ソーシャルメディアを中心にデジタルマーケティング支援を手掛けるアライドアーキテクツと、中国の家電量販大手でECも手掛ける「蘇寧易購(Suning.com)」の傘下にある日本の小売り大手、ラオックス(東京・港)との提携が好調に推移している。両社で展開する、中国の消費者相手に“越境”して商売したい日本企業を、クチコミやライブコマースなどを軸に支援するサービスが、想定以上に好評なのだ。両社が強化するそのサービスの特徴をひもといた。
「社長、この商品『SAFE ONE』の特徴をどうぞ」
「抗菌ナノ粒子という全く新しい技術を使った世界初の抗菌・抗ウイルススプレーです。アルコールは使っていません。人体や環境に優しく、赤ちゃんが使う衣類や玩具などにも安心して使用できます」
2020年12月、中国EC市場シェア4位の蘇寧易購ECに出店している「ラオックス旗艦店」で配信されたライブコマースでの一幕だ。スマートフォンカメラの前で受け答えしているのは、ラオックスのMC(司会役の男性とインフルエンサーの女性)2人と、抗菌・抗ウイルススプレー「SAFE ONE」を中国の消費者に売りたい、おおきに薬局を運営するOokini(大阪市)の宮島徹社長である。
MCと宮島氏が、会話したり、カメラに呼びかけたりする形で進むライブコマースは約1時間に及んだ。主な内容は、商品の特徴についての解説や、商品に使われている技術の紹介、MCの感想、おおきに薬局という会社の説明などだ。ライブコマース中に抽選が行われ、希望者数人にSAFE ONEを贈呈する試みもなされた。
配信開始当初5万程度だったライブコマースの視聴者数は、時間を追うごとに上昇。ライブ開始から約30分が過ぎたときには7万6000を超えた。ラオックスの場合、ライブコマースを実施すると視聴者数は平均7~8万に達する。今回も同様で、これまでの例から、取り上げた商品は今後3カ月で順調に売れ行きを伸ばす見込みだという。
中国市場進出にはマーケティングが不可欠
新型コロナウイルスの感染拡大もあり、他人との接触を控えながら買い物ができる中国のEC市場は成長を続けている。とりわけ、アリババ集団が運営する「天猫国際(Tモールグローバル)」や「考拉(コアラ)」、京東集団(ジンドン)が運営する「JDワールドワイド」など、中国にいながらにして海外の商品を購入できる「越境EC」の利用は増えているという。
経済産業省の推定によれば、中国の消費者が越境ECを経由して日本から購入する額は、14年に6064億円、18年に1兆5345億円と増え続け、22年には2兆5144億円(18年比で164%)まで増える見込み。ラオックス経営戦略本部副本部長の庄宇杰氏も、「この1年で、沿岸部の一級都市に住む富裕層だけでなく、地方の二級、三級都市に住む人々の多くも、越境ECを利用するようになってきた」と、越境ECが成長している理由を解説する。少子高齢化で長期的には縮小が確実な日本市場だけにとどまらず、中国市場にも進出したい日本のメーカーや小売りにとっては、チャンス到来である。
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