劇場版が国内で興行収入歴代1位になるなど、社会現象ともいえるヒットになった『鬼滅の刃』。その人気は海外にも広がっている。2020年12月にソニー傘下となることを発表した米国の動画配信サービス「クランチロール」がけん引した。今、世界で支持を集めるヒット作はどう生まれるのか。

(写真/Shutterstock)
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 『鬼滅の刃』について、もはや語ることはあまりないだろう。大正時代を舞台に、主人公の少年・炭治郎が、鬼にされながらも人間の心を持つ妹・禰豆子や仲間たちと共に鬼と戦うストーリーだ。原作コミックは最終23巻が2020年12月4日に発売され、シリーズ累計発行部数が1億2000万部に到達。10月16日に公開された劇場版アニメ版は国内興行収入記録を更新する357億円を突破した(21年1月11日時点)。関連グッズの売り上げもコロナ禍を吹き飛ばす勢いで、その経済効果は数千億円規模ともいわれている。

 これら大ヒット記録には19年4月から国内外のありとあらゆるプラットフォームで分け隔てなく放送・配信したテレビアニメシリーズが大きく貢献している。近年は特定のサービスで独占配信するなど、出し先を絞るケースも増えているが、『鬼滅の刃』の場合はその道を選ばなかった。Netflix、Amazonプライム・ビデオ、Hulu、U-NEXT、dTV、ABEMAビデオなどで配信した。

 動画配信サービスが台頭、定着している現在、消費者がコンテンツに触れるためのメディアは無数に広がっている。スマートフォンはもちろんのこと、かつて地上波テレビが独占していたテレビデバイスにさえも、YouTubeや各種サブスクサービスが侵食。可処分時間の奪い合いによってメディアの価値は分散し、結果、個々の持つ価値は下がった。

 だからといって、コンテンツの価値までも下がるわけではない。消費者に届けるためのメディアが増えている分、やり方によってはこれまで以上に価値を上げることもできる。『鬼滅の刃』の場合は、コンテンツホルダーである集英社(東京・千代田)とソニーミュージック傘下のアニプレックス(同)があえてコンテンツの出どころを増やしたことが、成功の一因といえるだろう。

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