サントリービールのプレミアムビール「ザ・プレミアム・モルツ」の顔が変わる。コロナ禍による生活様式の変化を踏まえ、これまでの非日常感から日常でのぜいたく感へとブランドメッセージを転換。2021年3月6日から放映を開始したテレビCMでは小栗旬と柴咲コウを新たなメッセンジャーとして起用する。「神泡サーバー」をECで販売するなど、家飲み需要の充足に注力した施策も仕掛ける。

新しいコミュニケーションメッセージは「ちょっと高級なビールにしようか」。CMキャラクターは05~20年まで務めた矢沢永吉から小栗旬と柴咲コウにバトンをつなぐ
新しいコミュニケーションメッセージは「ちょっと高級なビールにしようか」。CMキャラクターは05~20年まで務めた矢沢永吉から小栗旬と柴咲コウにバトンをつなぐ

「憧れ」から「共感」へシフト

 2021年3月4日に行われた「ザ・プレミアム・モルツ マーケティング方針説明会」に登壇したサントリービールの西田英一郎社長は、16年連続前年割れとなった20年のビール市場について「危機的と言っても過言ではない状況」と表現し、業務・家庭用を合わせたザ・プレミアム・モルツ(以下、プレモル)全体の売り上げも市場平均並みの前年比91%にとどまったことを説明した。

 一方で、家庭用の需要は前年比95%と全体の売り上げを若干上回った。20年10月の酒税改正以降21年2月までの販売実績は、同103%と好調だったことから、外食機会の減少による業務用への打撃がある一方、家庭用需要には勝機があると捉えた。

 とりわけ、これまでプレモルを飲んだことのなかった新規層が拡大。20~30代の若年層を含む50代までが2桁増と成長が顕著だった。特に、20年からプレモルツと並ぶ柱としてプロモーションしたフルーティーな味わいが特徴の「〈香る〉エール」への認知度がアップした。

 背景には、消費者の「メリハリ意識の顕在化」があると西田社長は分析する。自粛生活への我慢や不自由さの反動で、日々の時間を豊かにしたいというメリハリの“ハリ”を求める気持ちが表れているという。そのニーズにプレモルで応えようと、コミュニケーションの一新に至った。

 発売以来一貫して提案してきた「おいしいビールと過ごす豊かな時間」というブランドメッセージは維持しつつ、ハレの日に飲むプレミアムビールという非日常の「憧れ」から、ご褒美時間を自らつくり出すためのワンランク上のビールとして日常生活に取り込んでもらう「共感」へと商品の位置づけをシフトする。

 コミュニケーションテーマを「最高の時間」に設定し、「ちょっと高級なビールにしようか」と、自ら“ハリ”をつくり出すための切り替えのメッセージを伝える。

 家飲み需要をさらに喚起する具体的な施策も用意する。

 その1つが「神泡サーバー」の発売。21年2月に730人を対象に実施した独自のウェブ調査では、約9割が外出機会が減ったと回答し、約6割が家でも生ビールのようなクリーミーな泡のビールを求めていることが分かった。そこで、これまでは年数回のキャンペーンで賞品としてのみ提供していた「神泡サーバー」を、21年4月から専用ECサイトで販売することに。洗浄不要となった20年モデルに改良を加え、価格は980円(税込み)とする。「これまで約150万人に使ってもらってきた。これからは誰でもいつでも手に入る接点をつくる」と、マーケティング本部長の和田龍夫氏は述べた。

21年4月から「神泡サーバー」を980円(税込み)で販売
21年4月から「神泡サーバー」を980円(税込み)で販売

 “おつまみ”とのセット販売も計画中だ。ケータリングや企業内カフェ事業などを手掛けるノンピ(東京・港)とコラボし、20年12月に限定5000セットで発売したおつまみとプレモルのセットは即完売したといい、「フードデリバリーとの相性の良さが分かった」(和田氏)。そこで、4月からプレモルに一番合うおつまみと神泡サーバーのセット「おうちで達人セット(仮称)」を発売予定だという。

RPG型バーチャルでオンライン工場見学を楽しむ

 プロモーション施策は、テレビCMに加え、コロナ禍で消費者とスマホやPCといったデジタルツールとの接触時間がより長くなったことを受けてデジタル施策にも力を入れる。

 これまでは年数回の行事といったハレの日のタイミングでキャンペーンを実施してきたが、今後は年間を通じて購入機会をつくり生活に浸透させるため、毎週末、毎月末というハイペースで実施する。

 また、新たなデジタル施策として、21年3月4日に特別コンテンツ「冒険型ビール工場体験 BEER iLAND」の配信をスタートした。サントリー初のロールプレイング型バーチャル工場体験で、アバターを操作しながらプレモルの素材のこだわりや製造工程を、ゲームの登場人物との会話や動画を通じて知ることができる。20分~1時間程度のプレー時間を想定しており、エンディングムービーまで見終わると、製品とグラスや神泡サーバーがセットになった「BEER iLAND ザ・プレミアム・モルツ特別試飲キット」が毎月100人に当たる抽選に応募できる。

「冒険型ビール工場体験 BEER iLAND」は、アプリ不要でサイトから直接スマホやパソコンで体験できる
「冒険型ビール工場体験 BEER iLAND」は、アプリ不要でサイトから直接スマホやパソコンで体験できる

 3月29日には、「最高の時間」の普及と定着に向けて、異業種と連携する「最高の時間プロジェクト」についても発表する予定。大きく方針を転換する「ザ・プレミアム・モルツ」の今後の動向に注目だ。

(写真提供/サントリービール)