LIXILは、簡単に後付け可能で、ドアになじむコンパクトな宅配ボックス「ATMO(アトモ)」を、置き配バッグ「OKIPPA(オキッパ)」を提供する物流系ITスタートアップ、Yper(イーパー、東京・渋谷)と協力して開発した。2021年2月16日に「Makuake」でプロジェクトを開始し、ページ公開から3時間で目標金額に到達した。
ATMOはEC利用率が高まるなか、宅配物を「置き配」で安心して受け取ることができるようにする、いわば「簡易宅配ボックス」商品だ。
最大の特徴は、玄関ドアに工事不要で簡単に後付け可能なこと。横142ミリ、縦295ミリ、奥行き64.5ミリ(最大箇所)のASA樹脂で作られたケースに、OKIPPAバッグが入っており、マグネットや両面テープで手軽に設置できる。
LIXILの建材事業を担うLIXIL Housing Technology Japanが2019年に設立したビジネスインキュベーションセンターで開発。クラウドファンディングサイト「Makuake」のプロジェクトとして発売し、開始3時間で目標金額100万円に到達した。Makuakeプロジェクトは合計1000台をめどに21年5月15日まで続ける。
DIY以上、リフォーム未満の商品
ビジネスインキュベーションセンターは、LIXILにおいて、既存のビジネスではなかなかできないような実験性が高いもの、ニッチな商品などを迅速に出していくことを目指して設立された。
第1弾商品は家庭の玄関ドアをリモコン操作で簡単に開閉できるようにするシステム「DOAC(ドアック)」。第2弾は着脱自由なキャットウォール「猫壁(にゃんぺき)」で、やはりMakuakeプロジェクトとして発売。プロジェクトは3月1日までで、目標額100万円に対し1373万円(21年2月18日現在)を達成したこの猫壁では、「建てた後の家でも、自分の思い通りに修正を加えることができる」=「House Re-touch」というテーマを掲げた。
今回のATMOもHouse Re-touchのテーマの下、DIYとリフォームの間にある商品と位置付けている。
宅配ボックスは費用と場所が取られる
開発背景には宅配物の増加と、ユーザーの受け取りスタイルの多様化がある。
国土交通省が発表した19年の宅配便取扱個数は43億2349万個(前年度比1647万個増)。国土交通省が実施している大手宅配事業者3社の合計数値によれば、再配達率は19年10月の調査で15%、20年10月の調査で同11.4%と一見、減少傾向に見えるが、総配達個数を鑑みると十分削減できているとはいえない。
一方、受け取り側も、不便を感じている面がある。新型コロナウイルス感染症の影響で在宅ワークが増えたとはいえ、いつでも荷物を受け取れるということではない。「オンラインミーティングがあったり、作業に集中していたり、家事で手が離せなかったり、入浴中だったりとさまざまな事情で再配達にせざるを得ないときがある。あるいは、感染症対策として非接触で受け取りたいという声もある」(LIXIL Housing Technology Japan ビジネスインキュベーションセンター長 羽賀豊氏)
このため受け取りのタイミングを選ばない宅配ボックスの需要が高まってきているが、LIXILでも販売しているような、堅牢(けんろう)な宅配ボックスは、ある程度の設置スペースが必要で、費用も高い。また、ドアや玄関の雰囲気と合わないなどデザイン面での課題もある。
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