世界的なジン市場拡大の波に乗り、サントリースピリッツの国産ジンが好調だ。2020年に発売した「翠(SUI)」の売り上げは当初の計画を3倍超も上回り、17年に発売したプレミアムラインの「ROKU」は世界のプレミアムジンのシェアで3位に。日本人好みの繊細な味わいが国内外で人気を集めている。21年秋には32億円の設備投資をし、生産能力を2倍以上増強する。

サントリースピリッツの国産ジン「翠(SUI)」(左)、「ROKU」
サントリースピリッツの国産ジン「翠(SUI)」(左)、「ROKU」

10年で140%伸長する世界のジン市場

 サントリースピリッツの推計によると、世界のジン市場は2009年から19年までの10年間で140%以上も拡大しているという。21年2月18日に開催された事業戦略発表会で、同社の神田秀樹社長は「リフレッシュメントや健康志向という消費者の嗜好の変化が背景にある」と説明した。

 国内でも同様に伸長しており、20年12月には国産ジンの売り上げが輸入品を上回り、ジン市場自体も直近10年間で過去最高を更新した(インテージ「SRI」ジン市場 18.11~20.11 3カ月移動平均、販売金額)。コロナ禍による家飲み時間の増加で、いつもより少しいいお酒で気分転換をしたい、自分なりの飲み方を楽しみたいといったニューノーマルでの新たな需要が生まれ、缶入りアルコールユーザーが初めて瓶に入ったジンを手に取る機会が増えたという。

 国内市場をけん引するのが、同社の国産ジン。ラインアップはスタンダードカテゴリーの「翠(SUI)」(700ミリリットル、希望小売価格1380円、税別)とプレミアムカテゴリーの「ROKU」(同4000円)で、翠はスタンダードカテゴリーでシェア71%、ROKUはプレミアムカテゴリーでシェア47%を占めている。

 同社では、17年に世界の“ジン景気”に乗ってROKUを発売。それに手応えを感じ、これまで日本人にはあまりなじみのなかったジンの裾野拡大を狙って、居酒屋料理にも合う食中酒として親しんでもらおうと、より手軽に楽しめる翠を開発した。翠は、ハイボール、レモンチューハイに次ぐ“第三のソーダ割り”としてジンソーダで飲むことをメインに提案。その新規性に居酒屋を中心とした飲食店が着目し、「お店で飲んでおいしかったので自分でも購入した」と家飲み需要も刺激した。

 結果、20年3月の発売時には3万ケースだった翠の販売目標を、夏には6万ケースに上方修正した。さらに、同年10月にCMでも「居酒屋メシ」と合う新しいジンであることをアピールしたところ、売り上げが急拡大し、20年末の販売実績は当初予定の3倍以上となる9.5万ケースに着地した。「洋酒のジンは日本人向けではないイメージだったが、“国産のジン”と聞いて興味を持ち、飲んでみると、口に合う味だった」という消費者も多く、国内のジン需要を喚起した(関連記事「桜井ユキの目力が強烈すぎる ジンの世界変えるサントリー『翠』」)。

 翠の飲食店での取り扱いは当初の5倍の2万4000店で、21年には3万5000店を目指す。小売店は20年の1万5000店から5000店増の2万店が目標。「まだまだポテンシャルがあるため、通常通りの営業活動で十分達成可能」と、サントリースピリッツ執行役員RTD・LS事業部長の鈴木あき子氏はみる。

 一方のROKUは「数より質」の戦略で、高級和食店などで取り扱う。桜や玉露、煎茶、サンショ、ゆずといった和素材を使った原料酒とジンのベースとなる原料酒を混ぜて作るプレミアム国産ジンは、「世界に類を見ない繊細な味と丁寧な製造過程が海外でも注目されている」(神田社長)と、発売から数年で世界のシェアトップ3に躍り出た要因を分析する。

20年には200ミリリットル瓶(写真左、希望小売価格 税別1200円)を発売し、購入層が広がった
20年には200ミリリットル瓶(写真左、希望小売価格 税別1200円)を発売し、購入層が広がった

 今後は翠の輸出も視野に、翠とROKUに32億円規模の設備投資を行う。大阪工場に瓶詰ラインを増設し、現在の2倍以上の生産能力にする見込み。21年秋に着工し22年初頭に稼働予定だという。サントリースピリッツは、翠とROKUでジン市場のさらなる拡大を狙う。「21年は2ブランドで30億円、5年で100億円を目指す」と神田社長は意気込み、必要に応じて追加投資も辞さない構えを見せた。

(写真提供/サントリースピリッツ)