黎明(れいめい)期からeスポーツをけん引してきた2社が2021年2月1日付で合併した。eスポーツイベント運営会社のウェルプレイド(東京・渋谷)とRIZeST(ライゼスト、東京・千代田)だ。新社名はウェルプレイド・ライゼスト。合併の狙いとeスポーツ業界の今、今後について、代表3人に聞いた。

新会社ウェルプレイド・ライゼストの代表3人。取材は和気あいあいとした空気になった
新会社ウェルプレイド・ライゼストの代表3人。取材は和気あいあいとした空気になった

 今回合併した2社の業務には、競合するものが多い。ウェルプレイドは「ゲームプレイに対する肯定を、ゲーム観戦に熱狂を、ゲームにもっと市民権を」を理念に、eスポーツイベントの企画・運営・配信を行う企業。eスポーツ選手のマネジメントなども手掛けている。2020年3月にはレッドホースコーポレーション(東京・江東)などとの協業で、大阪府吹田市に日本最大級のeスポーツ専用施設「REDEE(レディー)」をオープン。ゲームコミュニティーの発展にも寄与してきた(関連記事「日本最大級の“学び系”eスポーツ施設 憧れのゲーム実況体験も」)。

ウェルプレイドが運営を手掛け、2019年4月に開催された「クラロワリーグ」の様子(写真/岡安学)
ウェルプレイドが運営を手掛け、2019年4月に開催された「クラロワリーグ」の様子(写真/岡安学)

 かたやRIZeSTは「eスポーツを持続可能な、文化的・経済的・社会的なものとする」をミッションに掲げ、eスポーツ番組の制作、放送、大会・リーグ運営、プロモーションを手掛ける。11年には東京・秋葉原に日本初となるeスポーツ施設「e-sports SQUARE」をオープンし、年間180本を超えるイベントやコンテンツ運用を行っている。

RIZeSTは2020年10月に開催されたeスポーツ大会「EDION VALORANT CUP」の運営を担当(写真/岡安学)
RIZeSTは2020年10月に開催されたeスポーツ大会「EDION VALORANT CUP」の運営を担当(写真/岡安学)

 いずれも、ゲームやeスポーツに関わる人ならよく知る企業。その2社が1つになる。社名はそのまま2社を合体させてウェルプレイド・ライゼスト。ウェルプレイドの社長だった谷田優也氏と高尾恭平氏、RIZeSTの社長だった古澤明仁氏が3人で代表を務める。まさに対等な合併だ。

目的は加速のためのリソース確保

 合併の理由について、3人は「目的を達成するためには、それぞれでやるよりも一緒になったほうが手っ取り早い」と口をそろえた。近年、盛り上がりを見せるeスポーツ。ウェルプレイド、RIZeSTの業績も好調だが、市場自体はまだまだ拡大フェーズだ。このため、“競合”といえど、シェア争いをするライバルというよりは、市場の拡大、eスポーツの発展という命題に向けて心を同じくする“同志”に近い関係だったという。

 代表の1人、高尾氏はこう話す。「古澤さんとは数年前からフランクに話ができる関係性。2年ほど前に飲みに行ったとき、お互いが目指す先が同じだと感じ、それなら一緒に何かをやっていきたいと思っていました。個々では解決できない案件も、一緒にやることで達成できる可能性がある」。

ウェルプレイド・ライゼストの高尾恭平氏
ウェルプレイド・ライゼストの高尾恭平氏

 一方の古澤氏は、「18年が“eスポーツ元年”といわれ、今もeスポーツは伸び続けている。でも圧倒的に足りないのがリソースです。マンパワーも資本金もノウハウも足りない。次のステップに進むには、組んだほうがいいと判断しました」と説明する。

 個々の企業、さらには市場の規模を大きくするうえで足踏みとなりがちな、人材育成やノウハウの共有といった課題をクリアするために、育成された人材がそろっており、ノウハウもある競合他社と手を組んだというのが実情だ。「自分たちだけなら5年かかることを2社が組んで2年でやり遂げられるなら、それが最良の選択」ともう1人の代表である谷田氏も話す。

異なる得意分野で強みを発揮

 ただし、「単純に2社の規模を足し上げ、事業規模を拡大することだけが目的ではない」とも強調する。両社には共通する事業がある半面、互いに得意分野も異なっているからだ。

 「例えば、ウェルプレイドにあってRIZeSTにない事業領域の1つがeスポーツ選手のマネジメント。『クラッシュ・ロワイヤル』のけんつめし選手や『大乱闘スマッシュブラザーズSP』のすいのこ選手などを担当しています。RIZeSTとの合併でリソースを強化・整理することで、マネジメント事業にもより注力しやすくなると思います」(谷田氏)。

ウェルプレイド・ライゼストの谷田優也氏
ウェルプレイド・ライゼストの谷田優也氏

 両社およびそれぞれの代表の“カラー”の違いも大きい。もともと、格闘ゲーマーとして活動していた谷田氏と高尾氏が設立したウェルプレイドは、ゲームファンが集まるゲームコミュニティーとのつながりが強い。また、『クラッシュ・ロワイヤル』など、モバイルゲームのイベント運営や選手マネジメントにも強みを持つ。一方、PC周辺機器メーカーのマーケティングに携わった経験も持つ古澤氏のRIZeSTは、プロリーグの運営や自治体との共同事業などの実績を持つ。ゲームタイトルでは『リーグ・オブ・レジェンド』などPCゲームに強いのが特色だ。

 「漢字で表現するならウェルプレイドは“柔”、RIZeSTは“剛”。ウェルプレイドはファンやコミュニティーを巻き込むのが得意ですが、RIZeSTは質実剛健なイベントに精通している」と谷田氏。実際、筆者の目から見ても、ウェルプレイドはゲームを楽しみ、慈しみながら業務まで楽しんでいる印象なのに対し、RIZeSTはナショナルクライアントや自治体が共に仕事をするうえで安心感を得られる企業としての生真面目さが感じられる。

 それぞれの得意分野と代表3人の持ち味が組み合わさり、対応できる案件の幅も広がっているという。「ウェルプレイド時代も、高尾と私で得意分野や相性の良い取引相手などが違いました。そこに古澤さんという新しい“手札”が増え、取りこぼしが少なくなった。グーとパーしかなかったジャンケンにチョキが加わって、どんな相手や状況にも対応できるようになったという感じです」(谷田氏)。