コロナ禍下の2021年2月、ギフト市場をにぎわすニュースが駆け巡った。eギフトプラットフォーム事業を展開するギフティが、体験ギフトに強みを持つソウ・エクスペリエンス(東京・渋谷)を完全子会社化すると発表したのだ。正式統合直後の3月15日、両社首脳が音声SNS「Clubhouse」に集結し、これからのギフト市場について激論を交わした。そこから見えてきたギフト市場の3つのトレンドとは。

ギフティがソウ・エクスペリエンスを3月12日付で完全子会社化。写真左端がギフティ代表の太田睦氏、右端は同じくギフティ代表の鈴木達哉氏、中央はソウ・エクスペリエンス社長の西村琢氏
ギフティがソウ・エクスペリエンスを3月12日付で完全子会社化。写真左端がギフティ代表の太田睦氏、右端は同じくギフティ代表の鈴木達哉氏、中央はソウ・エクスペリエンス社長の西村琢氏

 ギフト市場は現在、中元・歳暮需要の縮小が続いている半面、日常的なカジュアルギフトやSNSなどを通じて贈るソーシャルギフトが伸長しており、市場規模は底堅く推移している。矢野経済研究所の調べによれば、2020年こそコロナ禍の影響もあり前年比92.4%(見込み)と落ち込んだが、21年は20年比で105.8%とコロナ禍以前の水準まで戻る予測だ。

 そんな中、カジュアルなギフトサービス「giftee」を展開しているeギフトの先駆者ギフティが、体験型カタログギフトの草分け的存在のソウ・エクスペリエンスを完全子会社化。共同でサービスやコンテンツの開発を進め、市場活性化を狙うという。eギフトというデジタル領域と体験ギフトというアナログ領域をどちらもカバーするグループができたことで、より多様なギフト需要の取り込みが可能になるはずだ。中元・歳暮ではなく、日常的に贈り物をするトレンドが強まる中、商品やサービスを開発する企業にとっても、このギフト需要を取り込めるかはヒットにつながる大きなカギになる。

 そこで今回は、両社の統合が実際に行われた21年3月12日の直後、3月15日に音声SNS「Clubhouse」上で両社首脳が一堂に会する座談会を実施。ギフティ代表の太田睦氏・鈴木達哉氏、ソウ・エクスペリエンス社長の西村琢氏に加えて、M&Aに詳しい財務戦略アドバイザーの田中慎一氏が集結し、統合の経緯やギフト市場の今後を語った。この座談会はClubhouse上で公開座談会として実施。スピーカー全員の許諾を得ており、また「記事化予定」と明記して行った。

 この座談会の中からは、ギフト市場で起きている3つのトレンドが見えてきた。1つ目が、近年では日常的に気軽な贈り物をすることでギフトがコミュニケーションの手段となりつつあること。2つ目が、クーポンやチケットを電子化するギフトDXが加速していることだ。そして3つ目が、「直接渡せない」という物理的制約が生まれたことで、体験型ギフト、カスタムギフトなどギフトの多様化が進んでいるということ。従来はギフト需要が存在していなかった業種や領域の企業にも、この新たなeギフト消費を取り込むチャンスが生まれている。

「贈り物・贈り方の多様化」への対応急ぐ

田中慎一氏(以下、田中氏) 先月(21年2月)に発表されたギフティとソウ・エクスペリエンス統合のニュースには驚くと同時に、期待が膨らみました。現状でのそれぞれのビジネスモデルは。

ギフティ 太田睦氏(以下、太田氏) ギフティは、「電子チケット」として利用できるeギフトの生成・流通・販売を一貫して提供するプラットフォーム事業を展開しています。例えば、スターバックスコーヒーで利用できるドリンクチケットのURLを発行し、贈りたい相手にメールやSNSで送れる仕組みなどです。

 10年に創業しましたが、そのきっかけになったのは、実はソウ・エクスペリエンスの西村さんとの出会いだったんです。09年に自由大学(ものづくりや起業をテーマにした社会人向け講座)で西村さんの講義を聴いて刺激を受け、ギフティの原型となる事業企画書を書いたのが出発点。現在は社員数150人ほどになり、19年に東証マザーズに上場(20年12月には東証1部に市場変更)しました。

ギフティは2人代表制(左が鈴木氏、右が太田氏)
ギフティは2人代表制(左が鈴木氏、右が太田氏)

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