美容系総合ポータルサイト@cosmeの企画・運営、関連広告サービスを提供するアイスタイル(東京・港)は「@cosmeベストコスメアワード 2020」(以下、ベストコスメアワード)を発表した。「コロナ禍」の影響で市場が縮小する一方、高価格帯商品が支持されたという。2021年は「自分軸」がキーワードになると予測する。
コスメの口コミ、前年比130%に
アイスタイルは、2020年12月1日ベストコスメアワードを発表した。今、生活者が支持している商品をランキング形式で表彰するもの。実際に商品を使用したメンバーから、この1年間に@cosmeに寄せられた口コミ投稿(各年度の期間は前年11月1日~10月31日)をベースにしている。
総合大賞はランコムの美容液「ジェニフィック アドバンスト N」(30ミリリットルは税込み1万1000円、50ミリリットルは同1万5400円)。総合2位はイプサの化粧水「ザ・タイムR アクア」(200ミリリットル・同4400円)。どちらも高価格帯商品と称されるもので、百貨店でおなじみのブランドだ。また20年のビューティートレンドを象徴するキーワードを、「@cosmeベストコスメアワード 2020 ベストトレンドキーワード」として発表。「おうち美容」が選ばれた。
20年のベストコスメアワード集計対象期間中、@cosmeに投稿された口コミ件数は100万件弱。19年より約30%多く、過去数年と比較しても大幅に増加したという。同社では口コミ増加の理由を「自分の口コミを(見た人に)役立ててもらおうという意識が働き1.3倍になったのでは」(リサーチプランナーの西原 羽衣子氏)と分析する。
在宅勤務などテレワークが進んだり、外出自粛で店舗自体も営業していなかったりという状況があり、目当てのコスメを店頭で試せない人にとって、口コミは購入動機に大きく影響する。「過去最高の数値は東日本大震災があった11年だった。“みんなの役に立ちたい”という気持ちの大きさが口コミ数を増加させると思っている」(西原氏)
プチプラから一転、高価格帯商品支持
生活者の気持ちをつかみ、ベストコスメアワードに選出された商品には、「ロングセラー×リニューアル」「高価格帯シフト」「リッチな購入前体験」といった特徴があると同社。
ランコム「ジェニフィック」は09年の発売以来、13年、19年にリニューアル。またベストコスメの総合トップ10ではないが、乳液部門では定期的に商品リニューアルを行う「アルビオン」が1~6位を占めた。こうしたことから安心できるものを求めながらも、閉塞感ある毎日を送る中で、新しいものを求める心理が働き、ブラッシュアップして新しい価値を付加するリニューアル製品が支持されたと考えられるわけだ。
また安心感を求める傾向は「高価格帯シフト」にも表れている。同社が行った「化粧品に関するアンケート」(アンケート回答期間20年11月6~8日、集計サンプル数1万1761人、調査対象者は@cosme プロデュースメンバー/女性/15歳以上)によれば、「いつもより高い化粧品を購入することが多かった」と回答した人が29%と約3割に上っている。
過去4年間のベストコスメアワードを振り返ると、17年は1、3位、18年は1~3位、19年は1、2位を2000円以下の「プチプラ」と呼ばれる価格帯の商品が占めているが、20年度は1~3位まですべて高価格帯。「失敗したくない」「安心を買う」意識が反映されていることが分かる。
この「失敗したくない」という生活者の気持ちに応えるように、メーカー側は数日の旅行用サイズや1回使いきりサイズの「サンプルサイズ」で商品を用意。「リッチな購入前体験」とは高価格帯の商品でもサンプルサイズで手ごろな価格で試せることを指すが、@cosmeの口コミ上では「サンプルサイズ」の投稿数が前年度の約2倍に増加している。総合大賞になったランコム「ジェニフィック アドバンスト N」は、サンプルサイズのパウチを500円で販売。購入前に試せないチャネルであるEC利用者数の増加と同様に、今後も求められると想定できるだろう。
20年度の市場規模は10%減見込み
矢野経済研究所が10月に発表した国内の化粧品市場の調査によれば、19年度の国内化粧品市場規模(メーカー出荷金額ベース)は、前年度比100%の2兆6480億円。20年に入って顕在化した新型コロナウイルス感染症の影響で、インバウンド(訪日外国人客)需要や国内需要が落ち込み、市場がほぼ横ばいになったという。
同調査では20年度の化粧品市場規模は10%近く減少すると予測。インバウンド需要の激減、テレワークの拡大や外出自粛による国内需要の縮小をその要因に挙げている。年明けからもアフターコロナ/withコロナ時代に対応した商品が求められる状況は続きそうだ。
ただし、その中でもベストトレンドキーワードである「おうち美容」に対応した商品需要は高いままで、特に「5年前から上がり続けているスキンケアへの関心の高まり」(アイスタイル)に対応する商品は支持されそうだ。
ベストコスメアワードで「ベストビューティーパーソン」に選ばれた美容家・IKKOも、授賞式で「これまでメーク中心で売れていたのが、20年はスキンケアの年だった」と回想。「自分に合うスキンケアは何だろうというところで的を射たブランドがグイッと上がった」と指摘している。
ケアもメークも「自分軸」需要へ
アイスタイルによれば、そもそものスキンケア需要はスマートフォンなどの写真加工アプリの影響を受けた「トーンアップ」に端を発している。肌の透明感を高めたいという欲求の高まりがベースメーク商品人気につながった。
そのうえ新型コロナの感染拡大によって、外出機会が減り、自分の肌、ひいては自分自身と向き合う時間が増え、ベースメークよりさらに基盤となるスキンケアに注目が高まっていったのではないかという。
マスクによる肌荒れの影響もある。「レスキューアイテム」と呼ばれる、肌を良い状態に戻す、あるいは向上するための「自分でケアできる」商品が求められたのはwithコロナ時代ならではだろう。
また紫外線から環境ストレスなどまでに対応する「バリア」効果のある商品、免疫アイテムとして注目される「美肌菌(皮膚常在菌叢)」を含む商品、「ブルーライト」をカットする商品など、自分の肌を「自分で守る」商品需要も高まりそうだという。
さらにテレワークが増え、会食などの機会が減った今、美容は「人に見せるために」から「自分のために」するものへとシフトしている。これらの傾向から同社では21年、生活者は「自分軸での商品選択」を拡大させると予測した。
矢野経済研究所は、21年度以降は新型コロナウイルス感染症が沈静化して国内消費が回復。インバウンドも徐々に増加し需要も緩やかに回復していくとみているが、一度シフトした生活者の意識が「コロナ前」にまで戻るのは、そう簡単ではなさそうだ。となると「対外的」より「内向的(自分軸)」な需要がまだ続くのではないだろうか。