アウディジャパン(東京・品川)は2021年1月13日、年頭記者会見を実施した。オンラインで行われた発表会には同社のフィリップ・ノアック社長が登壇し、20年の振り返りと21年の戦略について語った。

2020年の振り返りと21年の戦略について語る、アウディジャパンのフィリップ・ノアック社長
2020年の振り返りと21年の戦略について語る、アウディジャパンのフィリップ・ノアック社長

プレミアムカー市場では減少率が低い

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2020年の自動車販売は世界的に厳しい環境下に置かれた。多くの自動車メーカーにとって販売台数が減少しただけでなく、製造工場の休止に追い込まれるなど、異例の対応に追われた年でもあった。

 もちろんアウディも影響を受けた。世界販売が前年比8.3%減となる169万2773台にとどまり、日本販売も同8.0%減の2万2304台だったという。しかしノアック社長は、プレミアムカー市場全体が15%以上の落ち込みを見せる中、8%減という数字は、日本のアウディ関係者が力を合わせて落ち込みを最小限に抑えたからだと、前向きにとらえる。

 ノアック社長のポジティブな見解は、20年下半期の販売回復の大きさが要因だろう。前年の同時期に比べて111台多い、1万3019台の販売台数を記録。これは過去最高の実績で、20年秋から販売を巻き返せていることを示している。

 さらに認定中古車の販売は前年比2.7%増の1万3925台となり、やはり同社の過去最高の実績。20年の厳しい状況下でも7割のディーラーが収益を上げているそうで、改めて日本におけるアウディのポテンシャルの高さを実感できたのだろう。

今年はSUV、EV続々で次の一手も

 21年の新型車については、年内に主力モデルであるコンパクトカー「A3セダン」「A3スポーツバック」の投入を公表。人気の高い多目的スポーツ車(SUV)では、ミッドサイズSUV「Q5」「Q5スポーツバック」と、エントリーコンパクトSUV「Q2」の改良型を21年後半に販売する計画だ。前者のカテゴリーは北米市場での販売台数が多く、⽇本ではトヨタ「RAV4」や三菱「アウトランダー」などが、輸入車ではメルセデス・ベンツ「GLC」などが属する。後者は、日本ではホンダ「ヴェゼル」が代表的で、輸入車セグメントでも、プジョー「2008」やフォルクスワーゲン「Tクロス」などのサイズと価格の手ごろさで⼈気の高いカテゴリーだ。

 また、今回の発表会ではSUVタイプの電気自動車(EV)「e-tron 50クワトロ」と、20年に発売したアウディ初の量産EVにしてクーペスタイルのSUV「e-tronスポーツバック」の新グレード「50クワトロ」を発表、同日販売を開始した。e-tron 50クワトロはe-tronスポーツバックの姉妹車となるSUVで、基本構造を共有する。

クーペスタイルのSUV「e-tronスポーツバック」の姉妹車となる新型「e-tron 50クワトロ」
クーペスタイルのSUV「e-tronスポーツバック」の姉妹車となる新型「e-tron 50クワトロ」

 20年に投入された「e-tronスポーツバック ファーストエディション」は、「55クワトロ」と呼ばれる高性能グレードがベースだった。これに対して新発売されたのはe-tron、e-tronスポーツバックともに「50クワトロ」と呼ばれるエントリーグレードに当たる。後者については車両重量の軽減と低価格化が狙いだ。

 e-tron 50クワトロは71kWhの駆動バッテリーを搭載し、最高出力は230kW、航続距離(WLTCモード)は316kmと、スペック的には55クワトロを下回る。しかし価格は933万円(税込み、以下同)からと、1327万円のe-tronスポーツバック ファーストエディションに比べ394万円安い。なおe-tronスポーツバックに新設された「50クワトロSライン」は1143万円、同等装備の「e-tron 50クワトロSライン」は1108万円となっている。

 e-tronスポーツバック ファーストエディションの発売を機に進展した感のあるアウディの日本市場での電動化戦略だが、21年は次なる一手として、欧州での発表を控えた新型EV「アウディQ4スポーツバックe-tron」の早期導入を計画している。

「e-tron GT」の導入も?

 Q4スポーツバックe-tronは人気のクーペスタイルのSUVで、全長は4.6メートル。全長4.9メートルのe-tronやe-tronスポーツバックよりもやや小ぶりなため、より日本に適したEVといえるだろう。

 ノアック社長は「早ければ10月、遅くとも18カ月以内の発売を目指したい」と早期投入に向けて強い意気込みを見せた。また今後市販が見込まれるEVスポーツカー「e-tron GT」の発売にも前向きなようだった。

 日本市場への意欲は、21年1月14日から5月31日までの期間限定のブランドストア「Audi House of Progress Tokyo」を東京・青山に開設したことからも伝わってくる。「House of Progress」はアウディのブランド発信基地で、東京を皮切りに全世界で展開されるという。同所には既にアウディQ4スポーツバックe-tronのコンセプトカーが展示されており、日本市場に対する関心の高さがうかがえる。

ブランドストア「Audi House of Progress Tokyo」には「Q4スポーツバックe-tron」のコンセプトモデルが日本で初めて展示された
ブランドストア「Audi House of Progress Tokyo」には「Q4スポーツバックe-tron」のコンセプトモデルが日本で初めて展示された

 ノアック社長はプレゼンテーションの締めくくりに、21年のアウディジャパンを示す漢字として「躍」を掲げた。「躍進、飛躍という意味がある」と説明するノアック社長の言葉からは、厳しい状況下でも成長の歩みを止めない強い意気込みが感じ取れた。

 21年もアウディは日本市場に31億円の投資を行う。新店舗4店を開設する他、17拠点のリニューアルも計画しているそうで、「顧客第一主義」の姿勢を継続しつつ、新たなファン獲得に向け精力的に取り組んでいく。

 ジャーマン3として、日本での存在感を高めてきたアウディだが、いまだメルセデス・ベンツやBMWの背中は見えていない。時代が求める電動化をキーとし、これまでの先進的なイメージを武器に、EVの拡充で成長を加速させたい思惑があるのだろう。そのためe-tronも1000万円切りのエントリーモデルを打ち出した。その一方で、高価だが航続距離と性能で勝るe-tronスポーツバック・ファーストエディションの価値が際立ったようにも思える。高価格帯のEVで、顧客が価格と性能のどちらを重視するのかも興味深いところだ。

ブランドストア「Audi House of Progress Tokyo」外観
ブランドストア「Audi House of Progress Tokyo」外観

(写真提供/アウディジャパン)