロールを行っていきたい」と回答。アトラクションが魅力的であればあるほど密のコントロールは難しくなるわけで、その対策も成功の分岐点になりそうだ。