eスポーツの知見が他分野でも生きる

 今後の展望として両社が見つめるのが、アフターコロナ時代のeスポーツ市場だ。大勢の人が集まり、接触する状況を避けなければならないコロナ禍において、予定されていた大会やイベントは中止や延期に追い込まれた。その一方で、eスポーツならではの強みも浮き彫りになってきた。

 eスポーツ以外のライブエンターテインメントは、オンライン化するにしても、できるのは無観客試合、無観客公演まで。だが、eスポーツは、選手やMC、実況・解説もリモートで参加できるため、大会やイベント運営のほぼ全てをリモートからのオンラインに置き換えても、オフラインに近いことができる。

 加えて、コロナで新たに生まれたニーズもある。その一例が、凸版印刷が21年1月に行った社内運動会「TOPPAN eSPORTS FESTIVAL」だ。同社では10年からグループ企業の社員とその家族を対象とした社内イベント「TOPPAN SPORTS FESTIVAL」を開催している。だが、今年はコロナ禍で開催が困難に。そこで、同イベントを実施した。当日はトッパングループ全世界の従業員約5万人とその家族、21年卒の内定者有志を対象にチーム対抗のトーナメント戦やクイズ大会などが催された。この技術協力をしたのが合併前のウェルプレイドだ。

 社員の交流の場にeスポーツのノウハウを生かす、いわばeスポーツのツール化。コロナ禍も2年目となり、各種イベントのオンライン化を中心に、ニューノーマルへの対応が本格的に進むだろう。「21年こそオンライン化に予算を割く企業や自治体も増えるはず。eスポーツイベントの運営で培ってきたノウハウを、eスポーツはもちろん各種オンラインイベントでも商材として生かすチャンス」(古澤氏)と捉えている。

「TOPPAN eSPORTS FESTIVAL」の様子(写真/岡安学)
「TOPPAN eSPORTS FESTIVAL」の様子(写真/岡安学)

コロナ後のeスポーツはどうなる?

 コロナ禍による急速なオンライン化はウェルプレイド・ライゼストの追い風になった。その一方で、エンターテインメントビジネスとしてのeスポーツの発展はどうか。一部eスポーツイベントの入場料有料化などマネタイズが始まった段階でコロナ禍となり、有料化しにくいオンラインに移行したことはeスポーツのエコシステムを構築するうえでの新たな課題を生み出さないか。

 「eスポーツはコミュニティー発という側面があります。無料での視聴、参加の文化は残していきたい。ただ、遅かれ早かれ有料コンテンツも成立するようになると思います。例えば、音楽にはサブスク型のサービスがあるように、eスポーツでも基本は無料ながら、特別な試合などプレミアムなものは有料化していくのではないでしょうか」と古澤氏。スポンサービジネスについても「eスポーツへの投資を考えている企業に話を聞くと、単純に(企業や商品の)認知を高めるということではなく、もっと具体的な、解決すべき課題に直面していることが分かってきました。その課題を解決できる手段やマーケティングツールをイベントや大会の運営、配信で提供できれば、おのずと協賛企業は増える。協賛メニューの細分化などで対応できる」(古澤氏)と希望を語る。

ウェルプレイド・ライゼストの古澤明仁氏
ウェルプレイド・ライゼストの古澤明仁氏

 eスポーツが隆盛し、動画配信やリアルイベントが人気といっても、視聴者数の数字だけを追うと、テレビなどのマスメディアにはかなわない。また、動画配信はプラットフォーム数が増え、配信のハードルが下がってきたことで、誰でも参加できる半面、質の悪い動画も増えてきた。だが、玉石混交になったからこそ、クオリティーの高いコンテンツが視聴料を稼ぐ道も開けるだろう。さらにそうした動画の数が集まることで、“eスポーツ”としてのコンテンツの幅も広がる。取材では、eスポーツ関連動画のサブスクリプションサービスの可能性についても3人の口から飛び出した。

 eスポーツイベントは、感動のシーンを生み出す場として存在する。特定の場で特定の選手が神がかったプレーをしたとき、感動が生まれるからだ。そして、その感動体験こそがコンテンツの価値へとつながっていく。そうした場をつくることこそ、ウェルプレイド・ライゼストの役目だと言う。さらに、「eスポーツの価値が認識されていないところにも、その価値を伝えていきたいと考えています。それが我々の理念です。この理念を実現するため、我々は手を組んだわけですから」と高尾氏は締めくくった。

(写真/志田彩香)