三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が、ブロックチェーン技術を応用した次世代決済プラットフォームの事業化を始める。CDN(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)大手の米アカマイ・テクノロジーズと提携して2019年4月に設立したGlobal Open Network Japan(東京・中央)が、21年春からようやく動き出す。国内で提供するサービス「GO-NET」が目指す地平を追った。
MUFGが米アカマイと提携し、MUFG80%、アカマイ20%の共同出資でGlobal Open Networkを設立したのが2019年2月。同年4月には、Global Open Network100%出資で、国内事業を担うGlobal Open Network Japanも設立。約28万台の自社サーバーを相互に接続する形で世界中に広がるアカマイのネットワーク上に、ブロックチェーン技術を応用した次世代決済プラットフォーム「GO-NET」を構築し、20年上期のサービス開始を目指してきた。約1年遅れて、21年春からようやく事業化に動き出した格好だ。
GO-NETの特徴をひと言でいうと、CDNとして十分な実績と高い信頼性を持つ高速・大容量のアカマイのネットワーク上に、多数のウォレットを内包した高速ブロックチェーンネットワークを築いたもの、である。
具体的には、GO-NETは1秒間に10万件という大量の処理能力と、ネットワーク上の利用者同士(End to End)のやりとりを2秒以内で終えられる高速性を併せ持つ。将来は1秒間に1000万件という規模まで処理能力の拡張が可能だ。
また、ブロックチェーン技術を使うことで、GO-NET上に億単位の大量の「ウォレット(仮想財布)」を保有できる。このウォレットを活用し、利用者一人ひとりに関する決済のすべてを、「そのたびに決済サーバーとの間でデータをやりとりせずに、利用者にひも付いたウォレットで決済・管理することで、高速かつ安価な決済処理を実現した」(Global Open Network Japan営業企画部長兼営業第一部部長兼経営企画部部長の桑原康史氏)。
三菱UFJニコスが“実験台”として利用開始
GO-NETとして事業化するサービスの第1弾は、クレジットカード会社などを想定顧客に、21年春から始める「オーソリ通信サービス」だ。オーソリとは「オーソリゼーション」の略で、利用者がクレジットカードで支払う際、店側がネットワークを通じて、クレジットカード会社に当該カード利用の可否を確認することをいう。
現在、クレジットカード会社の多くは、コロナ禍を背景としたEC利用の伸びに伴って急増しているネットワーク経由の取引回数(トランザクション)が、近い将来、自社の決済サーバー(システム)の限界を超えかねない危機に直面している。
そこでGlobal Open Network Japanは、「GO-NET上のウォレットを使って、個々のクレジットカードの与信枠管理を代行し、GO-NET内でオーソリデータや売り上げデータの処理を完結させることで、トランザクションが急増してもクレジットカード会社のシステムに負荷をかけないサービス」(桑原氏)を提供しようというのだ。
NTTデータが運営する「CAFIS」などの既存の決済ネットワークに代えてGO-NETを決済プラットフォームに活用すれば、クレジットカード会社はシステム拡充への投資を抑制できるというわけだ。
まずはグループのクレジットカード会社である三菱UFJニコス(東京・千代田)が、いわば“実験台”としてこのサービスを21年春から利用する。さらに、「三菱UFJニコス以外のクレジットカード会社とも、メガバンク系列という枠を超えて、既に商談を進めている」(桑原氏)という。
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