コロナ禍により、多くのイベントが急きょオンラインに切り替わった2020年。「東京ガールズコレクション」もいち早く無観客ライブ配信に対応したイベントの1つだ。21年2月にはコロナ禍“2年目”のイベントを開催。前年の教訓を糧に、オンラインならではの要素を強化し、視聴者数のべ約210万人を達成した。
2021年2月28日に開催された「第32回 マイナビ 東京ガールズコレクション 2021 SPRING/SUMMER」は、国立代々木競技場第一体育館を会場とし、そこでのショーの様子を「LINE LIVE」でライブ配信するというオンラインイベントだった。約7時間にわたる配信をのべ約210万人が視聴。企画・制作を手掛けるW TOKYO(東京・渋谷)によると、パブリシティー効果はおよそ40億円にも達するという。
例年、6000円超のチケットが完売する巨大フェス
10~20代の女性たちに絶大な人気を誇る「東京ガールズコレクション」(以下、TGC)は、ガールズマーケットに特化した国内最大規模のファッションフェスだ。05年のスタート以来、春夏と秋冬の年2回開催。3億円にもなる制作費をかけ、毎回、総勢約100人以上の人気モデルや旬のタレントが出演する。憧れの人を生で見ようと会場に訪れるファンは多く、6000円以上するチケットは完売。ファッションショーだけでなく、音楽ライブやゲストを招いたスペシャルステージ、フォトスポットやメイク用品のタッチアップ(美容部員が実際にメイクを施す)ブースなど、若い女性向けの多彩なコンテンツを展開している。
そんな“リアル”の熱量に注力してきたTGCが、オンラインへ舵(かじ)を切ったのは20年2月のこと。準備していた2020年の春夏コレクション(「第30回 マイナビ TGC 2020 SPRING/SUMMER」)を無観客のオンラインイベントに変更すると発表したのは、開催3日前のことだった。リアルイベントとして組み立ててきたものを突貫でオンラインに切り替えたこともあり、このときはステージの模様をほぼそのまま配信する、いわば「中継」で精いっぱいだったという。
それでもこの経験はTGCに新たな道を開く。W TOKYOによると、TGCの様子を配信することはこれまでもあったが、メインはあくまでも会場でのリアルな体験。オンラインは二次的なコンテンツと捉えていた。それが「コロナ禍を経て、同じレベルで見るようになった」と、同社の村上範義社長は話す。
コロナ禍も2年目、オンライン開催は3回目となった第32回 マイナビ TGC 2021 SPRING/SUMMERには、その変化が顕著に表れている。そもそも企画段階からオンライン、ひいてはスマートフォンでの視聴を前提にしている点が昨年とは違う。「コロナ禍でスマホの可処分時間が増えている。一方で外出自粛などで行動は制限された。情報は足りているが、『体験』が圧倒的に不足している状態。だからこそ、オンラインでのTGCはスマホでの視聴を前提に、その中で視聴者がより質の高い体験を得られることに焦点を当てている」と村上氏は言う。
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