最先端のデジタル技術を活用したスマートシティの議論が日本各地でも本格化している。先行する米国などで進むのが、「路肩」の柔軟運用による移動しやすい新しい都市の構築だ。新刊『MaaSが都市を変える~移動×都市DXの最前線』を上梓したモビリティデザイナーの牧村和彦氏が報告する。

ダイムラーが描く将来のモビリティ社会のイメージ。手前側には自動運転タクシーの待機場、中程には自動運転バスの停留所、左奥にもシェアカーの乗降場が描かれているなど、路肩活用のアイデアが豊富に盛り込まれている(画像/ダイムラー)
ダイムラーが描く将来のモビリティ社会のイメージ。手前側には自動運転タクシーの待機場、中程には自動運転バスの停留所、左奥にもシェアカーの乗降場が描かれているなど、路肩活用のアイデアが豊富に盛り込まれている(画像/ダイムラー)

 スマートシティ構築においては、バーチャル上で行う都市空間や都市設計と合わせて、フィジカルな都市空間の変容やデザインが一層重要になる。例えば、歩きやすさや、街路のデザイン、まちの風景、そこに行き交う人や人間臭さといった、そもそものまちの魅力が、スマートシティ時代であっても大切だと感じる人は多いはずだ。また、まちと人やモノをつなぐための移動サービスのアップデートは、一層必要とされる。

 そもそも、まちの骨格を形成する交通ネットワークや街区が都市の特徴を形成している。まちと移動をつなぐ重要要素の1つが、街区の一部を構成する路肩だ。路肩とは、車道と歩道の間の空間を指し、縁石とも呼ばれる。

本稿の詳細は、2021年3月6日に発売された新刊『MaaSが都市を変える~移動×都市DXの最前線』(学芸出版社刊)に詳しい
本稿の詳細は、2021年3月6日に発売された新刊『MaaSが都市を変える~移動×都市DXの最前線』(学芸出版社刊)に詳しい

 コロナ禍の以前から、実はこの路肩の争奪戦が欧米中心に激しさを増していた。ドアトゥドアの移動サービスが普及していく中では、顧客から呼ばれたら、できるだけ近くの場所で車両を待機させたいし、安全に待機できる場所が多ければ多いほど、サービスの質も高くなる。路肩をどう管理していくかが、自動運転タクシーなどの配車サービスが普及していく上で一層重要になることは自明だ。

 コロナ禍においては、自転車シェアリングや電動キックボードなどのマイクロモビリティーが急増し、これらの貸し出し拠点(デポ)として、また、急増する貨物車の荷捌きスペースとして、路肩が活用されてきた。さらに、自転車レーンやバス専用レーンなどの走行空間としても路肩の活用が急速に進んでいる。例えば、ロンドンではこの1年で100キロメートルほどの自転車レーンが新たに生まれたそうだ。路肩を制したものがモビリティ革命を制すると言っても過言ではないだろう。

新しいモビリティサービス課金が始まる米国

 すでに米国では、都市部などの限られた路肩空間を有効利用し、CO2排出などの環境問題への対応を進めていくため、新しいモビリティサービスに対する道路利用課金が始まっている。アマゾンやマイクロソフトの本社があるシアトルでの取り組みを紹介しよう。

 シアトルでは、新しいモビリティサービスをスタートするに当たって、サービス可能な場所が詳細かつ明確に指定されている。また、車両サイズや保険への加入など、参入条件なども詳細に規定されている。

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