クラフトビールやスキンケア商品などを手掛けるMOON-X(東京・目黒)が、期間限定の新商品「日向夏IPL」を2021年3月15日に発売した。宮崎の地ビールメーカーなどとの協業によるもので、従来製品に寄せられたフィードバックを生かして開発した。競争が激化するクラフトビール市場で重視するのは、よりビールを楽しめる体験やストーリー、オンライン飲み会などのコミュニティーだという。

 MOON-Xが発売した「日向夏IPL」は、地ビールメーカーの宮崎ひでじビール(宮崎県延岡市)、みかんづくりを手掛ける緑の里りょうくん(宮崎県日南市)との協業によるもので、日向夏を使用したクラフトビールだ。開栓すると日向夏の香りが広がり、その風味や爽やかさ、ほどよい苦みが味わえる。価格は330ミリリットル瓶入りが5本で3960円、24本で1万5840円(いずれも税込み)。クラフトビールブランド「CRAFT X」のWebサイトなどで購入できる。

MOON-Xの期間限定クラフトビール「日向夏IPL」
MOON-Xの期間限定クラフトビール「日向夏IPL」
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 MOON-Xは、米フェイスブック日本法人の前代表、長谷川晋氏が2019年に創業したスタートアップだ。クラフトビールのブランド「CRAFT X」を立ち上げ、テスト販売を経て20年1月に木内酒造との協業による第1弾商品「クリスタルIPA」を発表。単品販売のほかサブスクリプションモデルでの販売で話題を呼んだ。ユーザーからのフィードバックをくみ取って製品をアップデートしていく「進化するビール」を掲げ、ラインアップを拡充しながら、21年1月末までの約1年半で累計販売本数5.6万本というクラフトビールとしては速いペースで出荷している(関連記事「クラフトビールも月額制&D2C 前フェイスブック日本代表が起業」)。

 好調の背景には、コロナ禍により自宅で過ごす時間が増えたことなどにより、様々なビールや飲料を試してみたい人が増えていることがある。そこにクラフトビールが当てはまった形だ。

 長谷川氏は「みんなで店に入って“とりあえずビール”という文化もいいが、オンライン飲み会などで、自宅で飲みたいものをそれぞれが選んで飲むようになってきた。その流れがクラフトビールにマッチしている」と語る。

クラフトビール戦国時代で選ばれるために

 MOON-XのCRAFT X Business Directorの松田周達氏は、クラフトビール=ニッチという既成概念が変容しつつあると語る。「ビールを注ぐ体験、泡の見え方などにも関心が高まり、リラックスタイムに楽しむ人が増えているのではないか」と言う。

 クラフトビールを扱う専門メディアなど情報源が増え、サブスクリプションモデルが増えるなどビジネスモデルも多様化している。

 「クラフトビールファンになりやすい環境、クラフトビールビジネスを始めやすい環境が整ってきており、今後ますます普遍的なカルチャーになっていく」(松田氏)と見ている。

ファンの増加、ビジネスモデルの多様化などにより、クラフトビールはニッチなものであるという既成概念が変わりつつある
ファンの増加、ビジネスモデルの多様化などにより、クラフトビールはニッチなものであるという既成概念が変わりつつある
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 競争が激化し、クラフトビール戦国時代ともいえる状況のなかで顧客に選び続けてもらうために重視するのは、ビールをより楽しめるストーリーや体験、ファンコミュニティーの形成とその声を製品体験に反映していくことだ。

 クリスタルIPA発売後は、簡単なものから細かなものまで様々な形式のアンケートをとり、ユーザーと個別の対話も行ってフィードバックを集め、製品をバージョンアップしてきた。贈り物に使えるギフトパッケージが欲しいなど、味以外についても様々なフィードバックがあり、MOON-Xの製品に広く生かしている。

 宮崎ひでじビールとは、20年6月に協業で「日向夏セゾン」を発売している。このときも、もっといろんな原材料を使ったビールが飲みたいというユーザーからのフィードバックが開発するきっかけのひとつになった。発売後、ユーザーからは爽やかさや香りが高く評価され販売は好調だったが、苦みや酸味が若干強いという意見もあった。そうしたフィードバックを日向夏IPLの開発に生かし、苦みや酸味をほどよい程度に抑えた。日向夏IPLの先行予約は非常に好調だという。

 「季節感や話題性のあるビールを楽しむことで、日々の生活が少しリッチになる。顧客にストーリーを伝え、それを楽しみながら味わってもらえるようにしていきたい」と、長谷川氏はCRAFT Xの方向性を語った。

日向夏と日向夏IPLを手にする、宮崎ひでじビール永野時彦社長(左上)、MOON-X CRAFT X Business Directorの松田周達氏(右上)、MOON-Xの長谷川晋代表(下)
日向夏と日向夏IPLを手にする、宮崎ひでじビール永野時彦社長(左上)、MOON-X CRAFT X Business Directorの松田周達氏(右上)、MOON-Xの長谷川晋代表(下)
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複数ブランドでユーザーとの接点を多重化する

 MOON-Xはクラフトビールのほかにスキンケア製品も手掛け、複数のブランドを展開している。これは、クラフトビールだけを手掛けるよりもジャンルの異なる複数のブランドを手掛けるほうが顧客との接点が増え、顧客との接し方、接するタイミング、くみ取れるニーズが広がり、学びが増えるという考えによるものだ。今後もブランドは増える見込みだという(関連記事「ビールの次は化粧品 元フェイスブック日本代表、新事業の狙い」)。

 今後は既存パートナーとの関係をさらに深めるとともに、異業種も含めて新規パートナーシップを広げていきたいという。顧客との関係も、ただの消費者ではなく、一緒に体験をつくり、情報発信をしてブランドの一部になってもらうような、一歩進んだ関係構築を進めていくつもりだ。長谷川氏は「日本の消費者は世界で最も厳しい目を持っている。日本の消費者に選んでもらい、フィードバックをもらい、製品やサービスを磨いて世界に発信していく」と意気込みを語った。

(写真提供/MOON-X)