この数カ月にわたるコロナ禍で売り上げの落ち込みに悲鳴を上げている飲食店は多い。回転すし店のあきんどスシロー(大阪府吹田市、以下スシロー)も2020年4月時点で前年同月比58.0%まで落ち込んでいた。しかし、同年10月時点では全店売上高を同109.7%までV字回復。20年11月30日に実施されたスシロー37期新プロジェクト発表会で、テークアウト需要に柔軟に対応した同社の施策ついて堀江陽社長が語った。

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で全店売上高が急落したスシローだが、2020年10月には前年同月比109.7%まで回復した
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で全店売上高が急落したスシローだが、2020年10月には前年同月比109.7%まで回復した

急増したテークアウト需要に商機

 新型コロナウイルス感染症拡大の影響で来店客が減り、販売の軸をテークアウトに切り替えた飲食店は多い。ところがテークアウトのオペレーションはイートインの場合と全く異なるため、泥縄でテークアウトを始めてもうまくいかないケースが少なくないという。その点であきんどスシローは幸運だった。もともとイートインと並行してテークアウトにも対応していたからだ。

 スシロー社長の堀江陽氏は「コロナ禍でイートインの売り上げは下がったが、以前は1割程度だったテークアウトが2倍から3倍に伸びた。(テークアウトの急増に対応できない店舗も多いなか)スシローの場合、お盆や正月などの繁忙期にはイートインに加えて相当量のテークアウトに対応しなければならないため、そうした状況でも注文をさばけるシステムが出来上がっていた」と語る。

 年末年始のテークアウト需要に向けて、現在スシローが実施しているのが「Go To 超スシローPROJECT」だ(20年12月2日~21年2月末)。スシローでは従来、月2回程度のフェア・キャンペーンを実施してきたが「これまでのスシローを超えていきたいという思いで『超』と付けた」と堀江氏。このプロジェクト期間中はテークアウト用として「本鮪とろ・うにづくし6貫(税別600円)」「倍とろ・大切りあわびづくし6貫(税別750円)」など6種類の限定セットも用意している。「テークアウトに関しては販促キャンペーンをやったことがなかったが、今回初めてテレビCMを作った」(堀江氏)。

スシローが2020年12月2日に開始した「Go To 超スシローPROJECT」は、原価率などを考えると「もう二度とできない」ほどの豪華なものになるという
スシローが2020年12月2日に開始した「Go To 超スシローPROJECT」は、原価率などを考えると「もう二度とできない」ほどの豪華なものになるという

 コロナ禍におけるテークアウト需要を受けて、人気のなかった「手巻きすしセット」も復活させた。堀江氏は「手巻きすしセットは10年ほど前に開発したが、まったく売れなかった。7年ほど前にも2回目をやったが、やはり売れなかった」と笑う。ところが20年4月7日の緊急事態宣言発出から1週間以内というタイミングで三度目の正直に挑戦したところ「びっくりするくらい売れた」と堀江氏。巣ごもり期間中の家族のコミュニケーション手段として、手巻きすしを選ぶ人が多かったようだ。自身が自宅で「手巻きすしセット」を食べたときは妻との会話が増えたのことで、堀江氏は「これはいい」と確信したそうだ。

不人気だった「手巻きすしセット」が汚名を返上。「スシロー特上手巻セット(2~3人前)」は税別2980円、「スシロー手巻セット」は税別1980円
不人気だった「手巻きすしセット」が汚名を返上。「スシロー特上手巻セット(2~3人前)」は税別2980円、「スシロー手巻セット」は税別1980円

 またスシローでは今後、テークアウトの専門店も出店していく。堀江氏は「(郊外店の多いスシローを)生活動線上に持ってきたらどうなるか、以前からテークアウト専門店の構想はあった。コロナ禍を機に『やってみよう』ということになった」と話す。スシローには19年9月に兵庫県のJR芦屋駅改札横にテークアウト専門店を期間限定で出店した実績があり、その際は想定額の倍以上を売り上げたという。堀江氏によれば、すでに5カ所の物件が候補に挙がっているとのことだ。

JR芦屋駅改札横のテークアウト専門店。商品は近くの店舗で作るため、こちらでは陳列するだけだ
JR芦屋駅改札横のテークアウト専門店。商品は近くの店舗で作るため、こちらでは陳列するだけだ

 なお、店舗に足を運べない客に向けては、デリバリーサービスのUber Eats(ウーバーイーツ)や出前館と提携することで対応しているが、それに加えて自社デリバリーも始めている。自社デリバリーに対応しているのは現在、奈良市にある学園前店、天理店と京都市にある精華町店のみだが、今後は対応店舗を増やしていく予定だ。

 最後に堀江氏は「世の中的にはいろいろなマーケット施策があると思うが、スシローの存在意義はネタのうまさでお客さんに喜んでもらうことだと思う」と、元仕入れ・商品企画管掌らしい言葉で発表会を締めくくった。

テークアウト需要を見越してスマートフォンアプリのインターフェースや、Webサイトの注文プロセスも見直した
テークアウト需要を見越してスマートフォンアプリのインターフェースや、Webサイトの注文プロセスも見直した
急増するテークアウトでニーズが拡大しているのが、注文から受け取りまでを完全非接触で行える「土産ロッカー」だ。導入店舗は全568店舗(20年12月現在)中の5%強とまだ少ないが、導入を急いでいると堀江氏
急増するテークアウトでニーズが拡大しているのが、注文から受け取りまでを完全非接触で行える「土産ロッカー」だ。導入店舗は全568店舗(20年12月現在)中の5%強とまだ少ないが、導入を急いでいると堀江氏

(写真提供/あきんどスシロー)