東急は2020年12月17日から25日まで、名古屋大学やソリトンシステムズなどと共同で遠隔型自動運転モビリティの実証実験を行った。人気観光地である伊豆を舞台とした自動運転および遠隔操縦は、どのくらいの完成度まで来ているのか。現地で体験した。
自動運転時代に向けて必要な技術の1つが、遠隔監視や遠隔操縦だ。道路上で起こるあらゆる事態に対応可能な完全自動運転が実現するのはまだ先の話。それまでは車両を人間が監視し、万が一のときには介入できるシステムが必要になる。
伊豆エリアでMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)や自動運転などの取り組みを積極的に進める東急が実施した今回の実証実験は、そんな将来を見据えたものだ。この実験では伊豆高原駅に設置したコントロールセンターから、伊豆高原駅周辺および30キロメートル離れた下田市で運行する自動運転車両を監視する。東急によると1カ所のコントロールセンターから複数都市の車両を同時に監視するのは日本で初めてだという。このうち伊豆高原駅を走行する自動運転モビリティに関しては、コントロールセンターからの遠隔操縦も可能。将来の無人自動運転に向け、技術課題や安全性を検証することを目的としている。
伊豆高原駅での自動運転に使用した車両は、マイクロバスタイプの電気自動車(EV)「Izukoいずきゅん号」で、乗車定員は8人。自動運転のためのセンサーに加え、車内外を監視するカメラが10個と、マイク、スピーカーが搭載されている。伊豆高原駅を起点に、周辺の観光スポットを巡る2.8キロメートルの区間を往復運転した。最高時速は19キロメートルという低速車両で、シートベルトは免除されている。伊豆高原駅周辺には観光スポットがいくつもあるが、急坂が多く、徒歩で観光スポットを巡るのは楽ではない。また、道が狭いため、大型バスは入りにくい。そんな課題を解決する方法の1つとして、低速の自動運転モビリティを使用した実証実験となった。
遠隔コントロールセンターは「統括責任者」「遠隔監視者」「遠隔運転者」の3人体制。目の前に設置された2台の大型ディスプレーに伊豆高原、下田で走行する2台の車両に搭載したカメラからのリアルタイム映像や走行位置、各種走行データを表示する。遠隔監視者の手元に置かれたタッチ式ディスプレーでは、大画面に表示する映像の選択や自動運転と遠隔操縦の切り替えなどができる他、マイクを通じて車内外にアナウンスを届けることも可能だ。遠隔操縦者の席にはゲーム用のハンドルやアクセル、ブレーキペダルが設置されており、前方のディスプレーを見ながら遠隔運転ができる。
基本は自動運転、追い越しは遠隔運転
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