キリンホールディングスは、記憶力維持をサポートする乳由来の独自素材「βラクトリン」を用いた機能性表示食品シリーズを、グループ3社および雪印メグミルクから2021年4月以降に順次発売する。同社のヘルスサイエンス事業の重点領域である脳機能において、同素材を戦略素材に位置付け、成長分野である脳機能市場拡大に注力する。

(左から)サプリメントの「β ラクトリン」(30日分/税別5500円)、飲料の「キリン β ラクトリン」(100ミリリットル/同200円)、「小岩井 β ラクトリンミルク」(200ミリリットル/同170円)、ヨーグルトの「記憶ケアヨーグルト β ラクトリン」(90グラム/同120円)
(左から)サプリメントの「β ラクトリン」(30日分/税別5500円)、飲料の「キリン β ラクトリン」(100ミリリットル/同200円)、「小岩井 β ラクトリンミルク」(200ミリリットル/同170円)、ヨーグルトの「記憶ケアヨーグルト β ラクトリン」(90グラム/同120円)

潜在ニーズが大きい脳機能市場

 「βラクトリン」は、グループ傘下の協和キリンと小岩井乳業が連携して発見した乳由来の独自の機能性食品素材で、加齢で低下する記憶力の維持に役立つという。新たに発売するシリーズは、このβラクトリンを配合した商品をグループ3社および雪印メグミルクで開発、展開するもの。

 グループ3社のうち協和発酵バイオは、サプリメントの「β ラクトリン」を2021年4月20日に、キリンビバレッジは飲料の「キリン β ラクトリン」を5月11日に、小岩井乳業は乳飲料の「小岩井 β ラクトリンミルク」を関東、東北限定で5月18日に発売する。雪印メグミルクはヨーグルトの「記憶ケアヨーグルト β ラクトリン」を6月8日に発売する。

 キリングループの中核事業であるヘルスサイエンス領域において、重点分野の1つが脳機能だ(関連記事「キリングループが健康事業推進 乳酸菌分野の強化で女性を狙う」)。同社によると脳機能分野は近年、世界的に市場が拡大しており、グローバルでは20年に8740億円だった市場規模が27年には1.2兆円に、国内では530億円から580億円に成長する見込みだという。

 「世界一の超高齢社会である日本での潜在ニーズは大きい」と、キリンホールディングスヘルスサイエンス事業部主幹の高久直也氏。脳機能については消費者の年齢層によって期待する効果が異なるといい、今回発売するβラクトリンシリーズは50~60代以降のシニア層をターゲットに「しっかり思い出す力、衰えていきたくない」ニーズに応える。

 「日本ではまだ自分は脳機能が衰えていない、と症状を認めない人も多い。いかに自分事と捉えてもらうかが重要。一緒になることで認知の拡大を早く進めていけると考え、乳業業界2位の雪印メグミルクに協働を提案した」と高久氏。

 テレビCMは打たず、デジタル施策や新聞広告で訴求する。さらに、消費者自身の認知機能を“自覚”してもらう無料の脳トレアプリのQRコードを製品に付したり、売り場や通販でのPRを積極的に行ったりするという。

脳トレアプリのQRコードを製品に付けて、自分の認知機能を自覚してもらうことで“自分ごと化”を推進する
脳トレアプリのQRコードを製品に付けて、自分の認知機能を自覚してもらうことで“自分ごと化”を推進する

ドーパミンを増加させ認知機能に作用

 日本では4人に1人が高齢者といわれ、健康寿命の延伸が重要な社会課題になっている。特に脳の健康への注目度は高まっている。軽度認知障害(MCI)は25年までに584万人、認知症は730万人に増加し、65歳以上の5人に1人が認知症を発症すると推計されている(厚生労働科学研究費補助金 厚生労働科学特別研究事業「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」「平成26年度 総括・分担研究 報告書」)。

 βラクトリンを用いた臨床試験を行った慶応義塾大学文学部心理学研究室の梅田聡教授は、「現時点で治療薬の開発が困難な認知症は、いかに予防するかという早期対策に視点が移っている」と指摘した。

 脳の健康をケアするための研究は数多く実施されている。キリンは乳製品摂取により認知機能低下のリスクが低減するとの疫学調査を基に、東京大学や小岩井乳業と共同で発酵乳製品の中から有効成分を調査し、白カビで発酵させたカマンベールチーズに強い効果を見いだした。さらに、協和発酵バイオとの連携でβラクトリンを発見。脳に届いて直接神経細胞に働きかけることで、神経伝達物質の1つであるドーパミン量を増やすことが分かった。

βラクトリンがドーパミン量を増加させる
βラクトリンがドーパミン量を増加させる
前頭皮質や海馬のドーパミン量が増加することで認知機能の維持を助ける
前頭皮質や海馬のドーパミン量が増加することで認知機能の維持を助ける

 ドーパミンの働きは加齢に伴って低下し、認知機能も下がってしまうが、スプーン1杯程度のβラクトリンがドーパミン量を増やし、認知機能の維持をサポートするという。ここでいう認知機能と、梅田教授が実施した臨床試験は以下の通り。

 臨床試験は、45~65歳の健常な男女98人への試験、50~75歳の健常な男女107人への試験と2度実施し、それぞれ12週間βラクトリンを摂取してもらった。その結果、認知機能のうち記憶力では「手掛かりをもとに思い出す」、注意力では「ノイズ環境で本来の作業を継続する選択性」に機能改善が見られたという。

 キリンは科学的なエビデンスをさらに強固にするため、βラクトリンが作用する脳内メカニズムの解明やMCI患者を対象としたエビデンスの取得などにも今後取り組んでいくという。

 キリンによると、脳機能市場におけるサプリメントの市場規模は約100億円、飲料は約200億円という。βラクトリンシリーズは、キリングループ企業3商品だけで21年は4億円、3年後には15億円の販売目標を掲げる。

(写真提供/キリンホールディングス)