無許諾音楽アプリ(違法音楽アプリ)を利用する若者が減ってきた――LINE MUSICがそんな調査結果を公開した。LINE MUSICや日本レコード協会など音楽業界が一体となって取り組んできた啓蒙活動が実を結びつつある。利用者を減らせた要因は何か、今後は何が必要なのか、LINE MUSICの取り組みを聞いた。
音楽配信サービスLINE MUSIC(東京・新宿)は、スマホで音楽を楽しむときに違法音楽アプリをよく利用するユーザーが多いことに危機感を抱き、2018年よりLINEリサーチを通じて調査を行っている(関連記事:「音楽サブスクに危機感 無許諾アプリ、友だち・家族経由が66%」)。
20年9月にも「無許諾音楽アプリに関するアンケート調査」を実施し、結果を20年10月16日に公開した。それによると違法音楽アプリで音楽を楽しむ人の割合は19年の調査に比べて4ポイント減少し、特に10代20代の若年層で減少傾向が見られた。そして、正規の音楽ストリーミングサービスの利用割合は6ポイント増加している。
違法音楽アプリとは、権利者に許諾を得ることなく無断で楽曲をアップロードして配信しているアプリのこと。アーティストや制作者側には一切還元されず、音楽業界に大きな被害をもたらしている。無許諾音楽アプリと呼ばれていたが、20年10月1日にこのようなアプリを提供する行為、違法にアップロードされた音楽へのリンクを音楽アプリに掲載する行為を規制の対象とする改正著作権法が施行されたため、現在LINE MUSICでは違法音楽アプリと呼んでいる。
利用をやめた理由は「アーティストにお金が支払われないから」が最多で、「違法アプリである」との認識が広まってきたことを示している。しかし利用者の85%が違法音楽アプリに「満足している」と感じており、利用者にとって満足度の高いサービスとなってしまっている。
日本レコード協会では違法音楽アプリ対策の1つとして、アプリを配信している米アップル「App Store」や米グーグル「Google Play ストア」に対して削除要請をしたり、アプリ開発者に対して直接削除要請をしたりといった対応を行ってきた。しかし削除されてもまた別のアプリが登録され、それが削除されてもまた別のアプリが……という状態が続いてきた。
LINE MUSICでも違法音楽アプリを問題視しており、19年7月には音楽配信サービス事業者3社と日本レコード協会や日本音楽制作者連盟など音楽関係4団体との連名でアップルに対策強化の要望書を提出するなどの活動を続けてきた。
こうした活動により、アプリストアからの削除実績は年々向上している。例えばアップルのApp Storeに対しては、18年度に18件の削除要請を行ったが15件の削除にとどまり、削除まで平均71日かかっていた。これが19年度には削除要請した27件すべてが削除され、平均削除日数は33日に短縮された。20年4月~7月は削除要請した13件がすべて削除され、平均削除日数は5.8日とさらに短縮されている。20年10月1日には前述の改正著作権法が施行され、法の圧力も強くなっている。
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