アサヒビールは2021年1月6日、同年の事業戦略を発表した。「スーパードライ」は21年4月に国内初の自然に発泡する缶容器「生ジョッキ缶」を発売。アルコール0.5%の「微アルコール」飲料も3月に先行発売し、飲まない人や飲めない人をも射程に収める。コロナ禍の新たな生活様式で多様化するニーズに応える考えだ。

「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」(340ミリリットル、オープン価格)。21年4月20日から全国発売。コンビニエンスストアでは4月6日から先行発売
「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」(340ミリリットル、オープン価格)。21年4月20日から全国発売。コンビニエンスストアでは4月6日から先行発売

酒税改正の追い風生かせず

 「2020年の国内ビール市場は16年連続で縮小した」。アサヒビールの塩澤賢一社長は冒頭の挨拶でコロナ禍によるビール市場への打撃を説明した。同社の基幹ブランドの「スーパードライ」(SD)も強みである業務用へのダメージが大きく、売上が前年比78%(数量ベース)に。20年10月の酒税改正で新ジャンルやRTD(Ready to Drink、栓やプルタブを開けてそのまま飲めるアルコール飲料)との価格幅が小さくなり、10~12月に限れば前年同期比117%と好調だったものの、通年で見ると機会損失は大きく、酒税改正の追い風を生かしきれなかった。

 塩澤社長は、コロナ禍の影響について、「スーパードライが主要ビールブランドの中でも最も強い、花見や祭りなどイベント需要、いわゆる“ハレの日”需要が蒸発したこと、オリンピック・パラリンピックの延期も余儀なくされたこと」を挙げた。

 さらに26年までに段階的に酒税が改正されていくのに伴い、「ビールではブランド淘汰が予想されている。選んでもらえるようブランド価値を向上させることが重要」との危機感も口にした。

 そこで注力するのが、缶ビールの強化だ。外出自粛による宅飲み需要の増加でSDの缶の売り上げは前年比6%増となっている。そこで21年は缶ビール需要の波をとらえるべく、うまさや鮮度といったこれまでの訴求点に新技術で付加価値を与え、ブランドの価値向上を狙う。その付加価値とは、缶ビールなのにジョッキに注いだ生ビールを飲んでいるような体験ができるという「生ジョッキ缶」だ。

 これまでのビール缶にはなかった「全開するふた」を開けると、数秒で自然と生ビールのようなきめ細かな泡が立つという。ふたを全開するため、麦芽の香りが感じやすくなるとともに口に流れる液量が多くなり、生ジョッキで飲んでいるような感覚が味わえるのも特徴だ。

 開缶直後に自然発生する泡は、特殊塗料が塗られた缶胴(特許出願中)の形状により、通常の缶からビールをグラスに注いだときに発生する泡よりもきめ細かい。缶のまま直接飲めるため冷たさも炭酸ガス圧も維持されるとのこと。また、開缶したふたと飲み口は、飲料缶では初採用のダブルセーフティー構造で、手や口を切る恐れがないという。

 首都圏に2度目の緊急事態宣言が発令されるなど、飲食店で生ビールを飲む機会が激減するなか、家でも生ビールを飲んでいる気分になれる商品は、うまさだけでなく感動を伴う体験も訴求ポイントにできると自信を見せる。生ジョッキ缶をフックに21年は前年比108.9%増を狙う。

ふたを全開にすると、自然に発泡する
ふたを全開にすると、自然に発泡する

 同社では、コロナ禍で苦戦を強いられる飲食店への支援として、テイクアウトや弁当のあっせんなどを試みたものの、長続きしなかった。このため、業務用の施策として塩澤社長は、「今まで以上においしい状態で生ビールを出すこと。生の味を上げようということに最も注力していく」と述べるにとどまった。