成長トレンドから一転、コロナ禍で市場平均販売実績が前年比で7%減少した清涼飲料市場。キリンビバレッジはそれを下回る同9%減となった。2021年は、不振の中でも好調だった「iMUSE(イミューズ)」などによる健康訴求と、ラベルレス・再生ペットボトルなどによる環境訴求を核に再成長を目指す。
健康分野の2つのカテゴリーが加速
キリンビバレッジは2020年1月21日に事業説明会を開き、19~21年の中期経営計画の最終年度となる21年の事業方針ビジョンを「CSVを基軸としたポストコロナに向けた再成長」と発表した。CSVとは、社会課題を解決することで企業利益も享受する経営手段のこと。同社は「健康」と「環境」をCSV経営の柱に据えた。
新型コロナウィルス感染拡大による外出自粛などの影響で、同社の20年の販売実績は清涼飲料合計で前年比9%減と、清涼飲料市場全体の7%減を若干下回る結果になった。だが、堀口英樹社長は「さまざまな面でビジネスチャンス(があること)を教えてくれた」と前向きに捉える。
堀口社長によると、コロナ禍で消費者行動や嗜好に3つの大きな変化があったという。1つ目は、消費者の健康志向の高まり。2つ目は、自販機やコンビニの売り上げが大幅に減少する一方、量販店やECが大きく伸びるなど、購買接点の変化。3つ目は、パッケージ飲料から自分で淹(い)れる手淹れ飲料への移行だ。
とりわけ健康志向の高まりと、それに同社が迅速に対応したことは、無糖や低糖の「摂りすぎない健康」カテゴリーや、プラズマ乳酸菌入り飲料「iMUSE」による「プラスの健康」カテゴリーの拡大に効果的だったという。そこで、21年はこれら2つのカテゴリーを代表する3つのブランド「午後の紅茶」「生茶」「iMUSE」に戦略的に注力し、健康を柱に再成長を目指す。
加えて、19年に資本業務提携したファンケルとのシナジーをさらに加速させる。21年4月16日には、共同開発飲料の第2弾商品としてアミノ酸摂取に特化した「キリン×ファンケル デイリーアミノウォーター」(555ミリリットル、税別希望小売価格138円)を発売する。
生茶ブランド中心に環境対策を強化
CSV経営において、健康と並ぶ柱となる「環境」領域では、世界的な問題になっているプラスチックゴミ削減への取り組みを強化させる。
このため、三菱ケミカルとの共同プロジェクトをスタート。ペットボトルの再資源化に向けた技術の検討と実用化を目指す。キリングループでは27年までに国内のペットボトルのリサイクル樹脂使用率を50%にするという目標を掲げており、「キリングループでペットボトルの使用比率が最も高いキリンビバレッジが率先して取り組む」と、堀口社長は意気込みを見せた。
取り組みを“見える化”するため、「生茶」ブランドを「環境フラッグシップブランド」に設定。同ブランドでは、「生茶デカフェ」(430ミリリットル)で再生ペット樹脂を100%使用した「R100ペットボトル」をすでに採用している。これに加え、「生茶」「生茶 ほうじ煎茶」(600ミリリットル)でもR100ペットボトルを採用する。また、ラベルレスやラベルの短尺化も行う。
注力3ブランドの実績と目標
事業説明会では、先に挙げた3つの注力ブランド「午後の紅茶」「生茶」「iMUSE」の実績と戦略にも触れた。
まず、「午後の紅茶」は、ブランド全体の販売実績こそ前年比12%減と不調だったものの、「午後の紅茶 おいしい無糖」「午後の紅茶 ザ・マイスターズ」シリーズといった無糖・微糖商品は前年を6%上回った。
35周年を迎える21年は、ブランド誕生当初から継続するレギュラー3商品「ストレートティー」「ミルクティー」「レモンティー」を3年ぶりに刷新し、ブランド全体を活性化させる。販売目標は5420万ケースで、前年比11%増を狙う。
午後の紅茶同様、前年比2%減と苦戦を強いられた「生茶」は、20年がブランド20周年の節目でリニューアルも行ったが、予期せぬコロナ禍でプロモーションを縮小せざるを得なかった上半期の結果が響いた。
ただし、下半期は「生茶 ほうじ煎茶」が年間販売目標を50日で達成する異例のヒットを遂げ、無糖茶市場を上回る前年並みの販売数量維持まで巻き返した(関連記事「キリン「ほうじ煎茶」 過去の失敗教訓に年間目標を50日で達成」)。21年は環境フラッグシップブランドとしても位置づけ、販売数2980万ケース、前年比6%増を目指す。
「iMUSE」は、日本で初めて免疫機能を訴求する機能性表示食品としての届け出が受理され、20年11月に新発売したプラズマ乳酸菌シリーズ。コロナ禍の健康志向の高まりもあり、同シリーズの飲料は前年比36%増と好調だった。21年はラインアップを拡充し、販売目標410万ケース、前年比28%増と強気の目標を設定している。
(写真提供/キリンビバレッジ)