サントリースピリッツは2021年1月27日、RTD(レディ・トゥ・ドリンク)事業の戦略説明会をオンラインで開催した。コロナ禍でも伸長を続けるRTDの中でもとりわけ人気のレモンサワーカテゴリーで、「こだわり酒場のレモンサワー」は前年比251%とけん引役に。21年もレモンサワー人気は続くと見て、ニーズに合わせた多様な製品を投入する。
ストロングではない「-196℃」で食中酒訴求
サントリースピリッツの推計によると、国内RTD市場は13年連続で伸長している。とりわけ2018~20年は3年連続で2桁成長と、コロナ禍でも勢いのあるカテゴリーだ。同社は期間限定品を減らし、通年品を強化する戦略を取ったため、20年の販売実績はストロング系チューハイ「-196℃」定番品が前年比102%、低アルコールの「ほろよい」定番品が同123%、ノンアルコールの「のんある気分」定番品が同106%と軒並み好調。その中で「こだわり酒場のレモンサワー(缶)」が前年比251%と大躍進した。同社推計では、20年のRTD市場の伸びが前年比112%だったのに対し、レモンRTDカテゴリーは同133%で、その人気を裏付ける結果となった。
説明会ではRTD市場全体が伸びた背景として、3つの要因を挙げた。1つ目は、20年10月の酒税改正により新ジャンルの税率が高くなったことで、ビール類から流入して併飲する人が増えたことだ。20年の流入元カテゴリーではビール類が53.3%だった(インテージSCI(20〜70代)20年1〜12月 容量ベース)。
2つ目の要因は、月1回以上、外で飲んでいた外飲みユーザーが家庭内でも飲用するようになったこと。RTD飲用量を前年と比べると、外飲みしない層が106%だったのに対し、外飲みユーザーは113%だった(同データ)。
3つ目の要因は、コロナ禍による外出自粛で消費者の意識が変化したことに伴うニーズの多様化だ。家庭で時間をかけて飲む、自分なりの飲み方で楽しむといったニーズが上位を占めているという(2020年7月ELC全国ウイスキー調査 N=4200)。
そこで、21年はそれぞれの要因にマッチした製品を投入してさらなる成長を図る。1つ目は、ビール類の併飲者の主要ニーズである「食事に合う」ことを重視し、これまでストロング系として人気だった「-196℃」ブランドから、新シリーズとしてアルコール度数7%の中アルコール帯製品「Theまるごと」シリーズを展開する。
「Theまるごと」シリーズでは、同社独自の「-196℃製法」を用いる。果実をまるごと-196℃で瞬間凍結し、パウダー状にして原酒に漬け込むことで、果汁とは違う果実の香りやおいしさを封じ込める。果実そのもののおいしさを感じつつ、甘味料と糖類をゼロにしたことですっきりと甘くない味に仕上げた。テレビCMを使ったプロモーションを大々的に展開し、食事に合う新定番商品になることを目指す。
2つ目は、外飲みユーザーが満足する品質と外飲み感覚を提供するべく、「こだわり酒場のレモンサワー」にさらに注力する。既存の定番品は炭酸ガス圧を高めたり原料酒ブレンドを見直したりしてリニューアル。パッケージの裏面に、飲食店で使用する専用タンブラーの写真を配し、外で飲んでいるような気分を高める。加えて、飲食店で提供されていた人気フレーバー「追い足しレモン」を新たに缶で発売する。
外飲みユーザーの家庭内飲用は増加しているものの、RTDユーザーとしては定着しておらず、ポテンシャルはまだ大きいと捉えた同社。そこで、食中酒以外の「ゆったり晩酌をしたい」というニーズに合わせて「鏡月 焼酎ハイ」を缶と瓶で提供する。
3つ目のコロナ禍での消費者心理の変化は、「家でできる範囲で楽しみを探したい」と「健康意識は高まるものの飲酒の気分だけでも充実させたい」に2分されるとし、それぞれに合わせた製品を展開する。
前者については、「ほろよい」にビタミン系炭酸味の「シュワビタサワー」を追加する。すでに14のフレーバーがそろい、限定品で歳時気分や季節感も演出してきた同シリーズに、懐かしさとワクワク感を意識したフレーバーを加えることで、幅広くエントリー層を捉える狙い。
後者には、糖類・カロリーゼロの「のんある晩酌レモンサワー ノンアルコール」を新発売し、大人の舌に合うノンアルコールのレモンサワーを提案する。同社によると、これまでのノンアルコールのレモンフレーバーは、お店のレモンチューハイに似せたやや甘い製品が多いという。一方、昨今のレモンサワー人気はスッキリとした果実感が支持されており、それに対するノンアル商品は未充足だとの認識を示した。レモンの香り成分を閉じ込める独自製法と、焼酎のうまみを凝縮する技術で新価値を創造する。
(写真提供/サントリー)