2020年は販売価格が2200万円を超える高級車が好調のビー・エム・ダブリュー(BMW)。コロナ禍の影響を受けながらも、新車投入やオンラインストアの立ち上げなど積極的な施策を展開した。21年も「M」シリーズのラインアップ強化など電動車(EV)を中心に強気の姿勢を崩さない。

コロナ禍の打撃を受けるも前向き姿勢

2021年秋に導入が予定されているBMWのEV「iX(SUV)」。すでに予約は始まっている
2021年秋に導入が予定されているBMWのEV「iX(SUV)」。すでに予約は始まっている

 クリスチャン・ヴィードマン社長は2021年1月26日に開催した「BMWグループ新春記者会見2021」の中で2020年を振り返り、「新型コロナウイルス感染症の影響は避けられなかったものの、それでも前進した」と前向きな姿勢を示した。

 四輪車の「BMW」「MINI」「ロールス・ロイス」の3ブランドと、2輪車の「BMWモトラッド」からなるBMWグループ。20年の新車販売は、BMWが3万5712台で前年比23.7%減、MINIが2万196台で前年比15.2%減と、やはりコロナ禍の影響が小さくなかった。

 一方で、超高級車のロールス・ロイスは販売台数226台と、実数こそ少ないものの前年比5.4%減と下げ幅は小さかった。また趣味性の高いモーターサイクルの実績は、日本での過去最高実績を記録したという。

 ヴィードマン社長が前向きな発言をするのには、大きく2つ要因がある。1つは、「コロナ禍の厳しい状況下、BMWで新車11モデル、MINIで新車1モデルと限定車4モデル、モトラッドで新車4モデルを投入するなど、積極的な新車投入を行ったこと」。もう1つは、「コロナ禍の新たな販売対応として、20年7月に『BMWオンライン・ストア』を立ち上げたこと」だ。後者は、顧客が新車ディーラーに一度も来店することなく、新車購入が可能なシステムを構築し、注目されている。

 また各モデルとも、クリーンディーゼル、プラグイン・ハイブリッド(PHEV)、電気自動車(EV)という次世代環境車に、購入しやすい価格設定の特別仕様車「Edition Joy+」を投入。結果、輸入車メーカーの中で次世代環境車を最も多く販売したという。

2200万円超えるMモデル躍進

 販売台数だけでなく、好調モデルの存在も大きい。その代表例が、スペックもさることながら価格も最上位である高性能な「M」モデル。コロナ禍でも19年比7.7%増と成長し、特に20年12月は19年比15.4%増を記録した。

 車好きの所有者が多いといわれるBMWの中でも、ハイパフォーマンスモデルの「M」シリーズは格別だ。特にMモデルのフラッグシップで2200万円を超える「M8」シリーズと、20年に登場したコンパクト4ドアクーペのスポーツモデル「M235i xDrive」(「2シリーズ グラン クーペ」は369万円~に対し、665万円~)が貢献したという。

 またMモデル以外でも最上級車となる「7シリーズ(セダン)」(1096万円~)、「8シリーズ(クーペ)」(1193万円~)、「X7(SUV)」(ディーゼルモデルで1114万円~)の販売が好調で、3車種の合計販売数は19年比21.2%増まで伸びたという。

 BMWの看板車種である「3シリーズ」(489万円~)は、やはりドイツ車であるメルセデス・ベンツ「Cクラス」、アウディ「A4」などと競合する厳しいジャンルだが、20年はライバルを差し置いて、セグメントトップになったという。

 日本で人気が高いMINIは、16年から5年連続で単一車種登録台数トップを記録。02年3月のBMW MINI日本導入からの累計販売台数は20年夏30万台を突破。ヴィードマン社長は継続的に日本でMINIが支持されていることを強調した。

20年1月28日に日本での販売を開始したBMW「M」のフラッグシップモデル「M8」
20年1月28日に日本での販売を開始したBMW「M」のフラッグシップモデル「M8」

時代が求める電動化とBMWらしい価値

 21年の展開については、BMWの電動化戦略の強化に合わせて、日本にも新たな電動化モデルの投入を予告した。まずBEV(Battery Electric Vehicle:バッテリーの電力だけでモーター駆動する電動車)の「iX(SUV)」と「iX3(SUV)」、そして「i4(4ドアクーペ)」の3台を発表するという。電動車販売に関しては、グローバルではより積極的で、20年はMINIを含め、グループ全体で19万2646台の電動車を販売しており、23年までに電動車25車種を投入し、そのうち半数はBEVにすると明言した。

 現状でも欧州のCO2規制は厳しく、中国が市場の電動化に力を入れる中、同社が電動車の普及加速に取り組むことは間違いない。

21年発売予定の「i4」コンセプトモデル
21年発売予定の「i4」コンセプトモデル

 一方でBMWらしいスポーツモデル「M」シリーズのラインアップ強化や、最上級の高級車シリーズへの限定車投入など積極姿勢を維持する。またMINIはマイナーチェンジでアップデートした3ドアと5ドアを導入しつつ、限定車の計画にも言及した。

 時代が求める環境車に力を入れるだけでなく、BMWらしさの塊であるMシリーズの継続的な展開は確実で、記者会見と同日に最新のMモデルセダン「M3」とMモデルクーペ「M4」を販売開始している。Mモデルセダン「M3」は「3シリーズ セダン」を、Mモデルクーペの「M4」は「4シリーズ クーペ」(577万円~)をベースに開発された高性能モデル。M3、M4共に3.0L直列6気筒Mツインパワー・ターボ・ガソリン・エンジンを搭載し、最高出力510ps、最大トルク650Nm(※コンペティション仕様)を発揮し、価格はM3が1324万~1436万円、M4が1298万~1460万円と、ベース車の2倍以上だ。しかもピュアガソリン車で、電動化技術も非搭載とあって、時代とは逆行するが、伝統的な味わいと最新技術が融合された、BMWを象徴する存在として力を入れていくということだろう。

デザインからもわかる通り、サーキット走行を前提とした性能を持つ「M4」(左)と「M3」(右)
デザインからもわかる通り、サーキット走行を前提とした性能を持つ「M4」(左)と「M3」(右)

 21年は、BMW日本法人設立40周年を迎え、記念の限定車の投入も予定する。節目を飾るべく、販売攻勢をかけていくという。その半面、BMWの主要モデルのアップデートが一段落したこともあり、目ぼしい新型車がEVに限定されるのは気になるところだ。

 とはいえ「1シリーズ」(337万円~)のハッチバック、「2シリーズ」(553万円~)の4ドアクーペ、3シリーズなどの主力モデルはモデルチェンジしたばかりで、プロモーション効果もまだ期待できる。コロナ禍で買い控えしたユーザーをいかに取り込むかが課題だろう。

(写真提供/BMW)

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