コロナ禍で20年は売り上げが50%まで落ち込んだプロントが新たな戦略で再起を図る。プロントコーポレーション(東京・港)は、2021年5月から同社の飲食チェーン「プロント」を昼は働く20~30代のミレニアル世代に向けたカフェ、夜はすべてのビジネスパーソンをターゲットとした新業態の「キッサカバ」(喫茶+酒場)と区別し、二面性を打ち出したリブランディングを行う。
午後5時半で二分する世界観
リブランディング1号店として2021年4月10日にリニューアルオープンした「PRONTO 銀座コリドー店」は、平日の午前7時から午後5時半まではカフェ、午後5時半~11時までは「キッサカバ」(喫茶と酒場を組み合わせた造語)として営業する(土曜は午後10時まで、日祝は午前10~午後6時まででカフェ営業のみ)※。これまでのカフェ&バーではなく、昼と夜とで店の世界観をガラリと変える二面性が特徴だ。
新型コロナウイルス感染予防対策により、記事執筆時点の営業時間は以下の通り。
平日:カフェ午前7時~午後5時半、バー午後5時半~同8時/土曜:カフェ 午前10時~午後5時半、バー午後5時半~同8時/日曜・祝日:カフェ午前10時~午後5時半、バー午後5時半~同6時)
カフェは、仕事前や休憩時間に立ち寄り、人々が集うコミュニティー空間となることを目指す。ドリンクはコーヒーや紅茶など定番のカフェドリンクに加えて、季節の果物を使った限定ドリンクや生はちみつのバナナミルクといった個性のあるメニューを打ち出す。また、ミルクをソイミルクやオーツミルクに変更できたりするなど健康志向の高まりにも対応する。スイーツは、米サンフランシスコで行列ができる人気のカフェ「STONEMILL MATCHA」の抹茶バスクチーズケーキや生チョコオレンジモンブランなど、カフェ好きの好奇心を刺激するような商品をそろえた。
一方、今回のリブランディングの目玉ともいえる夜の新業態キッサカバは、仕事終わりに仲間と気軽に集えるような空間にするべく、酒場に昭和の喫茶店のような懐かしさやおしゃれさをプラスした「ネオ大衆酒場」を目指した。午後5時半になると外観・内観とともにBGM、メニューも様変わりする。店外にはのれんを掛け、昭和らしさを演出するピンクのネオンサインをともす。
おしゃれなカフェメニューから一転、キッサカバではいわゆる居酒屋メニューに喫茶店要素をプラスし、趣向を凝らした品をそろえた。3種のレモンサワーや6種のハイボールなどと共に並ぶのは、クリームソーダサワーやノンアルコールのクリームソーダ。“キッサカバ名物”の「クリア珈琲」は、ウオッカにコーヒーで香り付けしたサワーで、ジョッキにはコーヒー豆を浮かべる。同じサントリーグループのサントリースピリッツが販売し、ヒットしている国産ジン「翠(SUI)」を使った「翠ジントニック」や、同商品のCMフレーズをメニュー名にした「まだ、流行っていない翠ジンソーダ」もメニューに取り入れた(関連記事「サントリー国産ジンが好調 32億の設備投資で生産能力2倍以上に」「桜井ユキの目力が強烈すぎる ジンの世界変えるサントリー『翠』」。
フードも枝豆や炙り〆鯖といった居酒屋定番メニューと、「塩キャラメルみたいな北欧チーズ」、モッツァレラチーズのカプレーゼ、ナポリタンなどの喫茶メニューが混在している。
オフィス街やその周辺の駅近くに多く出店するプロントは、コロナ禍による外出自粛やリモートワークの広がりのあおりを受け、20年の売り上げは前年比約50%まで落ち込んだ。今回のリブランディングでは、ロゴや制服も一新。従来の緑地に黄色から白・黒・黄色のはっきりとした色彩で昼と夜での二面性と気軽さや活気をアピールし、新生プロントの個性を明確に打ち出している。
青山店や品川店など一部店舗では先行して新業態での営業を実施し、好評だという。5月からは他店舗でも新業態での営業に順次切り替えていく。
(写真提供/プロントコーポレーション)