巣ごもり需要で家庭料理用の調味料が売り上げを伸ばす中、安定しつつも横ばい状態が続くソース市場。停滞した状況を打破すべく、ブルドックソースが2021年2月5日に新商品「Jソース」を発売。「“ソースの常識”を捨てたからつくれた」という新ソースは「ソース嫌い」層も狙う。
「ソース嫌いを、好きにさせます!」
「ブルドックソースのグループの総力を挙げまして、ソースの嫌いなあなたをソース好きにさせます」
2021年3月18日に東京フォーラムで行われた「ブルドックソース新商品『Jソース』発表会」冒頭で、ブルドックソースの石垣幸俊社長は開口一番、そう宣言した。「そのために、私どもが持っていたソースの常識を捨てました」(石垣社長)。Jソースを開発したマーケティング部の佐伯舞部長(4月からは執行役員)がその言葉の真意を解説した。
「改めてお客様の声をお伺いしましたところ、私たちがソースの常識だと思っていた濃くて甘い味を不満に思っている方が非常に多いということが分かりました。こういったソース嫌いな方も食べたくなるような、濃くて甘いという常識を打ち破るソースをつくろうということで、開発に着手しました」(佐伯部長)。
「すっきり旨い」ソースが求められる
追求したのは「これまでのソースが苦手な人もかけたくなるソース」であり、「どんなものにかけてもおいしいソース」。それはどういうものかと模索し続けた結果、「すっきり旨(うま)い」ソースであるという結論にたどり着いた。
商品を実現できたポイントは3つ。
1つは、新たに加えたジュニパーベリー(杜松[ねず]の実。セイヨウネズという木の果実を乾燥させたスパイス)。ジンの香り付けとして使われているといえば、風味が想像できる人もいるだろう。「これまで(同社のソースには)使われておらず、今回初めて加える香辛料です。肉にも野菜にも非常に相性がよく、さらに消化吸収を助ける働きもありますので、ジュニパーベリーを入れることにより、最後までおいしく食べられる味わいになっています。2つ目はなじみのあるカツオや昆布のうまみ、3つ目は爽やかな酸味、この3つを組み合わせて、これまでにない『すっきり旨い』味わいを表現しています」(佐伯部長)。
お好み焼きと同じくらい、ウニに合う
新しい味わいなので、これまで「ソースには合わない」と思われていた食材とも相性がいいのではないかと考え、味覚分析の専門家に依頼し、味覚センサーでJソースとさまざまな料理の相性のよさを数値化してもらった。
定番の粉もの、揚げ物の相性のよさはもちろんだが、お好み焼きは相性度98.2%で、従来のソースよりもさらに相性がよく、特にマヨネーズがかかっていると相性度が高まる。脂の多い肉料理とも相性がよく、ステーキとの相性度は95.4%、豚しゃぶは97.5%。さらに開発スタッフも驚いたのは、ウニとの相性のよさ。なんと「メンチカツ」(98.8%)、「お好み焼き×マヨネーズ」(98.2%)に次ぐ第3位で、98.1%だった(※味博士率いる、AISSY[東京・港]調べ)。
「発見が多く、マンネリ化しがちな食卓に驚きと楽しさを出せる、新しい定番の調味料が出来上がったと考えております」と佐伯部長は自信を見せる。
同社ではJソースの魅力をソース嫌いの層にも伝えるため、Twitterで1年分プレゼントキャンペーンなどのウェブプロモーションを積極的に展開していく他、20万食のサンプル配布を行う予定だ。
本当に相性がいいのか、実食
発表会の後、料理との相性を実食で検証。用意されたのは「トンカツ」「お好み焼き」「ステーキ」「じゃがバター」「ギョーザ」の5種類だった。
間違いのないと思われるトンカツから食べてみたが、ひと口目で驚いたのが、ソースの味なのにソースとは思えない軽さ。甘さが少ないのでスパイスやうまみなど、複雑な味わいが際立ち非常に洗練された味に感じられる。ほどよい酸味が、さらに軽さの印象を際立たせている。お好み焼きは、具の風味が引き立ちいわゆる“オシャレな味”になるし、肉にかければステーキソースそのもの。じゃがバターにかければ、ほどよい酸味でバターのミルキー感がより増す。ちなみに、同じメニューで試食した発表会ゲストの高橋真麻さんと、お笑い芸人・霜降り明星の反応が一番大きかったのは、じゃがバターだった。
ソースらしい味は感じるが圧倒的に甘みが少なくさらっとしているので、素材本来の繊細な味がよく分かるし、酸味とうまみで食が進む。ちょうどソースとポン酢の中間のような味わいなので、ギョーザにも豚しゃぶにも合うのだろう。
ウニでも試してみたが、確かに生臭さが消えて、ウニ特有のクリーミーな甘さが際立つ。酸味とうまみの効果だろうか、個人的には確かにしょうゆよりも断然おいしく感じられた。
新規ユーザーの掘り起こしが狙い
Jソースが一般的なソースよりもはるかに汎用性が高いのは間違いないだろう。
だが同社は9年前にも、汎用性の高さを売りにした「うまソース」を発売している。当時は健康志向の高まりで揚げ物を控える家庭が増え、ソースの売り上げが減少していた。そこで使用シーンを増やすために「調理でも使える万能調味料」と打ち出したのが、うまソースだった。しかし、現状ではめんつゆや白だしのような調味料としては定着していない。
だからこそ、「ソース好きに使用シーンを増やしてもらう」のではなく、「ソースを敬遠している層に買ってもらい、顧客層を拡大する」新たな作戦を打ち出したのだろう。
ちなみにJソースのJは、「日本の新定番」を表すJの他に、「joint(ジョイント)」「joyful(楽しい)」「ジュニパーベリー(juniper berry)」の意味も含んでいるとのこと。
(写真/桑原恵美子)