マツダは2021年1月28日、初の量産電気自動車(EV)「マツダ MX-30 EV MODEL」を発表し、同日に販売を開始した。「35年までに、新車販売で電動車100%を実現」するという菅義偉首相の発言もあり、電動化が急がれる中、同車はどのような戦略を持つのか。
EVありきで開発された量産SUV
マツダ初の量産電気自動車(EV)「マツダ MX-30 EV MODEL(エムエックス サーティ イーブイ モデル)」は、菅義偉首相が2021年1月18日の施政方針演説で「35年までに、新車販売で電動車100%を実現」することを明言し、自動車メーカーや関連業界の対応が急がれる中で、注目度の高いモデルだ。
50年までに温暖化ガス排出量を実質ゼロとする「2050年カーボンニュートラル」実現へのチャレンジとして、同社の「マルチソリューション戦略」に基づき企画。20年10月に発売したコンパクトスペシャルティーSUV「MX-30」のEV仕様車なのだが、同車はそもそも「東京モーターショー2019」で「マツダ初の量産EV」として世界初公開されており、EVありきで開発されたことが分かる。
メーカー小売り希望価格は451万~495万円。3グレードあり装備が異なる。デザインや機能はMX-30と同等で、エンジンルーム内に電気モーターを搭載し、前輪を駆動する。駆動バッテリーはキャビン(乗員室)下に収めてあり、車室内はMX-30と同等の広さがある。
動力性能は最高出力107kW(145ps)、最大トルク270Nm。駆動用リチウムイオンバッテリーは容量35.5kWhで、航続距離は256km(WLTCモード)だ。
エンジン車との価格差サービスで補う
航続距離はEV選択のカギを握るが、MX-30 EV MODELは256kmと短い。例えば同じく量産国産EVである日産リーフ標準車の航続距離は、322km(WLTCモード)である。
なぜ短くなったのかといえば、マツダがライフサイクルアセスメント(LCA)でのCO2排出量の削減と、実用性の両立を優先したからだ。CO2排出量は欧州で実用車として選ばれているディーゼル車以下に抑え、走行距離は欧州の一般的なユーザーの1日をカバーできればいいという設計だ。家庭や職場などで日常的に使える充電環境があれば、容量不足を感じさせないという。充電機能は200V普通充電とCHAdeMO規格の急速充電に対応。それぞれの充電時間は、6kWの200V充電器使用で満充電まで約6時間。急速充電器使用なら40分で80%まで充電可能だ。
メイン市場は電動化が急速に進む欧州だが、日本のユーザーの1日の平均走行距離はより少ないと考えると、国内も性能的にカバーできるということだろう。
価格はMX-30のエントリーグレード(マイルドハイブリッド仕様)が242万円に対して、MX-30 EV MODELは451万円からと最低209万円高い。マツダとしても急速な拡販は見込んでおらず、初年は500台限定販売となる。
ただし、電動化推進のため、エンジン車同等の残価を保証した、残価設定型クレジットプランを用意し、3年間のプランで残価率55%を保証する。またEVライフを疑似体験できる「1DAYモニター試乗」や、初めてEVを検討する顧客の購入から保有までの電話サポートを行う「EV専用ダイヤル」を開設して販売を促進する。
また購入後のサポートの一環として、コネクテッドサービスを活用し、バッテリー状態をモニタリング。顧客に対し、バッテリーに優しい使い方のアドバイスを行う「バッテリーケアアドバイス」も今秋より提供予定だという。
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