和歌山発のスタートアップ、glafit(グラフィット、和歌山市)が電動バイクの新機種「GFR-02」を発表した。登坂能力が25%向上するなど中身を大きく刷新。2021年夏発売予定のオプションを取り付ければ、自転車としても乗れるようになるという。コロナ禍でパーソナルモビリティーの需要が高まる中、日本の電動モビリティーを切り開く1台になりそうだ。

新モデルの「GFR-02」にまたがるglafitの鳴海禎造CEO。カラーバリエーションは4色で、鳴海氏はフラッシュイエローがお気に入りだという
新モデルの「GFR-02」にまたがるglafitの鳴海禎造CEO。カラーバリエーションは4色で、鳴海氏はフラッシュイエローがお気に入りだという

見た目は似ているが、中身は別物!

 glafitは2020年11月25日、電動バイクの新機種「GFR-02」を発表した。価格は税別18万円を予定。当初は同日に予約受け付けを開始する予定だったが、コロナ禍の影響で世界的にパーソナルモビリティーの需要が高まっており、「部品の取り合いになっている状態」とglafitの鳴海禎造CEO(最高経営責任者)。そのため直前になって予約受け付けの延期を決断、量産の見通しがついた段階で改めて発表する。それでも同社のWebサイトで新着情報を受け取るためにメールアドレスを登録した人はすでに1000人を超えているとのことで、関心の高さがうかがえる。

 前モデルの「GFR-01」は、一般的な折り畳み自転車の形状ながらバッテリーとモーターを内蔵し、ペダルをこがなくても走行できる電動バイク。原付き(第一種原動機付き自転車)としてナンバープレートを取得し、公道を走ることができる。17年にクラウドファンディングサイトの「Makuake(マクアケ)」で当時の国内最高額となる1億2800万円以上を集め、話題になった。

「GFR-02」の外見は旧型に似ているが、フレーム以外のパーツはすべて新しくなっている
「GFR-02」の外見は旧型に似ているが、フレーム以外のパーツはすべて新しくなっている

 新モデルのGFR-02は見た目は前モデルにそっくりだが、中身は大きく変わっている。「フレームが同じだから外観は似ているが、フレーム以外のパーツはすべて刷新している」と鳴海CEOは強調する。例えばヘッドライトやブレーキランプなどの灯火類はより明るくなり、夜間安全性が向上した。可倒式のミラーは構造を見直し、より視認性を高めている。ディスクブレーキも刷新し、より高レベルなタッチと制動力を実現した。

ブレーキランプやウインカーなどの灯火類はより明るくなった
ブレーキランプやウインカーなどの灯火類はより明るくなった
折り畳み機構を備えながら視認性を高めたミラーは特許出願中
折り畳み機構を備えながら視認性を高めたミラーは特許出願中

スマホで鍵を解錠。鍵のシェアも可能に

 コネクティッドになったのも大きな特徴だ。「GSC(glafit Smart Connect)」という独自開発のモジュールを搭載。BLE(Bluetooth Low Energy)に対応し、スマートフォンと通信してアプリから鍵を解錠したり、鍵を友人とシェアしたりできるようになった。GSCモジュールを搭載したことで、将来的な機能アップデートも可能となり「アプリと連動した盗難防止機能などの追加を考えている」(鳴海CEO)。

 バッテリーパックも新しくなった。新型のバッテリーはパナソニックが開発した新たなバッテリー管理サービス「UBMC(Universal Battery Management Cloud)」に対応している。これはバッテリーのデータをスマートフォン経由でクラウドに送信し、AI(人工知能)を利用して処理することで、より高度なバッテリー管理を提供するサービス。今回の「GFR-02」および同じglafitが発売予定の立ち乗り電動スクーター「X-SCOOTER LOM」が初採用となる。

 GFR-02のディスプレー上での電池残量表示は4段階だが、この技術によりアプリ上では1%単位の残量表示が可能になるという。glafitは19年2月からパナソニックと共同で実証実験を行っており、その取り組みが実を結んだ格好だ。

 なお、バッテリー形状自体はGFR-01と同じで、旧型のバッテリーを新型に取り付けることも、またその逆も可能だ。ただし上記UBMCの機能を使えるのは、GFR-02に新型バッテリーを取り付けた場合だけとなる。

上り坂の走行がパワフルに

 これらの改良と同時に、glafitは先代モデルのユーザーから集めた意見にも耳を傾けた。ユーザーにアンケートを行った結果、最も多かった不満は「出力が弱い」だった。実際に旧モデルを試乗したときも、平地では最大時速約30キロメートルで走れるが、上り坂になるとスピードが落ちてきて、車道を自動車など他の交通と並走するには力不足を感じることがあった。

「出力が弱い」というユーザーの声に応え、モーターの制御を変えることで登坂能力を25%向上した
「出力が弱い」というユーザーの声に応え、モーターの制御を変えることで登坂能力を25%向上した

 そこでGFR-02では登坂時の最大出力を25%アップし、よりパワフルに坂を上れるようになった。実はモーター自体の最大出力は旧型と同じだが、制御を見直して出力アップを実現している。「大出力のモーターを使うと登坂時以外の消費電力も増え、航続距離が短くなってしまう」(鳴海CEO)ため、あえてハードウエアではなく制御による高出力化を選んだという。

