あえて飲まない人もターゲットに

 生ジョッキ缶と並び、新たな施策の目玉になるのが、0.5%のアルコール飲料「アサヒ ビアリー」(希望小売価格、税別181円)。アルコールを飲む人も飲まない人も尊重し合える社会を目指す新たなスローガン「スマートドリンキング」から生まれた新商品だ。

アルコール度数0・5%の「アサヒ ビアリー」(希望小売価格、税別181円)は、2020年3月30日に1都9県(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、山梨県、茨城県、栃木県、群馬県、新潟県、長野県)で先行発売。全国発売は6月29日
アルコール度数0・5%の「アサヒ ビアリー」(希望小売価格、税別181円)は、2020年3月30日に1都9県(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、山梨県、茨城県、栃木県、群馬県、新潟県、長野県)で先行発売。全国発売は6月29日

 スマートドリンキングとは、「不適切な飲酒を撲滅し、さまざまな人々の状況や場面における “飲み方”の選択肢を拡大し、多様性を受容できる社会を実現することを目指す」(塩澤社長)という考え方。海外では不適切な飲酒を避けて、お酒を飲める人があえて飲まないことを選択する「ソバ―キュリアス」が増えており、ノンアルコールや低アルコール市場が拡大し続けている。この潮流が日本でも広がるとみる。

 アサヒビール専務取締役マーケティング本部長の松山一雄氏は、「これまでは20~60代の人口約8000万人のうち、日常的にお酒を楽しむ約2000万人をターゲットにしていたが、半数の約4000万人は何らかの理由で飲まない。今後は(4000万人を含めた)すべての大人をお客様として捉えられるため、ビジネス的に大きなポテンシャルがある」と、話す。

 ノンアルコールビールでは物足りない、体質やシーンで飲み分けたいといった未充足ニーズを掘り起こし、新規層獲得を狙う。

 製造方法も既存のノンアルコールビールと異なり、100%ビール由来の原料を用いたベースビールからアルコールだけを抜くため、「ビールのような本格的な味わい」(松山氏)だという。アルコール度数が1%未満のため清涼飲料水に分類されるが、あくまでアルコールとして販売する戦略だ。「未成年飲酒の危険を避けるためにも、価格を高めに設定した。この商品の価値を認めてもらえる人に飲んでいただきたい」(塩澤社長)

 スマートドリンキングの取り組みでは、他にも「21年6月までに商品の純アルコールグラム量をホームページに開示」「25年までにアルコール度数3.5%以下の商品構成比20%(09年比)を目指す」を掲げている。

 20年にマーケティングの基本方針を物性訴求から情緒訴求へ大きく転換したアサヒビール(関連記事「アサヒビール、情緒訴求と若年層開拓でマーケ戦略を大改革」)。生ジョッキのような缶ビール、体質やシーンに合わせてビールのような気分が味わえる微アルコールなど、ニューノーマルにおける生活者目線での商品開発は「お客さま主役の “統合型マーケティング”」(松山氏)の表れと言えるだろう。

 巣ごもり需要で業務用に苦戦したアサヒビールを抑え、20年は「本麒麟」や「一番搾り 糖質ゼロ」が好調のキリンビールがビール類の推定シェアで11年ぶりの首位に躍り出た。同社は同じ日、21年のビール類販売目標を数量ベースで前年の1.6%増と発表した。巻き返しを図るアサヒビールの期待が両商品にかかっている。

(写真提供/アサヒビール)