音楽アーティストの一発撮りパフォーマンス動画で話題のYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」。チャンネル開設以来、コンスタントに動画をアップし続け、チャンネル登録者数が右肩上がりで上昇。ほぼ1年で約300万人の登録者数(2020年12月23日時点)を抱えるまでに急成長を遂げた。なぜ人気なのか? 理由を分析した。

2019年11月にスタートした「THE FIRST TAKE」。約1年で300万人を超えるリスナーがチャンネルに登録した
2019年11月にスタートした「THE FIRST TAKE」。約1年で300万人を超えるリスナーがチャンネルに登録した

魅力は「臨場感」が生む圧倒的な「没入感」

 「THE FIRST TAKE」から届けられる動画は、一発撮りというルールの下、アーティストがたった1曲のパフォーマンスに臨む姿を捉えたシンプルな内容。その舞台もやはりシンプルで、真っ白な壁を背景に映し出されるのは、コンデンサーマイクと最小限の楽器・機材、アーティスト本人のみ。そしてアーティストがOKを出せば、“真剣勝負”が始まる。

 レコーディングと同等の環境で録音されるサウンドはクリアかつ迫力満点。映像は4K解像度で撮影された高画質が魅力で、一発撮りに臨む独特な緊張感、例えば手の震えなどを克明に映し出す。テレビの音楽番組やYouTube上のMV(ミュージックビデオ)と比べ、さまざまな要素がそぎ落とされているため、アーティスト個人の力量が生々しく浮かび上がってくる。まるでドキュメンタリーのような臨場感が楽しめる。

 ファンにとっては普段とは違うアーティストの「生身」の部分をのぞき見できるのはうれしいものだろう。だが、「THE FIRST TAKE」にはファンでなくとも人々を引き付ける魅力がある。それは恐らく「没入」という体験だ。昔からBGMという言葉がある通り、仕事中や勉強中に音楽を“ながら聴き”するケースは多い。テレワークの影響でながら聴きできるメディアが注目されるようにもなった。実際のところイヤホンで音楽を聴いていても、音楽に没入している人は案外少ない。

 一方で視聴すれば分かるが「THE FIRST TAKE」は、人々の視覚と聴覚を奪う。画面に映し出されたアーティストの姿を注視し、神経を研ぎ澄まして声や歌詞、息遣いを追ってしまう。この没入体験が「THE FIRST TAKE」の魅力であり、とりわけYouTubeを普段から視聴しているような若い世代にとってはテレビの歌番組やMV、通常のライブとは異なる新鮮な体験に感じるのではないだろうか。

 企業のマーケティング戦略を支援するトライバルメディアハウス(東京・中央)が「THE FIRST TAKE」に関するツイッター投稿を分析したところ、投稿に記載された名詞の上位は、アーティスト名などを除くと「好き」「最高」「鳥肌」だった。同社プロダクトソリューション事業部の井福裕之氏によれば「『鳥肌』が上位にくるケースは非常に珍しい。視聴者の没入体験から発せられた感想ではないだろうか」と話す。

「THE FIRST TAKE」のチャンネル登録者数
「THE FIRST TAKE」のチャンネル登録者数
20年11月末日までのデータ。20年5月下旬にチャンネル登録者数が100万人を超え、9月下旬に200万人を突破した

 コンテンツが魅力的であれば広がるのも早い。上のグラフは「THE FIRST TAKE」のチャンネル登録者数の推移だ(データ提供:ユーザーローカル)。特筆すべきは登録者数の増加が鈍化していないこと。まさに右肩上がりを維持し続けている。これは話題のアーティストを次々と登場させる運営サイドのうまさにも要因がありそうだ。例えば20年5月15日には「小説を音楽・映像で具現化する」ユニット・YOASOBIが登場。これがメディアでの初歌唱動画だった。また20年10月16日は社会的ブームを巻き起こしているアニメ映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の主題歌であるLiSA「炎」の動画がアップされた。

YOASOBI「夜に駆ける」
LiSA「炎」

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