 「折り畳みが難しい」という声に応え、折り畳み方法も見直した。ハンドルの折り畳み方向やシートポストの長さ、ミラーの形状を工夫して、より手軽に折り畳めるようにしている。

折り畳むとここまでコンパクトに。輪行バッグに入れて電車に乗ったり、クルマのトランクに積んで出かけたりすることもできる
折り畳むとここまでコンパクトに。輪行バッグに入れて電車に乗ったり、クルマのトランクに積んで出かけたりすることもできる

 走りの面ではペダルの付け根にあるクランク側チェーンリングを42T(ギアの歯の数が42個)から52Tに大型化。ペダルの軽さを重視していた前モデルと比べて、新モデルはよりスピードが出しやすくなった。これは後述する「自転車モード」でも走りやすくするための変更だろう。

オプション装着で電源オフ時は「普通自転車扱い」

 実はglafitは20年10月、「日本初! 自転車と電動バイクの切り替えが認められる」という発表をした。これは「新機構」を装着した同社のGFRシリーズを、電源オフのときは普通自転車として扱うことが認められたというもの。現状では電源のオン・オフにかかわらずGFRシリーズは「原付き」として扱われ、ヘルメットの着用や免許の携帯が義務づけられる。このため出先でバッテリーが切れて人力でペダルをこいでいる状態であっても自転車専用レーンを走れず、幹線道路などで危険な状態に置かれることがあった。

 だが今回の決定により、今後は「新機構」を取り付けたGFRシリーズなら、自転車モードに切り替えることで自転車レーンを走行したり、「自転車を除く」と補助標識が付いた一方通行道路なら逆方向に走ったりできるようになった。

「新機構」の試作品を装着したGFR-01。後部ナンバープレート部分に自転車のピクトグラムが描かれたカバーをかけると電源がオフになる。これは試作品で、製品版はもっと小型でスマートなデザインになるとのこと(写真は20年10月の発表時のもの)
「新機構」の試作品を装着したGFR-01。後部ナンバープレート部分に自転車のピクトグラムが描かれたカバーをかけると電源がオフになる。これは試作品で、製品版はもっと小型でスマートなデザインになるとのこと(写真は20年10月の発表時のもの)

 この「新機構」とは、具体的には電源と連動してナンバープレートをカバーする装置。電動バイクモードのときはカバーを上げ、ナンバープレートが見えるようにしておく。一方、自転車モードにするときはカバーを下げてナンバープレートを覆う。この状態にすると物理的に電源回路が切断され、電源が入らなくなる。カバーは両手で操作しないと動かないようになっており、走行中にモードを切り替えることはできない。あえて一度降車して切り替える仕組みにしたのは、電動バイクモードか自転車モードかを明確に区別できるようにするためだ。

ナンバープレートカバーは降車して両手で操作しないと切り替えられないようになっている。写真の装置は試作品のため、製品版では切り替え方法が異なる可能性がある
ナンバープレートカバーは降車して両手で操作しないと切り替えられないようになっている。写真の装置は試作品のため、製品版では切り替え方法が異なる可能性がある

 glafitは19年から、いわゆる「規制のサンドボックス制度」を利用して、GFRの自転車モードが普通自転車と同等であることを示すべく、和歌山市で実証実験を実施してきた。その取り組みが、今回の「普通自転車扱い」の認可につながった。

 glafitはこの「新機構」を「モビリティカテゴリーチェンジャー(モビチェン)」という名前で21年夏に発売予定だ。価格は未定だが鳴海CEOは「オプションなのでなるべく安価に提供したい」としている。今回発表された新型「GFR-02」はもちろん、旧型の「GFR-01」にも装着できるようにする予定だ。

 さらにGFR-02にはもう1つ興味深い変更点があった。ペダルの動きを感知するセンサーが、回転を検知するRPMセンサーから、踏力を感知するトルクセンサーに変更されたのだ。

 踏力感知タイプのセンサーは電動アシスト自転車に欠かせない。というのも日本の電動アシスト自転車は、「モーターのアシスト力の上限は、こぐ力の2倍まで」と決まっているためだ。トルクセンサーを搭載したということは、ハードウエア的には電動アシスト自転車とほぼ同等。制御さえ変更すれば電動アシスト自転車のルールに沿ったモードも作れるはずだ。

 自転車モード時の普通自転車扱いが認められたら、次は電動アシスト自転車モードを、と期待してしまう。その件について鳴海CEOは「今後の課題として警察庁などと協議していきたい」と意欲を見せる。

 地道な実証実験を重ねて、1台の乗りものが「原付き」と「普通自転車」という2つの状態に変化するという前例のない解釈を勝ちとったgalfit。単に便利な製品を作るだけにとどまらず、法制度にも踏み込んで、日本のモビリティーを変えていこうとしている。

 今回発表されたGFR-02はアップデート機能を備えており、発売後も新たな機能やサービスが加わる可能性がある。glafitがどんなアイデアを提案してくるのか、今後が楽しみだ。

(写真/出雲井 亨)

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