キリンビールは2021年3月8日に会員制家庭用生ビールサーバー事業「ホームタップ」の事業方針説明会を実施した。供給体制が整ったことで事業を本格化するとし、21年の会員数を前年の約5倍となる10万人に到達させることを目標に、大々的な広告戦略やPR活動で認知を広げる。

キリンビールの会員制家庭用ビールサーバー「ホームタップ」
キリンビールの会員制家庭用ビールサーバー「ホームタップ」

家飲みの充実で市場活性化

 「ホームタップ」は工場から自宅に直接届いたビールを専用のビールサーバーで楽しめる会員制のサービス。月に2回、酸素透過を防止する独自のペットボトルに入ったビールが届き、これを保冷機能付き専用サーバーにセットすると、生ビールが味わえる。

 ビールの種類は選択可能。キリンの主力ブランド「一番搾り」のプレミアムライン「一番搾りプレミアム」のほか、同社が注力するクラフトビールを季節ごとにそろえ、毎月3~4種類を用意する。ホームタップで提供するクラフトビールのほとんどは缶製品として購入できないため、「ここでしか飲めないビール」というサービスの付加価値となる。

 コースは2つあり、月4リットルコースが月額8250円から(税込み、以下同)、月8リットルコースが同1万2430円から。この料金には、ビール料金(4リットルコースで5060円から、8リットルコースで9240円から)と、配送料や備品代を含む月額3190円の基本料金が含まれている。

 330ミリリットルのビアグラス1杯当たりの料金を計算すると、月4リットルコースで421円、8リットルコースで385円と、缶ビールに比べて割高だが、自宅で本格的な生ビールが飲めることやサーバーから注ぐ特別感、前述のように「ここでしか飲めないビール」という付加価値などを考えると、「サービスの質と料金のバランスとして受け入れてもらえる」とキリンビール執行役員事業創造部長の山形光晴氏は捉える。

定番ビールは「キリン一番搾り生ビール」最上位ブランドの「一番搾り プレミアム」。クラフトビールは「スプリングバレー」ブランドや「ブルックリンブルワリー」ブランド、「グランドキリン」などを扱う
定番ビールは「キリン一番搾り生ビール」最上位ブランドの「一番搾り プレミアム」。クラフトビールは「スプリングバレー」ブランドや「ブルックリンブルワリー」ブランド、「グランドキリン」などを扱う

 同社の家庭用サーバー事業は、首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)で100人程度を対象に2015年に開始した「ブルワリーオーナーズクラブ」からスタート。17年に「ホームタップ」を全国で展開し、20年末には会員数が約2万人になった。しかし、20年はサーバーの供給体制が整わず、プレ契約から本契約に至るまで最大8カ月待機してもらうケースもあったという。供給体制が整備されたことで、サービスの本格展開に移る。サーバーの準備ができ次第、プレ会員に対して本会員登録の案内をするとし、現時点でプレ会員登録をしている場合は5月のサービス開始までに本会員登録ができる見込みだという。

 1年で会員数を約5倍にするのはハードルが高いようにもみえるが、山形氏は「21年2月末時点で会員数は3万人。本契約を待つプレ会員も相当数いらっしゃる。CM放映前でそれだけのリアクションがあるということに手応えを感じている」とし、決して高い目標値ではないと語った。

 とはいえ会員数を急拡大させるためには広い認知が必要だ。そのため、21年2月22日から中井貴一と天海祐希を起用したテレビCMの放映を開始した。放映後のホームタップのサイトへの反応は約6倍に伸びたという。ほかにも新聞広告、折り込みチラシ、デジタル施策や体験会、インフルエンサーを用いたPR活動などマーケティング施策を大々的に実施する予定だ。

CMキャラクターに中井貴一と天海祐希を起用し認知拡大を図る
CMキャラクターに中井貴一と天海祐希を起用し認知拡大を図る

 既存会員においては、コロナ禍による家時間の増加で月4リットルコースから月8リットルコースへ変更するケースが多いとして、家飲み需要に引き続き期待を寄せた。同社の布施孝之社長は、「ホームタップでビールのおいしさを知ってもらい、ビールを好きになってもらうことで、ホームタップでは扱わないほかの量販製品にも還流してもらえる。ひいてはビール市場自体を活性化できる」と説明。ホームタップも、年初の目標として掲げた「ビールの魅力化、活性化」の一環であると訴えた(関連記事「キリン、第3の柱 缶のクラフトビールでビール市場再活性化狙う」)。

(写真提供/キリンビール)

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