コロナ禍のニューノーマルで求められる消費者コミュニケーションをテーマにTwitter Japanと日本マクドナルドが2020年12月22日にメディアブリーフィングで対談した。その内容に加え、両社への追加質問から、デジタルマーケティングや広告におけるTwitter活用事例を見ていく。
広告主の3割強がデジタル投資増加へ
2021年は生活様式の変化に伴う購買行動(消費行動)モデルの把握の重要度がさらに増すと想定され、広告についてはデジタルシフトが急ピッチで進んでいることがうかがえる。
Twitter Japanは実際、「コロナ禍」で一度は削減したデジタル広告の出稿を再開するという企業が「全体の75%程度」(グローバルビデオソリューションズ日本担当ジェイク・ズウェルジキ氏)にまで戻ったという。広告主の3分の1にあたる約35%が21年はデジタル広告への投資を増加予定で、20年と同程度の出稿を予定する企業を合わせると9割以上がデジタル広告への投資に意欲的だ。
そこで同社が20年に提供を開始したのが「プロモトレンドスポットライト」だ。「Twitterの全世界でのmDAU(収益化可能な日間平均アクティブユーザー数)が第3四半期は1億8700万人で前年同期比29%増しだった」とズウェルジキ氏。その影響力を生かした広告メニューだという。
一貫したコミュニケーションの一部に
プロモトレンドスポットライトは、「話題を検索」タブの画面上部の枠に、24時間、1社の動画とテキストが表示される広告形式だ。 Twitterは一般ユーザーの投稿から今起きていることが分かる場所であると同時に、ニュースなどの仕入れ先として活用されることも多い。このため、トレンドをチェックしやすい「話題を検索」タブへの広告表示は高い効果を見込める。テキストに動画を組み合わせることで、注目度も向上。従来のテキスト1行だった広告メニュー「プロモトレンド」に比べてクリックスルー率が3倍以上になるという。
また、20年7月には、広告主が「いいね」ボタンのアニメーションを24時間限定でカスタマイズできる「Branded Likes(ベータ)」を発表。「“広告だけでなく、アプリの体験自体までが変わる”と社内外から注目された」とズウェルジキ氏はいう。
日本市場でこの「Branded Likes」のベータテスターパートナーになったのが日本マクドナルドだ。日本マクドナルド マーケティング本部 ナショナルマーケティング部 マネージャー 山野辺普人氏は、20年4月に緊急事態宣言が発令され、消費者の動向、消費意欲、消費者実態が変わる中、「今まで気づかなかったこと、新しく気づいたことなどを大切にしようという意識で、人間の本質的な価値観を軸にマーケティング活動を行った」と振り返る。
効率重視から共感のマーケティングへ
山野辺氏はコロナ禍以前から広告の受容性が低下し、テレビの録画視聴やデジタル広告などでもCMはスキップできるようになったことを指摘。さらにコロナ禍で個人のメディアとの接触時間が増加し、コンテンツそのものも埋もれるようになったのではないかと言う。「広告のパフォーマンスだけ追求するような(効率重視の)偏ったコミュニケーションではなく、つながりをつくっていく、エンゲージメントを意識したマーケティングが大事。共感がポイントだ」(山野辺氏)。
TwitterのBranded Likesの採用は、その共感を得る意味があったという。
「『月見バーガー』は『月を見る。心が上を向く。』をテーマに月を見上げて大切な人とつながる幸せの様子を、心温まる感動のストーリーとしてテレビCMやWebムービーなどで描いたもの。そのブランディングを進める中で、Branded Likesは相性がいいのではと直感的に思った」と山野辺氏。一貫したメッセージ展開の中で、Branded Likesは「全体のコミュニケーションの一部として活用」した。
実装したのは「いいね」をタップすると、ハートマークが月見の満月になるというアニメGIF。タップしたユーザーが月見を楽しめるだけでなく、そのユーザーのフォロワーにも広がる仕組みで、結果、発売日の「月見バーガー」ツイート数は前年比3.5倍となり、終日トレンド入りした。
「マーケティングビジョンの『LIKEからLOVEへ』を実現し、顧客とのつながりを醸成することをデジタルでも考えて活動してきた。コロナ禍の今だからこそ、顧客の気持ちの変化をいち早く察知して、マクドナルドとして何をお伝えしていくのかを真摯に考えていくことが大切だと思っている」(山野辺氏)
消費者コミュニケーションとは何か
一方、Twitter Japanの山川氏は、Twitterにおける「消費者コミュニケーション」について、「消費者の生のつぶやき(ツイート)から見える、新たな消費活動の兆しになりそうな動きをいち早く捉えて、企業のコミュニケーションに生かしていくこと、と理解している」という。
ブリーフィングの中で山川氏が言及したのが、自身が担当する自動車メーカーの事例だ。彼らにとって重要だったのが、「今まで車の購入に見向きもしなかった層が真剣に車の購入を検討しているというツイートが、緊急非常事態宣言が発令される前から多く見られた」事実を素早くキャッチすることだったという。
「その証左として、昨今、自動車教習所が若者で活況を呈している、というニュースもあった。ただ、ここでより重要だったのは、新しい車購入関心層にとっては、SUVという言葉でさえ専門用語でよく分からない、ということだった」(山川氏)
とかく専門誌や専門Webサイトなどでは、専門用語で語られることが多く、「そもそもどこへいけば車の購入のためのフローを始められるのかすら分からない、といった発言もあった。このことから、実はメーカーからの情報発信は、車の購入を経験したことがある人のみを対象にしていたのではないか、コロナ以前においても新しい顧客層の開拓を自ら疎外していたのではないか、という仮説が成り立った」と山川氏。
今後、商材やサービスはそれを求める消費者特性に寄り添ったコミュニケーションにしていく必要がある。Twitterを分析し、こうした消費者のインサイト(いつもは意識していない心の声)を拾うことで、速度を増して細分化していく購買行動をより早く捉えることができるというのが山川氏の指摘だ。