日本コカ・コーラとボトラー社などからなるコカ・コーラシステムは2021年2月15日、緑茶ブランド「綾鷹」から、日本の伝統工芸が支援できる「綾鷹 伝統工芸支援ボトル」を発売した。1本ずつの売り上げの一部を、若手職人が減り将来にわたる技術の継承が危機に陥っている伝統工芸の支援のために寄付する。

2021年2月15日に発売した「綾鷹 伝統工芸支援ボトル」(525ミリリットル140円、2リットル311円、430ミリリットル140円、280ミリリットル115円、いずれも税別)
2021年2月15日に発売した「綾鷹 伝統工芸支援ボトル」(525ミリリットル140円、2リットル311円、430ミリリットル140円、280ミリリットル115円、いずれも税別)

 伝統工芸支援ボトルは、「綾鷹」「綾鷹 茶葉のあまみ」「綾鷹 ほうじ茶」「綾鷹 濃い緑茶」の4シリーズに導入。東京の江戸切子や佐賀の伊万里・有田焼、沖縄の琉球びんがたなど国内の伝統工芸品全12種類をボトルデザインのモチーフに採用した。販売期間は現時点で2021年8月下旬までをめどとしている。

 支援ボトルの売り上げの一部は伝統的工芸品産業振興協会を通じて寄付し、新商品開発、技術継承、販路開拓、若手青年会の活動などに活用される。発売と同時に支援ボトルの新CMを放映したり、地元新聞とのタイアップやデジタル、店頭などでPRしたりと多様なメディアを通じて訴求する。「なるべく早期に話題性、共感性を喚起したい」と、日本コカ・コーラマーケティング本部緑茶グループグループマネジャーの助川公太氏。寄付の対象はすべての伝統工芸品で、21年6月には金額などの寄付概要を開示する予定だ。

コロナ後に伝統工芸への関心が上昇

 今回の取り組みの背景には、日本コカ・コーラが考える「コロナ後の消費者インサイトにある3つの変化」と伝統工芸産業の窮状がある。

 1つ目は、応援消費や支援寄付の機運の高まり。コロナ禍以降、各地で広がっているという。

 2つ目は、地方産業支援の動きの活性化。東京オリンピック・パラリンピックを前に、世界に向けて日本の良さを再発見しようという動きが、大会が延期になっても継続している。

 3つ目は、日常生活の中にあった伝統工芸品の価値の再発見。コロナ禍で日常をより豊かにしたいという思いが強まる中、身近な日用品の品質への関心が高まっている。その中で、伝統工芸品の価値を再発見する人も多いとのこと。

 その半面、伝統工芸自体は危機にひんしている。伝統的工芸品産業振興協会常務理事の秋葉和生氏によると、全国の伝統工芸職人のうち50歳以下の若手職人の割合は25%以下。将来にわたって技術を継承するのが難しい状況だ。

 1974年には「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」が定められたものの、同法の振興対象となるのは、主として日常生活で用いられるものであり、主要な部分が高度な手作りで、伝統的な技術や技法で製造されているもの、伝統的に使用されてきた原材料を用いているもの、一定の職人の集合があり産地が形成されているものなど、5つの条件に当てはまる場合のみ。

 秋葉氏によると、昨今の消費活動では機能性重視の傾向がますます強くなり、安価で手軽に使えるものに軸足が移ってきているため、工芸品が売れなくなっている。その上、コロナ禍が産業自体の危機的状況に拍車をかけた。秋葉氏は、「産地の作り手が大変厳しい状況」と窮状を訴える。

 今回の綾鷹 伝統工芸支援ボトルはこうした現状を踏まえた施策の1つとなる。伝統工芸支援ボトルを採用することで伝統工芸産業を支援するとともに、前述の消費者インサイトに応える綾鷹の新たな価値をアピールする。「“急須で入れたお茶”という大切な文化を守りたい思いでブランドを立ち上げたが、お茶以外にも将来に向けて守りたい伝統や文化がたくさんあると気づいた。日本にとって後世に受け継がれるべき大切なものを消費者にも改めて広く気づいてもらいたい」(助川氏)。

 綾鷹としては、コロナ禍に苦戦を強いられた2020年の飲料市場からの回復を目指すべく21年のブランドメッセージを「前進と革新」に設定し、既存品を成長軌道に再び乗せて、15周年にあたる22年を迎えたい考えだ。本製品に加え、今後は新製品なども投入する。「21年の緑茶市場は20年比だけでなく19年比でもプラス成長になると見込んでいる。日本コカ・コーラでも2番目に強いブランドである綾鷹で市場をリードしたい」(助川氏)。

(写真提供/日本コカ・コーラ)

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