作家・村上春樹氏が2021年2月14日、初の有料オンライン配信イベントに挑む。題して「TOKYO FM開局50周年記念 村上春樹 Produce 『MURAKAMI JAM~いけないボサノヴァ Blame it on the Bossa Nova~』」。TOKYO FM他全国38局で放送されている、村上氏がDJを務めるラジオ番組「村上RADIO」の番組イベントだが、ラジオ局で有料オンライン配信ライブを行うのはまれなことだ。実現までの経緯や思いを、TOKYO FMの名プロデューサーに聞いた。

村上春樹氏がDJを務めるTOKYO FMの特別番組「村上RADIO」の収録場面
村上春樹氏がDJを務めるTOKYO FMの特別番組「村上RADIO」の収録場面

 2021年、ステイホームのバレンタインデーに、“熱い”ひとときが供される――。村上春樹氏がDJを務め、音楽を紹介するラジオ番組「村上RADIO」(TOKYO FM他全国38局で隔月放送)のイベントとして、有料のオンライン配信ライブが行われるのだ。「TOKYO FM開局50周年記念 村上春樹 Produce 『MURAKAMI JAM~いけないボサノヴァ Blame it on the Bossa Nova~』」という題で、ジャズミュージシャンの大西順子が音楽監督を務め、ボサノバの第一人者の小野リサ、クラシックギタリストの村治佳織、日本を代表するジャズピアニストの山下洋輔が出演という豪華さだ。抽選販売された100席限定・税別2万円の会場座席は即完売。有料オンライン配信は前日までの前売り券(税別3500円)の他、当日券(同4000円)が用意されており、1週間後までアーカイブ配信も販売される。

 オンライン配信のプラットフォームは、コロナ禍以降に数多くのライブ配信を成功させているZAIKO。ラジオ局が行うファン向けの公開録音イベントは数多くあるが、有料チケット制の配信ライブを行うのは珍しく、しかも村上氏が姿を現すイベントとなると貴重な機会となる。このようなイベントを実現するまでの経緯を、TOKYO FM編成制作局ゼネラルプロデューサーの延江浩氏に聞いた。

TOKYO FM編成制作局ゼネラルプロデューサーの延江浩氏
TOKYO FM編成制作局ゼネラルプロデューサーの延江浩氏

村上春樹氏がMCを務めるライブを鑑賞できる、非常に貴重な機会です。TOKYO FMにとっても有料のオンライン配信ライブは初の挑戦だとか。延江さんからの提案だったのでしょうか。

延江浩氏(以下、延江) まず、19年6月に村上さんの作家生活40周年を記念した一夜限りのライブイベント「村上JAM」(HARUKI MURAKAMI 40th Anniversary 村上JAM ~村上RADIO SPECIAL NIGHT~)を行って非常に好評でした。20年も、村上さんと「またやりたいですね」と言っていたのですが、そこへ新型コロナウイルスの感染が広がりました。やはり開催は難しいのではないかと思っていたのですが、20年の夏くらいに「それなら、オンライン配信はどうだろう」と思いついたんです。村上さんに提案したところ、「面白いね」と前向きに考えてくださいました。オンライン配信ライブとなると、映像があります。村上さんは映像には出ないと聞いていたのですが、今回は快諾してくださいました。でも、村上さんにとっては、映像は一つのハードルだったと思うんです。

 そのハードルを越えたのは、オンライン配信は世界中の人に共通して見てもらえるということではないでしょうか。村上さんは海外にも多くの読者がいるので、その姿を見たい人は世界中にいます。村上さん自身も、18年2月にパリで「海辺のカフカ」を上演したときには、劇場で10代の学生たちとトークセッションを行ったり、18年10月にはニューヨークで講演もしていたりして、海外での手応えを感じていたんだと思います。今回の配信は、終了してから3日ほど間を空けて、英訳の字幕付き映像も配信します。

今回はボサノバがテーマで、小野リサさん、村治佳織さん、坂本美雨さん、山下洋輔さんらが参加されるのも魅力です。この企画はどうやって実現しましたか。

延江 日程をバレンタインに合わせたので、村上さんの世界として「愛あるコンサート」を目指すことにしました。村上さんからは、「だったら、真冬に熱いボサノバを届けるというのはどうだろう」という案が出てきたのです。実は、音楽監督は大西順子さんがいいですねという話をした翌日、何と電車に乗っていた僕の目の前に大西さんが座っていたんです。

それは運命的ですね。

延江 マネージャーも通さずに、車内でマスク越しに「こういう企画があって」と伝えて、二つ返事でOKをいただきました(笑)。村上さんから、ボサノバとジャズをトリビュートしたいというアイデアが出て、それならこういう曲だよね、小野リサさんに出てもらいたいよね、とどんどん話が進み、村上さんからもう一つ出てきたアイデアが、クラシックのギタリストの村治佳織さんにボサノバを演奏してもらうというのはどうだろう、というものでした。

 村治さんは、実は前回の村上JAMのときに客席にいらしたんです。そのとき、僕はある仕掛けを用意しました。作家生活40周年をお祝いして、何か村上さんにプレゼントしたい。村治さんにお願いして、スタッフの打ち上げでギターを弾いてもらいました。そういった思い出が、村上さんの頭にあったんだと思います。今回のライブの中に、村上さんが自身の作品を朗読するという企画があります。どこを読むのか、当日まで僕も分からない。しかも、村治さんのギターをバックに村上さんがステージで自作を読むという特別な企画です。今回の目玉になると思います。

 坂本美雨さんは、前回の村上JAMでも司会を務めていただきましたが、山下洋輔さんのピアノで坂本さんが歌ったボサノバ曲がすでにあった…という縁もあって、何と山下さんにも出ていただけることになりました。こういう縁は、うれしいですね。

人と人のつながりで、この共演が可能になったということですね。

延江 そうです。コラボはラジオ局が最も得意とするところです。普通、音源を録音して何かものづくりをしようというと、レーベルの違いや権利関係が壁になりがちですが、ラジオはその境界を軽やかに乗り越えられます。TOKYO FMも50周年という節目ですし、村上RADIOは放送20回を超えて、リスナーとの醸成感も出てきたところです。こうやってラジオライクな企画ができるのは本当にうれしい。

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