AI(人工知能)や自動運転といった先端技術を組み合わせた「スーパーシティ」構想。政府は2021年3月まで全国の自治体からの申請を受け付け、4月以降に5地区程度を選定する予定だ。そこに名乗りを上げた群馬県前橋市は2月17日、公募で集まった連携事業者を発表した。
スーパーシティとは、AIや自動運転、遠隔医療、キャッシュレス決済などの先端技術を組み合わせたデジタル都市の構築により、住民の暮らしのアップデートを目指すものだ。改正国家戦略特区法が20年9月に施行されたことを受け、政府が21年4月以降に選定する5つの地区に選ばれると、複数の規制を一括して緩和できるようになる。
すでに大阪府と大阪市、仙台市、愛知県と常滑市、茨城県つくば市など複数の自治体が名乗りを上げており、前橋市もその1つだ。同市はマイナンバーカードにスマホのSIMカードと顔認証を組み合わせて本人証明を行う住民ID「まえばしID」の導入を計画している。これを土台とし、行政の保有データ(医療、世帯、教育など)と民間企業の保有データ(口座、交通、購買など)をつなぐことで、様々な先進サービスを生み出そうとしている。こうして先端技術を活用することで日常の負担を減らし、市民がゆとりある暮らしを享受する「スローシティ」の実現も目標とする。
前橋市は、20年9月にスーパーシティの指定獲得を目指すことを表明。産官学の関係者で組織する「前橋市スーパーシティ準備検討会」を組織し、100人超が参加するワーキンググループによる検討、オンラインタウンミーティングやシンポジウム、アンケートなど、市民も巻き込む形でこれまで200回を超える議論を重ねてきた。
準備検討会においてスーパーシティの設計や運営を統括する「アーキテクト」に就任しているジンズホールディングスの田中仁社長は、「世界の潮流を見てもデジタルの活用、地域の活性化の2つはなくてはならない要素で、前橋市がスーパーシティ特区に申請するのは非常に意義のあること。ワクワクしているし、地域の発展のために頑張りたい」と話す。ジンズは1988年に前橋市で設立、現在は東京にある本社機能を22年ごろから一部前橋市に移す計画がある。
また、格安スマホを手がける日本通信の福田尚久社長(群馬県出身)も準備検討会に参加している。福田氏は、スーパーシティ特区を目指すに当たって「昨今のデジタル化の潮流に対して大きな危惧を持っている。いろんなことがスマホやデジタル技術でできるようになった半面、人間が技術に合わせる必要が出てきている。デジタル技術は本来、人間をサポートするためにあるはずで、スーパーシティにおいても人間中心の基本思想が必要。それを前橋市では実現していきたい」と語った。
市民ネット投票システムも検討
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